婚約者に虐げられてきましたが、思わぬ形で夢が叶いました。~神様ありがとう~
「お前! 皿磨くの遅すぎだろ!」
「洗う段階はすべて終わりました」
「そういう問題じゃない! 口ごたえするな! ほら、もっと綺麗に磨けよ。つやつやにしろよ。そうじゃないと意味がないからな」
婚約者である彼アティットは同じ家に住む私を奴隷のように扱う。
婚約する時に「今後は一緒に住もう」と言われ、それに従って彼と一緒に住むようになったのだが、それから毎日が地獄だ。
大量の用事を押し付けてくる。
些細なことで激怒し大声を出す。
そんな彼と一緒に暮らすとなると、どうしても、日々が暗く染まってしまう。
「磨き終わったら次な! 洗濯物! ここのかごに一週間分置いてんだから、さっさとそっち終わらせてこっちやれよ!」
「一週間分!?」
「何だよその言い方。俺のこと馬鹿にしてんのか? いいからさっさとやれ! いつまでもちんたら磨いてねえでさ、さっさと終わらせろ! あ、ただし手は抜くなよ。なるべく早く徹底的に磨いて、それで、今度は洗濯をやれ!」
「それは……一人では到底不可能です」
「はあ!? 俺の命令が聞けないってのか。どんだけ無能なんだよお前!! この俺に指示してもらえるなんて光栄だろうが!! ありがとうくらい言え!!」
彼はいつもこんな感じだ。それゆえ滅茶苦茶なことを言われても驚きはしない。ただ、到底できそうにない量の用事を押し付けられるというのはストレスでしかない、ということは事実。
短時間ならスルーしておくことはできるけれど。
結婚となるとずっとこれだろう。
こんな感じで一生を終えるのは絶対に嫌だ。
(あんな人、いなくなってしまえばいいのに……)
その日、私はさすがに我慢しきれず、そんなことを脳内で呟いてしまった――すると夢が叶い、翌朝アティットは自室のベッドの上で倒れ冷たくなっていた。
アティットの死により、彼との婚約は自動的に破棄となった。
(まさか……本当に自由になれるなんて。こんなことってあるもの? 夢が急に叶うなんて。信じられない……でも、現実、なのよね)
私はもう奴隷ではない。
今日からはすべてにおいて自由だ。
彼の命令に拘束され生涯を終える必要もなくなった。
「う、うれすぃぃぃぃぃぃ……!」
思わずそんな風にこぼしていた。
「これでもう……もう、私……滅茶苦茶なこと言われながら働かなくていいんだぁ……!」
これからは自由に生きよう!
やりたいことをやって歩いていこう!
……神様、ありがとう。
◆終わり◆




