どうか忘れないでください。
どうか忘れないでください。
わたしがあなたを愛していたことを。
そしてあなたがその心を残酷に踏み潰したことを。
もしあなたがあの時視線の先に在るものを変えなければ、すべては変わっていたでしょう。
今とは異なる今がきっとあったことでしょう。
わたしが国王の妻となることはなかった、けれども、あなたが災難に見舞われて地獄へ堕ちることもなかった。
あなたがわたしに別れを告げてきた時、わたしはすぐにその発言の意味を理解できませんでした。
そんなこと、想像していなかったのです。
あなたが別の人へ目を向けて。
しかもただそっと想いを抱えるのではなく。
……その人のもとへ行くことを自ら選ぶ、なんて。
今でもふと思うことがあります。
なぜあんな風になってしまったのか。
二人共に行くことはできなかったのだろうか、なんて、思ってしまう瞬間はあるのです。
ただ、それが運命だったのであれば、何をどうしても結局は同じようになったのでしょう。
運命というとてつもなく大きなものに抗う力は人間にはありませんから。
きっとそれが定めだったのでしょうね。
だから避けられなかった。
だから改善できなかった。
あの出来事も含めてわたしの人生であり、また、あなたの人生でもあったのでしょう。
ですからもう何も言いません。
そんなことをしても無駄だと分かっているから。
……けれど。
どうか忘れないでください。
わたしがあなたを愛していたことを。
そしてあなたがその心を残酷に踏み潰したことを。
◆終わり◆




