目が痒くて目もとを擦っていたために婚約破棄されてしまったのですが……その後意外な形で良い出会いがありました。
なぜか異様に目が痒くて手の甲で目もとを擦っていたところ、その様子を目にした婚約者である彼ダーリンティスから「お前ほんとみっともないな」と言われたうえ苦々しい顔をされ、しかもその果てに「前から不快だったが……もう無理だ、お前との婚約は破棄とする」と宣言までされてしまった。
「待ってください、私はただ目が痒かっただけで……!」
「うるさい黙れ」
「話を聞いてください」
「黙れッ!!」
「っ……」
「俺は男だぞ? お前は俺に逆らうのか? 言い返すような真似をするのか? 馬鹿がッ!! 馬鹿馬鹿馬鹿ッ!!」
私はただシンプルに状況を説明しようとしただけなのに鬼のような形相で大声を出されてしまい。
「やはりお前とはやっていけん! ……よって、婚約は破棄とするッ!!」
驚くほどあっさりと関係を叩き壊されてしまったのだった。
その日は憂鬱だった。
よく分からない悲しさもあった。
ただ、こんな時でも両親は優しくて、それは何よりもの救いであった。
父も母も私がおかれた状況を理解しつつ温かく接してくれた。だから痛みは徐々に和らいで。数日も経てば私の心は軽くなっていた。
ダーリンティスがあんな心ない人であったなら、離れることになって結果的には良かったのかな――そんな風に思えるようになっていった。
……そうだ、私はまだ何も失っていない。
辛くても。
悲しくても。
気にしなくていい。
私は私の道を探して歩もうと思う。
◆
あの婚約破棄からちょうど一ヶ月となった日、私は、路上でなくしものをして困っていた男性を助けた。
すると彼は深く感謝してくれお茶会に誘ってくれた。
生きているとたまには意外な展開というのもあるものだなぁ、なんて思いながら、誘われたお茶会に参加。
するとそこで「僕は南の王国の王子なんです」と明かされて。最初は信じられなかったけれど、絶対的な証拠を見せられたこともありさすがに信じないわけにもいかず。
そんなことをしているうちに段々彼と親しくなって、気づけば婚約することになっていた。
「ダーリンティスさんだっけ? 彼が君を手放してくれていて良かったよ。こんなに魅力的な女性をフリーにしてくれるなんて……ダーリンティスさんはある意味とっても良い人だね。ま、見る目はないみたいだけど」
私の人生には新たな奇跡が舞い降りた。
ここからまた始まってゆくのだろう。
行き先など誰も知らない未知に満ちた旅が――。
◆
あれから数年。
私は今、一国の王妃となり、絶対的な位に就いて生きている。
王子の妻であった私は彼の即位と同時に王妃となったのだ。
だが権力を得たからといってめちゃくちゃなことをするつもりはない。そんなことをしては国が壊れてしまう。頂に立つならなおさらきちんとしておかなくては、そう考えているからこそ、できる限り己を律して生活している。
民はよそ者だった私のことも愛してくれている。
だから私も人々のために生きる。
それが今の私にできる唯一のことだと思うから。
ちなみにダーリンティスはというと、あの婚約破棄の直後命を落としてしまったようだ。
ある大雨の日、川が増水していることに気づかず軽い気持ちで川の近くへ行ったそうで、その結果迫ってきた大量の水に押し流されてそのままどこかへ消えてしまったのだそう。
どうやら彼には明るい未来はなかったようだ。
……でも、それが彼の運命であったならば、それを書き換えることには誰にもできない。
◆終わり◆




