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第七話

ドッ!っと周囲が騒めく


慌てていないのは猫耳デブと俺だけだろうか


水泳部の娘が誰かの荷物に近付いていく


「待て、何をするつもりだった」


流石にこれを止めないのはマズいだろう


「何?悪いとでも言うの?」

「確かに、一人の生物として見るならお前の行動は正しいだろう。だが、お前は人間だろう?善悪の区別くらい付くはずだ」

「貴方だって分かるでしょ?たった一日で社会がこんな状態になって、不安な気分が」

「ああ、分かるさ。だから、今回の行動は不問にしてやる。幸いお前の盗みに気づいた奴は俺しかいなそうだしな」

「ふんっ!正義ぶって」

「次やったら容赦はしないからな」


危なかった。こんな場面で盗みなんてされたら崩壊待った無しだぞ


猫耳デブも流石にどうすれば良いか分からず戸惑ってるな

俺もどうすれば良いかなんて分からんが


取り敢えず俺に注目を集めるか


「光!皆落ち着け!」


俺の目の前に光を出し、注目させる


「冷静になれ!川の向こうの人達は死んだかもしれない!でも、少なくとも今、俺達は生きている!」

「俺の見た限り、ここに血の繋がりがある組は居ない!元から知り合いだった奴だって居ない!そうだろ!」

「お前達は何故一人で逃げた!?お前達は何故自分の家族や親友まで捨てて逃げて来た!?」

「生きる為だろう!」

「故郷がたった今滅びた事を悲しむより、命からがら地獄から抜け出せた事を喜べ!」

「いや、喜べとまでは言わん!だが、冷静さを失うな!お前達は今、生きている!」


こんな感じで良かったのだろうか?

やっばい、自身が無い。

まあ落ち着かせる事は出来ただろう。


「いいかナ?」


どうした猫耳デブ


「見事だったヨ。皆冷静を取り戻しタ」

「それなら良かった」

「アト、彼女の件、ありがとウ」


バレてたのか


「ミンナ!師匠の言う通りダ!ボキもリーダーと言う立場でありながらミンナを纏められなくテ済まなイ!」

「だけド、アトもう少しダ!もうこの先に障害は無イ!」

「これからどう動くか考えるカラ集合!」


おさらいしよう。


俺達が今いるのは荒川の西側の岸、目的地は暫定だがここから20キロほど西の入間市周辺だ

まあ、俺個人は静岡まで向かうつもりだが


そして、今の時刻は大体4時、食料は全員二日分くらいは持っている。


結論として、暗くなるまで西進してから寝ると言う事で決定した。


堤防を登り、目の前に広がる田んぼは、本来なら金色に輝くはずだが、何者かに踏み荒らされたのか茶色が混ざっていた。


運の良い事に、途中でホテルを見つけた。


少し…いやかなり散らかっていたが、

中には誰も残っておらず、一人一部屋で泊まる事になった



非常電源か何かで少しの明かりはあるものの、暗くなったホテルの廊下は今が非常事態である事を強く実感させる


7時にもなると周囲は真っ暗。街灯は灯りを持っていない。


他の人の事は知らないが、俺はその頃には疲れて寝ていた





早く寝たからだろうか

かなり朝早くに起きる事ができた


一階にあるラウンジに集まり、他のメンバーが降りて来るのを待つ


岩倉さんと、猫耳デブが先着だった


「おはよう」

「おはよう!」

「おはよウ。調子はどうカナ?」

「全然」

「昨日の狼で無理させてしまったからネ。その件はありがとウ」

「あんな事があってからまだ二日なんて考えられな〜い」


岩倉さんは見た目的にもまだ高校生だろう。

それなのにしっかりしている。立派だ


「俺もだ。まだまだ信じられ無い」

「そうダ、この中で一番魔力についテ詳しい師匠に質問ダヨ」

「俺だって全然だぞ?」

「それでもいいヨ。昨日のスライムについてどう考えル?」


スライムか…

まず、あれは生物なのか?

生きている様には見えなかったが


「俺は…魔力を求めて移動したんじゃ無いかと考えるな。移動か膨張か分裂か知らんが」

「ナルホド…」

「んで、根拠なんだが…」


例のメモの事を話す


「どうする?俺について来るのか?リーダーであるお前の判断だぞ」

「それは…ボキとしてもついて行きたい所だけド、無理かナ。あんな事があっテ、そしテ、周囲の人間がミンナ死んでしまっテ、精神的にも肉体的にも厳しいヨ」


東京23区を中心に魔力が広がって、あのスライムはそれを求めて移動した。

そう考えるのが自然だろう。そう結論付いた。


それなら、俺の目指す静岡や、それ以外にももっと遠くに逃げるべきではある。


「だけど、何よりも……東京だよな」


そう。あの隕石の落ちた中心。

東京の事である。


皆、知っていた。皆それを見た。

しかし、誰も口に出さなかった。


うっすらと感じていたのだろう。今ここで話せば足を止める事になると


「だよネ…ああもなっていてはネ…」


ここに至るまでに、何度か東京の方向を見た。



本来なら、マンションやビルが立ち並ぶ、THE都心といった景色が見えた筈だ。

しかし、東京の方向にあったのはそうでは無かった。


闇だ。闇があったのだ。


俺にはそう見えた。


「そうだよねホント!あんなに真っ赤になって何も見えなかったらね!」

「ちょっと待っテ、岩倉チャン、ボキには東京が黄色いトゲトゲに見えているのだけド?」

「え?赤いふにゃふにゃじゃ無くて?」

「待て、俺には黒い球体に見えるぞ」

「「「え?」」」

「待て待て待て、一回見えた物を紙に書いて伝えよう」


全員が見つかった書類の裏などにペンで見えた光景を書いていく


結果は、三者三様に違う物だった。

皆がその説明と一致した景色を描いたのだ。


「どういう事?」

「分からん…俺にもさっぱり…」

「この事は他言無用にしておこウ。少なくとも皆が安心できるまではネ」

「おっけ」

「りょう、かい」


情報量が多い…


演説の仕方がこれで良いか分からぬ

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