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第六話

「そうだ!リーダー!」

「八刀さん、リーダーは、もう…」


一人がリーダーの体を見せてくる。


胸を貫かれたのだ。通常の医療設備でも厳しかった怪我であろう。


クソ!


「八刀さん、いい?」

「何ですか?岩倉さん」

「あの狼、気付いた事があるの」

「それは?」

「あの狼、やけに左腕を引きずるってたの気付いてる?」

「いいや」

「あの狼、最初から左腕を怪我してたの」


左腕を、怪我していた?

と言う事は本来ならもっと強かった?

ふざけんじゃねえよ


いや、待て、怪我していた?あの強さの狼が?


「気付いたっぽいね」

「ああ、あの狼に怪我をさせた奴が、あっちに居る」

「早く荒川を渡らないとだね」

「だが、どうする?このスライムはどうにもならないぞ?」

「時間いいカナ?」


うわ、猫耳デブ


「ボキも話は聞いてたけド、それよりも集団行動するのに大事な事があると思うナ!」

「なんだ?」

「それすなわち、リーダーだヨ!意思決定する人が居ないと困ると思うナ!」

「俺はパスだぞ」


入間より奥に行く予定だからな。責任者にはなれない


「私は資格が無いかな〜」

「それなら、ココはこのボキに一時的なリーダーを任せてくれないカナ?」

「俺は賛成」

「私も!お好きにどうぞ〜」

「他の皆にはもう伝えてあるから!ヨロシク!」


まあ見た目と喋り方がキモいだけで頭が悪い訳じゃ無いからいいか…


「全員集合〜!」


早速猫耳デブが号令をかけている


「現状を説明するネ!調査の結果、あっち…荒川より東ダネ!にはあの狼に怪我を負わせられる程の化け物が居る事が分かったヨ!」

ヤバイジャン ナントカシロヨ


ガヤが聞こえてくる


「と言う事で、この橋を覆うスライムの突破方法を募集するヨ!」

「俺から良いか?」

「ナニかネ?」

「スライムを魔術で退かせるか検証させてくれ」

「良いアイデアだ!岩倉クン、頼むよ!」

「え、私?」

「そりゃキミしか念力が使える人が居ないからね!」

「まあ、分かったけど」


全員で距離をとり、岩倉さんがスライムを退かせるか見守る。


結果としては、どかして川に投げ込む事が出来た。


「出来たネ」

「出来たけど、この量を私一人じゃ絶対無理だよ?」

「それはそうだネ、う〜ん。別のアイデアは?」

「はい」


俺でも岩倉さんでもない別のメンバーからの提案だ。

あの人は唯一魔術が使えなかった人だっけ?


「僕達の目的は川を渡る事ですよね?橋を渡る事では無いのでは?」

「そりゃあそうなんだげどネ、荒川の幅知ってル?幾ら実質50メートルと言えども技術者も居ないのに人間の力じゃきついヨ」

「僕が言ってしまったらどの口がと言う話になってしまいますが…我々には人智を超えた力を使える人が何人も居るのでは?」

「………ナイスアイデア!早速実行に移そウ!」


全員忘れてたな。これ


橋から降り、出来るだけ川岸に近づく。

運の良い事に増水もしてないので、本当に50メートル渡り切るだけだな

それでも遠いけど


「さてト…コレで橋の上の爆弾スライムの問題は無くなった訳だけド…どうやって渡るカナ?」

「ロープ持ってるんで向こう岸まで投げてみますね」


メンバーの内一人が持っていたロープに石を括り付け、向こう岸まで投げるが、流石に50メートル遠投はキツかった。


回収〜


「私が念力で飛ばそうか?」

「念力の有効距離はどの位?」

「わかんない!から、それのお試しも兼ねて」


30メートル位までは順調だったが、だんだんと遅くなり、40メートル位で紐の動きが止まる


「これ以上はキツいかも」

「どっちゃにせよロープを向こう岸に固定しないとだからな。念力だけじゃキツいか」

「すいません〜」


さっきの魔術が使えなかったメンバーが話しかけてくる


「はい?」

「僕なんか魔術使えちゃいまして、それで解決できないかなと」

「え、使えなかったんじゃ?」

「人によって得意不得意があるんですかね?ちょっとそこは僕には分かんないですけど」

「まあ、とりあえずこれを」


ロープを渡す。


魔術を使えなかった人…名前聞いてないしAさんとでもしておこう。は、ロープを持ち上げて振り回し始める


「そういえばどんな魔術何ですか?」

「おそらく…身体強化?力が増えてますね。てやっ!」


飛んで行ったロープは対岸まで届き、さらに運の良い事に気に絡まっている。


「ナイス!」

「いえいえ〜助け合いですよ、お〜い皆さん〜!飛ばせましたよ〜!」


他のメンバーは空き時間で魔術の検証をしていた様だ。


「ありがとウ!大成果ダ!さて、ここから一番大事な役割決めダ。とても危険な役割になるが、やってくれた者にはボキから後で報酬を渡すと約束しよウ」

「何なんだ?」

「ズバリ、一番最初に川を渡る役割だネ。水泳経験者はいるかナ?いないのなら体格順で決めるケド」


メンバーの内一人が手を挙げる


「経歴ハ?」

「学校で水泳部をやっていました。あんまり実力は無いですけど、この程度なら行けます!」

「ヨシ!採用!頼んだヨ!」

「頑張ります!」


平和な会話だ。

あんな事があったのにまだ社会性が保てているのは奇跡に近いかも知れない。

今の所暴徒にも遭遇してないしな。


「さて、水泳部の娘が渡ったアトの話だけド。まず、対岸にロープを固定してもらウ。そのアト最初に師匠に渡って貰ウ。体を温めないと行けないからネ」

「了解」

「アト、泳ぎに自身の無い人は出来るだけカバンの中身を抜いテ、浮き袋代わりにするとイイ。中身はボキに預けてくレ。信用できないかもしれないけド、リーダーとして責任を持って向こう岸まで運び切るヨ」

「待て、アンタもその体格じゃ泳ぎどころか体を動かす事全般苦手だろ」

「確かニ、師匠の指摘は尤もだシ、ボキもその事は自覚していル。けど、今このメンバーの中で持ち物が無くなったトキ、責任を取れるのはボキ意外にいないだロウ?」


こいつ、案外責任感があるな。

猫耳デブのくせして


「じゃ、行くぞ!」


水泳部の娘はロープを頼りにしながら川を渡り切り、無事対岸に着いた。


木にロープをしっかりと固定し、OKサインを出してくれる


「じゃあ、まずは師匠がヒトリで行ってほしイ」

「行ってきます!」


確かに川の流れは思っていたより強く、大変だったが、無事対岸まで辿り着けた


水泳部の娘に集めて貰った木の葉に魔術で火をつけ、温まる


岩倉さん達も続々と渡って来て、全員が渡川に成功した。


最後の一人は猫耳デブだ。辿り着いた時には皆が拍手した


「いや〜ヨかッタヨかッタ。ヒトリの犠牲無く渡れて安心だヨ。アト、このロープは次の人タチの為に残して行くネ」

「俺はあそこが故郷だから、離れるとなると少し感慨深いな…」

「ここに居る大半がそうだろう。だけド、ここにいるのは安全を求めて移動する決断を下した人タチ、後悔しているのはヒトリも居ないはずサ。せっかくだからテを振ってから行こうカ」


アリガト~

イツカカエッテクルカラナ~

ノコッテルヒトタチモガンバレヨ~


皆が感慨に浸り、川の向こう岸とその奥にある故郷に想いを馳せる。



その時だった。



俺らのすぐ横にある橋。そのスライムが高速で膨張を始める。


瞬きする間も無く、俺らの故郷、さいたま市はスライムに呑まれたのだった。


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