断罪イベント365ー第17回 経理②「増税断罪編」
断罪イベントで365編の短編が書けるか、実験中。
婚約破棄・ざまぁの王道テンプレから始まり、
断罪の先にどこまで広げられるか挑戦しています。
「断罪開始!」
王子の高らかな声に、広場がざわつく。
今回の被告人は、王国経理局の中堅官僚
――通称「計算機の番人」。
手には、魔道具電卓が握られている。
「この者は、国庫の赤字を理由に税率を引き上げ、
国民生活を圧迫した罪に問われている!」
「異議なし!」と観衆。
しかし、経理官は動じなかった。
冷ややかな目で王子を見つめ、魔道具電卓をピピピと叩く。
「ご説明しましょう」
彼はポケットから取り出した書類を広げた。
そこには細かすぎる表と、色分けされた棒グラフ。
「昨年度の断罪イベントにかかった費用
――人件費、衣装代、演出用ドラゴンのレンタル代を含めて、
実に18億ガルダ!
その赤字を補填するため、今年度から消費税を1%引き上げました」
「……は?」
観衆のあちこちから、口がぽかんと開く音が聞こえた。
「つまり、断罪イベントのために国民に負担を?」
「はい。全て、王子の“冤罪率”が予算を圧迫した結果です。
だいたい王子、あなたの断罪命令は9割がた再審請求されています。
非効率です。改善を」
「そっちに話を振るなああああ!!」
王子が叫ぶも、遅かった。
観衆の怒りが沸騰し、プラカードを掲げる者まで現れた。
**《断罪より物価を何とかしろ!》**
**《ドラゴンいらない》**
**《観覧チケット高すぎ!》**
そのうち誰かが叫んだ。
「今度は、国民が断罪する番だーっ!!」
「うおおおおおお!!」
広場が揺れた。怒りの波が、理屈屋の経理官を押し流す。
「おかしい……私の計算に、間違いはないのに……!」
そう叫びながら、経理官は書類ごと吹き飛ばされ、
魔道具電卓が空を舞った。
そして数日後、断罪イベントの会計監査が行われ、
王国議会からの通達が貼り出される。
《来年度より、断罪イベントの規模を縮小します》
【観客数制限】【衣装レンタル自粛】【ドラゴン禁止】
王子は青ざめた。
「えっ……来年から、あの演出なし……?
それってもう、俺の見せ場じゃないじゃん……」
だが、経理官はその後もひそかに活動を続けたという。
「今後は、断罪と税収の相関をグラフ化して、再提案するつもりです」
断罪イベントによる国庫の危機!
ドラゴン使って、演出してたんだ・・
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m