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太陽のようで

 どれだけの時間が経ったのか分からない。





 公園のあまり目立たない場所で声を殺し、泣き続けていた俺は、突然勢いよく降ってきた水によってずぶ濡れとなった。







「!?」





 あまりにも突然のことで驚いた俺は、泣くのをピタリと止め、顔を上げる。






 目の前には淡いピンクのワンピースを来た女の子。




 歳は多分、俺と同じくらい。


 可愛らしい容姿で、手には青いバケツを持っていた。




 ――――俺がずぶ濡れになった原因は、おそらくこの少女だろう。







「……何、するんだよ」






 訳も分からず水をぶっかけられて、ますます泣きそうだ。





「なんで……? なんでいきなり……」






 涙声で問い掛けると、少女は真剣な顔をする。






「男の子は簡単に泣いちゃダメ!」





 ――――簡単なことで泣いてる訳じゃないんだけど。





 俺はそう思いながらも理由なんて言わなかった。


 言っても同情されるだけだ。それは嫌だった。




「………で? なんで水かけたの? 服、びしょびしょになったじゃん」




 着ていた灰色のシャツは濡れたせいで色が濃くなってしまっている。



 俺が少女を睨みながら文句を言うと、少女は笑った。






「だって、泣いてたから」







 思わず「はぁ?」と言い掛けた。






 ――――泣いてる奴には水をかけていじめるのがこいつの趣味なのか?






 そう考えていると、少女はさらに続けた。






「びしょ濡れなら、泣いてたの隠せるでしょ?」







 ――――だからって、普通は知らない相手にいきなり水をぶっかけたりしないだろう……。





 そう言ってやりたかったけど、彼女があまりにも無邪気な笑顔をしているので、その言葉は呑み込んだ。




 こんな笑顔を向けられるのは初めてで、もう少し見ていたいと思った。







「ねぇ。君、名前は?」




「……燈亜」





 教えたのは本名ではないけれど、それを知らない彼女はますます笑顔になる。




「燈亜くんだね? 私は朱音! よろしくね!」




 ――――あぁ。温かい微笑みだ。




 少女――朱音が浮かべる笑みは、まるで太陽のようで――……。





 俺の涙はいつの間にか完全に止まって、代わりに彼女につられて、微笑が顔に浮かんでいた――――。









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