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嘘の優しさ

 知り合いの悪魔が人を襲っているのを見ていて、何度も心が痛んだ。



 ――時には涙が溢れる始末。




 俺自身から誰かを傷付けるなんてことは怖くて全く出来なくて―――――。




 それは悪魔としては必要ない、邪魔なだけの感情。



 悪魔としての「欠陥」がある俺を、両親はいつも冷めた目で見ていた。




 ――――そして、俺は捨てられた。





 いつもなら「欠陥」のある俺に話し掛けてくることのない父親が、優しく笑って「遊びに行こう」と誘ってきたんだ。





 俺はそれが嬉しかった。




 嬉しくて嬉しくて、差し出された父親の手を握った結果……人間界に連れてこられた。







 初めてやってきた人間界。







 魔界とは違う空気、景色……。

 瞳を輝かせる俺に、柔らかい声音で父親は訊いてきた。








「ここが気に入ったか?」と。









 大きく頭を縦に振って、俺は頷いた。


 それを見た父親は「そうか」と呟く。








 ――――そして、いつものような冷たい表情を浮かべた。








「父さん………?」



 急速に俺の中で不安が膨れ上がる。


 父親は繋いでいた手を振り払い、俺を思い切り突き飛ばした。




 幼い俺はその勢いで地面に尻餅をついてしまいながらも冷めた眼差しの父親を見つめる。









「お前は今日からここで生きろ。……ここが気に入ったんだろう?」







 父親が顔に現したのは見た者を凍り付かせてしまいそうなほど冷たい微笑み。




 ――――俺は身動き出来なかった。




 はっきりとした拒絶の意志があるのを感じた。






 今日、俺に見せてくれた優しい微笑みは嘘だったのか。




 ――――俺は、騙されていたのか。





 その結論に至った時、既に父親の姿は目の前から消え失せていた。




 ――――父親はきっと、一人で魔界に帰ってしまったんだ。




 幼かった俺は、当時まだ魔界へ帰る術を会得していなくて…………。





 残された人間界の公園の中で、一人うずくまって泣いていた。










 そんな時だ。








 ――――――彼女と出会ったのは。










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