生け贄の日記
「その日記の名はサクリファイスダイアリー。………生け贄の日記だ。その力は名の通り、死者を蘇らせる代わりに生者を殺す」
「つまり、私は他人の命を使って、生き返っているってこと……………?」
朱音の表情が悲痛に歪む。
「ああ」
俺は肯定した。
朱音の表情は苦しそうで――――俺はそれにつられて泣きたくなった。
全ては自業自得。
俺の我が儘。
――――俺の、馬鹿。
自分の行動をを恨んだ。
目の前の彼女に、俺の好きな表情はない。
――――当たり前だ。彼女がこんな事を許すはずなんてないのだから。
彼女の笑顔を――今度は俺が奪ってしまった。
――――ああ、俺は馬鹿だ。
愛しい人を、傷付けて――――。
「どうして………言ってくれなかったの?」
責めるような、彼女の言葉。――心の痛みが強まった。
「言ったら、使わなかっただろう?」
彼女を取り戻すために、俺は嘘を吐いた。
色んな事を隠して、朱音にサクリファイスダイアリーを使わせた。
「……私、もうこの日記、使わない」
痛々しい表情のまま、彼女は日記を手に取り、それを俺の方へと差し出してくる。
その瞬間、きっと俺は保っていた無表情が崩れたと思う。