彼女には負ける
それからまた数日が経った。
俺は一度、悪魔――トリアとして朱音の所に行くことにした。
転移したのは彼女の部屋。
――――無断だけど、俺の姿を誰かに見られる訳にもいかないから我慢して貰おう。
「最近の調子はどうだ?」
勉強机に向かっている朱音に俺は問う。
ちなみに俺の調子はあまり良くない。
ここ数日、罪悪感が俺をずっと苦しめてくれるせいで毎晩のように悪夢を見ていた。そのお陰で寝不足である。
彼女はそんな俺を一度見てから、恐る恐るといった風に口を開いた。
「………ねえ、最近の死亡事故って、この日記と関係しているの?」
俺は無理に浮かべていた笑みを思わず消した。
「………何故、そう思う?」
「だって、私が生き返ってから毎日のように死ぬ人が出るなんて、さすがにおかしいじゃない」
朱音の答えを聞いて、俺はうつむいた。
「………ああ、そうだな」
何故、俺は否定しなかったのだろう。
でも、もう彼女は勘付いてしまっている。きっと嘘を言っても通じない。
それに、彼女の瞳は言っていた。「本当のことを教えて」と。
……………俺は朱音だけには弱いんだ。
だから、俺は決意して――――ゆっくりと彼女を見た。
「………お前が考えた通り、最近の死亡事故とその日記帳は、関係している」
右手の人差し指を、彼女の机に置かれている日記帳に向け、そして俺は真実を告げる。
「その日記は死者を生き返らせることが出来るが―――同時に生者を殺す物でもある」
彼女の瞳が、驚愕に染まった。