原因は俺なんだ
朱音の所に行ってから数日後の月曜日。俺は学校に居た。
あの日から一日一人、この町では人が亡くなっている。
亡くなった人間の家族や親しい人達の嘆き、痛みの気配は悪魔である俺にははっきりと届いていた。
――――――苦しい。
罪の意識が俺の胸の中で渦巻いて暴れ回っていた。
けれど、俺はこれが朱音を取り戻す代償なら……と逃げ出さずに苦しみを耐えていた。
――――――そう、逃げてはいけない。
これは俺の我が儘が原因で起きたことなのだから。
「黒井、大丈夫か?」
必死になって感情を抑えつけていると、遠慮がちに声を掛けてきた奴がいた。
「へ……?」
顔を上げると、よく会話する同じクラスの男子生徒――坂野が心配そうな目で俺を見ていた。
「青い顔してるけど……どこか体調でも悪いのか?」
「……俺、そんな酷い顔してる?」
どうやら心の内が表情に表れていたらしい。
俺は苦笑を浮かべる。
「大丈夫……。ちょっと寝不足なだけだって。深夜までゲームに熱中しててさー……。――――結構レベル上げたのにラスボスに勝てねえんだけど」
「それはお前の戦略が悪いんじゃねーの? てか、寝不足だけでそこまで酷い顔になるなんて、お前どんだけデリケートなんだよ?」
「うるせーなー」
どうやら上手く騙せたらしく俺は安堵し、気分を変える為に顔でも洗いに行こうと席を立った時だった。
「ちょっ………大変! 大変だ!」
教室の入り口から勢いよく入ってきた男子生徒。
彼の顔は真っ青で、何か事件が起こったのだと教室に居た生徒は理解した。
「花田が……花田が階段から落ちて頭打って……」
花田とはこのクラスの生徒で明るい性格をした女子だ。
みんなからは好かれていて、だから教室は急に騒がしくなった。
そのざわめきに混じり、近付いてくる救急車のサイレン。
俺の心は、冷えていった――――――。