表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/16

気付かれませんように……




 さて、俺はここへ来た目的を果たさなければならない。




「ん?」




 俺は少しわざとらしいか? と思いながら首を傾げた。



「朱音、ベッドの下に何かある」


「え?」





 朱音は俺の言葉に不思議そうに首を捻る。




「ちょっと待って」




 椅子から立ち、床にしゃがんでベッドの下に手を伸ばし入れたところで、俺は朱音に気付かれないように軽くその手を振った。


 するとその手には例の日記帳が現れる。


 俺はそれを確かめると立ち上がり、朱音に日記帳を手渡した。






「あっ……」



 朱音が目を見開く。



「何だこれ? 朱音の名前が書いてあるけど……」



 自然に、自然に思えるように注意しながら、俺は朱音に問う。





「落として気付かなかったのか?」



「あ、あははははははは……」







 答える言葉が見つからないらしく、朱音は乾いた笑みで応じた。





 ――――どうやら大丈夫そうだ。






「……ま、朱音らしいけど」






 いつもどこか抜けている朱音は、よく俺を呆れさせる。だけど今回は感謝だ。





 ――――でも、何の疑問も持たずに俺の演技が受けて入られて、やっぱり朱音に対して不安が拭えない。


 多分、朱音以外の奴なら俺に不審なところがあるのに気付くのではないだろうか。


 そう思うと、今日もいつもと同じように俺は溜め息を吐いた。





 さて、俺が今日するべきことは終わった。




「それじゃ、元気そうだし、俺は帰る」


「うん、ありがとう燈亜」



 朱音は微笑んで俺に礼を言う。




 ズキン、と心が痛むけれど、俺はそれを無視。





 俺は手を軽く振りながら、病室を後にした。







「朱音………」









 どうか彼女に気付かれませんように…………。





 俺はただ、静かに願った。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ