命の灯
この物語は「Sacrifice Diary」を、悪魔――トリアの目線で書いた作品です。
初めに「Sacrifice Diary」を読むことをおすすめします。
ご意見、ご感想等、お待ちしています。
ただ、俺はあいつの望みを叶えてやりたかった。
そしてもう少しだけ、あいつの傍に居たかったんだ――――――。
何故か、今日はずっと嫌な予感がしていた。
俺は悪魔だから、そういうもの――特に不幸の気配なんかは、はっきりと分かる。
だけど今日は一段とそれが酷い。
――――何だ? この感じは。
そして、俺はその理由をすぐに理解することになる。
ふと、足下を見た。
広がるのは街並み。
空を飛んでいる俺の姿は地上の人間には決して見えないように魔術をかけている。
もしも空を飛んでいる俺を見られたりなんかしたら大騒ぎになるだろう。そんな事態を起こさないためだ。
街を見下ろしていると、一人の少女が信号待ちをしているのが見えた。
「あ……」
その少女は俺が片思いをしている相手。
きっと何処かに行くところだ。
俺は彼女の姿を見付けたことが嬉しくて微笑をこぼし、その上空を通り過ぎようとした。
――――だけど、視界の端に凄い勢いで交差点へと向かう車が。
そして―――――……。
「危ないっ!!」
俺は思わず叫んだ。
横断歩道を途中まで渡った少女が足を止める―――。
直後、彼女の姿が一瞬消えて――――再び現れた彼女からは、命の灯は消えていた。
「あか………ね……」
信じられなかった。
信じたく……ない。
俺はすぐに、一つの方法を選ぶ。
彼女――暁山朱音を蘇らせよう、と…………。