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「午前か午後か」

 スパークらとの戦いを終えて、カンソウは一つ悩むところがあった。ゲイルが午後でも通用するかもしれない可能性を秘めていることだ。弟子が、まさかあそこまでタフで、咄嗟のことに頭が回り、おまけに勝利をするとは思わなかった。しかし、それはスパークとの戦いに万全な態勢で臨んで、腕を犠牲にしなければ勝てなかったということにもなる。

 午前の十人抜きが出来、チャンプに挑む道をやはり取るべきだろう。

 カンソウの考えは決まった。



 2



 翌朝、朝食の席でゲイルの希望を聞いてみることにした。

「あれは、勝ったとは言えないよ。むしろ負けかな」

 弟子が言った。

「何故だ?」

「右肩を損傷させなきゃ勝てないからだし、剣だって切っ先が少し力を乗せて突いたというより、触っただけだもの」

 確かに弟子の言う通りだ。

「ならばお前の当面目標は何かあるか?」

「うん、まずは午前中に十連勝することと、ヒルダ姉ちゃんに勝つことだ」

 ヒルダとスパークではえらい違いがありそうだとカンソウは思ったが、弟子がそう言うのならば、仕方が無い。何か思うところがあるのだろう。

「分かった」

 カンソウは弟子の意思を尊重することにした。

 コロッセオへ向かうが、今日はカンソウが戦う番であった。しかし、カンソウは辞退し、ゲイルに順番を譲った。

 昨日の今日、絶好調な内に戦いの勘を磨いて欲しい。カンソウはそう願っていた。

 受付で武器を預けて、出場料を払い、二人はジェーンの後をついて行った。

「ゲイル君、強いのね。昨日の試合で、スパーク達は一度ここを離れたわよ」

「そっか、スパーク達はいなくなったんだ」

 どこか寂しそうにゲイルは言った。

「どうしたの?」

 ジェーンが怪訝そうに尋ねた。

「たぶんスパーク達は、格闘技の方のチャンピオンだと思うんだ。もう誰も自分達を止められる者がいない。だから、寂しくてここに来たんだと思う」

 その言葉の意味にカンソウは驚いて声を上げた。

「スパーク達には目標が出来たということか。それがお前だと、そう言いたいのか?」

「そうだね」

 ゲイルは軽く答えた。

「また戦ってみたいな」

 扉が叩かれ、出番を告げられた。

 しかし、ゲイルは駆け出しの闘技戦士達を次々破ると、四回戦にデ・フォレストと、フォーブスが現れた。

 今回戦うのはフォーブスの方だ。

 カンソウとデ・フォレストは下がり、共に相棒に声援を送った。

 剣が不得手のフォーブスだが、油断はできない。

 ゲイルは木剣を振り回し、その感触を再確認していた。フォーブスはその様子を眺め、剣を上段に構えた。

 審判が両者の間に入る。

「では、第四試合、ゲイル対、挑戦者フォーブス、始め!」

「怒羅アアアアッ!」

 ゲイルが真っ先に動いた。

 旋回して横薙ぎでフォーブスの懐に入り、体当たりを喰らわせようとしたが、フォーブスの腕はゲイルの手首と襟首を掴んで足を払って投げ倒した。

 大した技じゃないが油断はできない。

 ゲイルも分かっているだろうか。我武者羅に飛び込んで体当たりを仕掛けてもフォーブスは何度も投げて防ぐだろう。

 ゲイルは転がって立ち上がり、再び咆哮し、斬りかかった。

 体当たりを諦めたのが潔いとカンソウは感心した。

 剣と剣でぶつかり合う。

 剣術ならゲイルの方が上だ。現に乱打戦を支配しているのはゲイルであった。

「フォーブス! ガキ相手に圧倒されてんじゃねぇ!」

 デ・フォレストが叫ぶ。

 だが、戦いは圧倒的で、フォーブスは合間に足払いをしたが、この足をゲイルの剣が素早く反応して打った。

「マジか!?」

 デ・フォレストが悲鳴がかった声を上げ天を仰いだ。

「勝者ゲイル!」

 審判が宣言した。

「さすがは、サンダーボルトのスパークを破っただけのことはあるな」

 フォーブスが冷静な顔でそう言った。

「何を感心してるんだ! ったく、覚えとけよ」

 デ・フォレストが睨み、二人は会場を後にした。

 ゲイルは、一気に成長したような気がする。カンソウはそう思った。飛躍的に成長している部分もあれば未熟なところもある。

 次の対戦相手が入場して来る。入り口で剣を顔の前に立てそして提げた。ゲイルの越えなければならない壁、ヒルダの登場であった。

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