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「謎の猛者」

 カンソウは負けたが、ゲイルは失望する様子を一つも見せなかった。

 午後の鍛練は止めて、二人は久々に強者達の戦いの様子を観ることにした。

 一回戦から見応えがあったが、名を知らぬ戦士同士だった。だが、片方が圧倒的な打ち込みを見せ、そこに体術を織り交ぜ、最後は格闘技の技バックドロップでダウンを勝ち取った。

「あんな技、見たことない」

 ゲイルが感心していた。

「あれは格闘技の技だ」

「格闘技か」

 フレデリックも何故か得意な技だったな。カンソウは友の昔の戦いぶりを思い返して言った。

「二回戦、スパーク対、挑戦者ウォー始め!」

「ウォーさんだ!」

 ゲイルがはしゃぐ。

 両者は凄まじい乱打戦を見せた。だが、旗色が悪い。ウォーの方が圧倒されている。スパークはデズーカほどでは無いが巨漢であった。ウォーの肩を掴むと鎧の重さごと持ち上げて地面に強かに叩きつけた。

 ウォーのファンが声援を送る。

 カンソウの勘が告げる。これはもっと近くで見る必要がある。

「来い、ゲイル、移動するぞ」

「待ってよ、ウォーさんが!」

「ウォー殿ならまだもつだろう」

「それはどういう意味だよ、師匠!」

 カンソウは早足で歩き始める。ゲイルも続いていた。

 ウォーへの声援の中を抜けて、カンソウとゲイルは受付へと戻った。

「師匠、どうして試合を見せてくれないんだよ!」

 ゲイルが憤怒の様子で言った。

「特別室を二枚」

 カンソウは金貨を二枚出す。案内嬢が現れ、カンソウは後に続いた。

「師匠!」

 カンソウは振り返った。

「急ぐぞゲイル、まだ間に合うかもしれない!」

 ゲイルの顔色が蒼白になった。

 二人は金貨一枚で観戦が出来る、皇族などが観覧する特別室へと入った。

 地上と地続きのこの部屋は選手目線で試合を見られる場所であった。他に観戦者はいなかった。

 酒を断り、ゲイルと並んで高価な座席に座る。

 ウォーが今、地面に手を付き何とか立ち上がろうとしているところであった。が、鍛えられた胸筋を剥き出しにしたスパークがゆっくり歩んで行き、ウォーの腹を蹴り上げた。

 午後の中核ウォーが無様に仰向けに倒れていた。

「ウォーさん! 立って!」

 ゲイルが叫ぶ。

 ウォーは根性を見せたが、剣を放り捨てたスパークが突進し、ウォーの身体に猛牛のようにまともに体当たりをした。

 凄まじい鈍い音がした後、跳ね飛ばされたウォーは起き上がらなかった。

 審判がカウントを始める。

 ゲイルも会場もウォーの声を呼び続ける。

 ウォーはやはり根性を見せる。両手を地面に着けたところで、背中を思い切りスパークが踏みつける。ウォーは無様に潰れ、審判がスパークに退くように注意をする。

「フン、つまらん」

 そうスパークの声が聴こえた様な気がした。

 カウントが十を数え、ウォーは敗北した。セコンドの中年の女性戦士カーラが担架を要求していた。

「覚えて置けよ、次はアタシがあんたをダウンさせてやるわ」

「何か言ったか? 弱者の吼え声など聴くに値しないぜ」

「この野郎! 剣を持て! 今すぐアタシがその増上慢を叩き潰してやる!」

 カーラが怒りの声を上げると、スパークは木剣を持ち、それを圧し折った。

 会場が、カンソウもゲイルもカーラも呆気に取られていた。だが、いち早く立ち直ったカーラが言った。

「剣への侮辱、後悔させてやる!」

「カーラさん、待った」

 意識を取り戻したウォーが止めた。

「貴女がここで戦えばそれはルール違反だ。剣の侮辱は剣士達に晴らして貰えば良い」

 ウォーが振り返った先には、入場してくる新たな挑戦者二人の姿が見えた。

 それがフレデリックだと知った瞬間、カンソウは武者震いした。

「フレデリック! そいつをお前が倒せ!」

 カンソウは思わずそう叫んでいた。視界には折られた剣がある。剣への侮辱だとカンソウ自身も怒っていたのだ。

 フレデリックはまるでこちらに気付いたかのように一つ頷き、ウォー、カーラ組と入れ替わってセコンドのマルコ共々位置に着いたのであった。

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