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「ゲイル、咆哮」

 ゲイルは頭上から剣を振りかぶり、デ・フォレストも同じ状態で、どちらが先に相手を打つかの一発勝負になりそうだったが、二つの剣はぶつかり合った。

「デ・フォレスト、押し返せ、下段には注意しろよ!」

 フォーブスが相方に檄を送る。なるほど、セコンドはこういう役目か。そう思いつつ、競り合いに注目する。下手に忠告すれば、ゲイルのチャンスを潰すことになる。その点、同じセコンド役のフォーブスは腕組みし、デ・フォレストの未熟な部分に注意を促していた。

 競り合いの途中にデ・フォレストが思い切り押したが、ゲイルは一歩押されただけで、今度は彼から押し返した。年上の若者デ・フォレストが情けなく三歩下がった。

「良いぞ、ゲイル!」

「踏ん張れ、デ・フォレスト! 下半身が甘いぞ!」

 フォーブスは遠慮なく相方の弱点を述べていた。それはデ・フォレストにとって不利になるのでは無いだろうか。それよりもフォーブスが堂々としていた体躯の割に、以前、剣を操るのが下手だったことを思い出した。

 セコンド役にあまりにも慣れている。フォーブスはもしかすれば、格闘技のレスラーだったのかもしれない。

「怒羅怒羅怒羅怒羅アアアッ!」

 ゲイルがよろめいて及び腰のデ・フォレスト目掛けて凄まじいまでの打ち込みを見せた。

 フォーブスが感心していた。

「その調子だ、ゲイル!」

 カンソウはそう言い、弟子が未だに下段を打てないことが気になった。フォーブスの助言をデ・フォレストが覚えていれば、下段狙いは案外苦しいものになるか、逆に隙を見せてしまうのかもしれない。

「このガキが!」

 デ・フォレストが剣の間を抜けてローキックをゲイルに放った。

 弟子はそれを避けるが、今度はデ・フォレストが攻撃に移った。と、思われたが、何と弟子は吼えながらデ・フォレストの剣閃を全て受け止めていた。

 観客達が異口同音にゲイルに声援を送る。

「デ・フォレスト! 耐えて隙を衝け!」

 フォーブスが消極的な助言を送り、誰がどう見ても、ゲイルが有利なのが明らかであることが伝わって来た。

「そんな、まどろっこしいことしてられるかよぉっ!」

 デ・フォレストが思い切り、蹴りつけた。

 それがたまたま剣術の合間を抜けゲイルの顔面に衝突した。

「ゲイル!」

 よろめき倒れそうになる弟子に思わずカンソウは声を上げた。

「デ・フォレスト! 今だ!」

「くたばれや、小僧!」

 デ・フォレストがゲイルに接敵し、剣を突いて来た。が、それは一瞬のことだった。

 ゲイルはよろめきながら切っ先を避けて、デ・フォレストの懐に入り込み、下顎に掌底を炸裂させた。

「ごふっ!?」

「デ・フォレスト!」

 相手側が慌て始めるのだが、よろめく相手にゲイルは体当たりをし、自分よりも大きな身体の相手を押した。

「怒羅アアアッ!」

 ゲイルの吼え声が響き渡り、突き出された切っ先がデ・フォレストの胸を突いていた。

 審判が頷く。

「勝者、ゲイル!」

「よっしゃ、ゲイルラッシュが決まったぜ!」

 ゲイルが歓声に応える中、悪態を吐きそうなデ・フォレストを、年上のフォーブスが宥め、両者は会場を後にした。

「よくやった、ゲイル!」

 カンソウが言うと、ゲイルは頷く。

 程なくして入り口から二人組が姿を見せた。次の相手である。

「体力の配分には注意しろ」

「分かった」

 ゲイルが頷く。だが、カンソウはおそらくゲイルは運が良ければこの先勝ち進めるが、体力が底を尽くか、筋力の限界かで脱落するだろうと予測していた。手数の多さは武器にもなるが、弱点にもなるということであったが、非力な少年が勝ち上がって行くにはそうして慣らして行くしか道はない。カンソウはやる気満々の弟子を見て、これから打ちひしがれる様を考えている自分に嫌悪を覚えた。俺の弟子だ。俺が信じなくてどうする。

 そうして新たな相手が歩んで来る様を弟子と共に見やっていたのであった。

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