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「ジェーンの返事」

 着いた先、数人がジェーンを取り囲んでいた。

「良いじゃねぇか、お前も良い歳だ。そろそろ結婚相手が必要だろう? 俺なら貴族の用心棒だし、コロッセオのチャンプだ。金ならたくさん入って来るぞ」

 ルドルフが手下を下がらせ、ジェーンを口説いていた。

「すみません、ルドルフさん、他を当たって下さい」

 ジェーンは冷ややかに慇懃にルドルフを言葉で突き放した。

「こ、こんの女!」

ルドルフがジェーンに掴みかかろうとした時、カンソウはその手を掴んで捻り上げ、足払いを掛けて転ばせた。

「カンソウ!」

 ルドルフが尻もちをついたまま怒りと当惑の声を上げた。

「ルドルフさん、私はカンソウさんとお付き合いをしているの。もう関わらないで」

 今度はジェーンはルドルフを拒絶した。

「何だと、この野郎」

 ルドルフが立ち上がり、カンソウを睨み付ける。手下達が剣を抜いた。

「おう、女ごと斬り捨てろ! 調子に乗りやがって年増ババアのくせに」

 カンソウも剣を抜いたが、それは競技用の方であった。

「死ねえええっ!」

 ルドルフ党の馬鹿どもが剣技にすらならない剣術をぶつけてくる。カンソウは身を避けはしなかった。そのまま剣で弾き返し、身体を強かに打って反撃に出る。ルドルフ党はあっという間に及び腰になっていたが、剣先だけはカンソウへ向けていた。

「ルドルフ、いい加減に真っ当な人間になれとは言わん、だが、真っ当な戦士にはなれ。チャンプにはチャンプの示す態度があり、それが闘技戦士達の見本となる」

 そしてカンソウはルドルフ党に加わった若輩の闘技戦士らを見て言った。

「いつまでも鈍色卿の陰で良い思いができるとは思うな。お前達も戦士なら、自分で名声を掴み取れ」

 闘技戦士らは頑なに態度を変えない。完全にルドルフと鈍色卿の威を借る情けない連中と成り果てていた。それならそれで、いつか目を覚ます時があるだろう。カンソウだってそうだった。だが、カンソウは幸い、フレデリックと言う真っ直ぐな男の影響で変われたのだ。こいつらのきっかけが良いものであるようにとカンソウは竜の神に祈りを捧げた。

「ルドルフ、退け」

 カンソウが凄むとルドルフは後ろ手に後ずさりして立ち上がった。

「覚えていろよ、カンソウ!」

 ルドルフを最後にし、小悪党達は薄闇の中へと消えて行った。

「カンソウさん、ありがとう」

 背後から声が聴こえ、カンソウはジェーンの存在を思い出した。ジェーンを忘れる程、ルドルフ党が許せなかったのかもしれない。

 カンソウはジェーンを振り返った。

「ずいぶん待たせてしまって、度々、本当に申し訳ない」

 カンソウが謝罪すると、ジェーンはかぶりを振った。そしてカンソウは意を決して尋ねた。心臓が高鳴る。口が上手く開かないような気がしたが、ようやく声が出た。

「ジェーンさん、先日の御手紙の内容を伺いたい」

 すると、ジェーンははにかんで応じた。

「カンソウさんが私で良いなら、私はあなたの思いに応えます」

「それはつまり」

「あなたとお付き合いさせていただきます」

 カンソウは耳を疑いそうになったが、ジェーンに問い返したりはしなかった。彼女は確かに自分と付き合ってくれると言ってくれたのだ。

「ありがとう、ジェーンさん」

「いいえ」

「今日はもう遅い、家まで送ろう」

「そうね。お願いします」

 ジェーンが先に歩み始めた。カンソウは気後れし、慌ててその後を追ったのであった。

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