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「打倒ヒルダ」

 カンソウはやはり一番鶏よりも早く目覚めてしまった。睡眠の方はしっかり取っているつもりだが、雨でも嵐で一番鶏が鳴かなくとも、この時間には目覚めてしまう。

 片腕でも慣れたように鎧下着に着替え、同じく黄金色のスケイルメイルを装着する。腰にある鞘に収まったブロードソードを叩き、夜勤の店番に一声掛けて、外に出る。

 今朝は曇りだった。

 軽く身体を動かし、止まると、覚悟を決めたようにブロードソードを抜いた。

 カンソウは無心に剣を走らせた。片手剣はまだまだ不慣れだ。しかし、左腕が使えぬのなら仕方が無い。片手剣に慣れるまで振るい続けるだけであった。

 フレデリックは強くなった。あのデズーカさえ最後に見た時は覚醒していた。ヒルダはどうだろうか。多少のブランクがあり午前に出ているとコロッセオの受付嬢が言っていた。

 カンソウは顔を上げた。

「師匠の剣は鋭いね」

 ゲイルが離れた場所で立っていた。

 そしてゲイルは両手持ちの剣を振り回した。鈍い風の音色が聴こえた。

「もっと、師匠みたいな風が斬るような音が出ればとは思うけど」

 カンソウは一息吐き、弟子のもとへ歩んで、肩に手を置いた。

「鍛え続ければなれる。お前は根性はある。あの男みたいにな」

「フレデリックのこと?」

 カンソウはあえてその言葉に応えず言った。

「午前の部の強さが分かったか?」

「ああ、分かったさ。だけどゲントぐらいだったら俺」

 と言ったところでカンソウの目を見たゲイルが口を閉じた。

「お前の最初の超えるべき相手を見つけた」

「え?」

 ゲイルは寝耳に水といったていで目を開いた。

「ヒルダと言う」

「お、女の人?」

「そうだ」

「可愛い? 綺麗な人?」

「ヒルダはお前と似たような戦い方をする。動き重視の戦いだ。そして投擲術にも秀でている。正確無比に顔面を狙い、それを弾いた時には既に懐に潜り込んでいる」

 カンソウが解説すると、ゲイルはヒューと口笛を吹いた。

「言っておくぞ、ヒルダも鍛えに鍛えた努力家だ。本来なら午後に居てもおかしくはない。お前はフレデリックの前にヒルダを打倒しろ、良いな?」

「分かった」

 ゲイルはまるで浮かれていた。まだ見ぬ異性に熱を上げているのだろう。ヒルダは綺麗な女性だ。年の頃はどのぐらいになっただろうか。三十にはまだ届いていないとは思う。

 カンソウは舞い上がって、素振りをする弟子を見て溜息を吐いたのであった。



 2



 コロッセオに着き例の様に師弟は観客と挑戦者と分かれた受付へと進んだ。

 ゲイルは受付嬢を口説いている。その後、現れた案内の女性も口説いている。

 まぁ、変に優しい性格をしているよりはマシか。

 観客席へ上がる。

 円形の観客席はやはり満員だ。

 さっそく最初の挑戦者二人が出てきた。

 カンソウの目が右手の人物に注がれた。剣を額に近づけると天へ翳す。伊達を飾らず戦いやすい装備に身を包んだ女性は紛れもなくヒルダであった。

 その相手はゲイルであった。何やらさっそく声を掛けている様子であった。

 審判がゲイルを注意した。

「では、第一試合、ヒルダ対ゲイル、始め!」

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