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ピザを作ってみたい

「ピザって知ってますか?地球にあった昔の食べ物らしいんですけど。」

唐突に後輩の祐希が俺に聞く。

「ピザ?なんだそれ」

「なんか、いろんなものをパンにのせた食べ物らしいんですよね。ちょっと最近資料室で見つけた本に書いてあったんですよ。」

祐希は嬉しそうに古い本を掲げる。その本は埃だらけで、表紙の文字も薄れている。

「地球に関する資料なんてよく見つけたな。今地球に興味を持ってるのって多分お前だけだと思うぞ。それにパンにのせるって、そんなのがいい料理なのか?」

そう。地球という惑星は何百年も前に滅んだ。俺たちはその惑星から逃げ出した生き残りの末裔らしい。それから何百年ものの間、このとてつもなくでかい宇宙船の中で、俺たちが住めるような惑星を探しながら宇宙を漂っている。俺たちは生まれてからこの生活が当たり前となっており、地球という存在はもはやサンタさんのようなフィクションの物語となり、大人になるにつれて皆興味を失うのだ。

「俺は本当に地球に憧れがあるんです。地球はフィクションなんかじゃないって信じてる。だから、このピザってのもフィクションじゃないって。だから先輩、俺と一緒にピザを作ってください!!」

祐希は俺に頭を下げる。こいつは昔から地球に興味があって、ことあるごとに地球についての情報を集め回っているのだ。この前だって、電車、という謎の乗り物を再現するために宇宙船の中にレールというものを置きまくって警官に怒られてた。

「はあ、まあいいけど。俺も暇だし。で、どうやってそのピザってのを作るんだ?」

「本当ですか!?ありがとうございます!!そうですね、とりあえず、大きなパンといろんな食べ物を持ってきましょう!」

というわけで、俺たちは船内のスーパーへと向かった。

「で、この食用チューブを使えばいいのか?それとも人工肉を持っていけばいいのか?それとも、食べ物ってのはスープだったりフライだったり既に用意されているものなのか?」

スーパーにおいてある食品はどれも船内の工場で作られている。栄養満タンで量もちょうどいい。例えば、この食用チューブだが、さまざまなビタミンを取りながらもカレーのような味を楽しめる、一石二鳥な商品なのだ。

「そうっすね!とりあえず色々持っていきましょう。」

そして食品を揃えた俺たちは食品を持って、厨房へと向かった。

「まずは、パンを広げて、色々のせられるようにしないといけないな。そして、その後は買ってきたものを置いて...」

と俺たちは人工肉や食用チューブを置いた。

「これで完成なのか?」

「そうなんすかね?」

「お前も自信ないのかよ。」

何かが違う気がする。そう思いながら俺たちは悩み、もう一度本を確認することにした。

「あ、ここ。見てください。このイラスト、なんか焼いてませんか?」

「確かにな。それにこの中身って、野菜じゃねーか?」

「野菜!?あんな高級品なんて変えないですよ!」

「お前、ピザを完全に再現したいんだろ。だったら俺が払ってやるから、買いに行くぞ。」

「ありがとうございます!!!」

というわけで、俺たちは野菜を買ってきた。キャベツ、にんじん、玉ねぎ、ブロッコリー、など、買えるだけ買って、パンの上にのせた。

「ピザってなんて高級品なんだ...!」

「で、これを焼くんだよな。よし。」

と俺は大きいフライパンを取り出して、パンを焼き始めた。そして、あることに気がついた。

「これって、ひっくり返せなくないか?」

「確かに、そうですね。どうしましょう...あ!これ、見て下さい。ピザが白いのは本が色褪せたからだと思っていたんですけど、これってもしかしてチーズなんじゃないですか?」

「あー、チーズで全てをくっつけているのか。なあ、チーズ買ってくるからちょっとパン見ててくれないか?」

「もちろんです!あとパンじゃなくてピザですよ!」

そう言って、俺はチーズを買い、戻ってきた。そして、パンの上にチーズをのせた。

「どうして、ピザは忘れられたんだろうな?」

「さあ?作るのは簡単そうですけど、野菜が高級品だから皆作ってなかったりして。」

「お、なんかできてきたっぽいな。」

少し底の焦げたパンに、さまざまな野菜がチーズで繋がれている食べもの。これがピザか。

「おー!!!なんかよくわからないですけど、できましたね!」

「さあ、お味は..?」

と食べてみた。

「...」

「…」

「悪くないですね。」

「そうだな。だが、何かが足りないというか。これってやっぱりピザじゃないんじゃないか?」

「わからないですけど、野菜とチーズが焼けてて美味しいですよ。あ、チーズが伸びすぎててどうしよう、助けてください、先輩!」

このピザが正解かどうかはわからないが、地球人もこんな風に、チーズを伸ばしながら食べていたのかもしれないな、と困っている祐希を見ながら俺は笑った。


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