第七話~妹襲来の真実解明!?~
よくよく考えれば、今までおかしかったのだ。
僕は8歳で両親が死んだ。
そして、それ以来一人暮らしをしている。
当時五歳の妹は母方の祖父母に引き取られたが、なぜ僕は8歳の時分で一人暮らしなんてできたのだろう。
僕が、強く言ったからかもしれない。
間宵ちゃんが主張したからかもしれない。
でも、一番の理由は。
『私には特殊な力があるけど、お兄ちゃんが一緒にいたら発揮できないの』
と、四様が嘘をついたからなのでは、と今になってならわかる。
祖父母は四様の特殊な神懸った運に惚れこんで、利用しようとしていたのだろう。
だから、今まで僕は四様に近づけてももらえなかったし、四様は僕に近づけなかった。
僕があのアパートに残りたい、なんて我がまま言ったから、そうなったのだ。
「お兄ちゃんともう一度暮らしたい、今度は大丈夫になったから、って言ったら快諾してくれたわ。あの二人は私の運にあやかれたらもう何でもいいみたい」
そう四様が悲しそうに言っても、僕には否定の言葉は見つからない。
「……で、でも、四季君が断ったら……」
「断るわけないでしょ」
四様は自信たっぷりに言い放った。
「昔っからお兄ちゃんは私のことが大好きだったんだから!いつもいつも、二言目には『四様をぼくのおよめさんにする』だったもの。いきなり出てきてあなた達に気持ちが揺るぐはずないわ!」
ここは僕のアパート。あれからいくつか言い争いをしながらも、全員無傷で帰ってきた。
ちゃぶ台に僕、弥生ちゃん、間宵ちゃん、夜闇、零ちゃんが円を書くようにして座っている。
「いや、勝ち誇ってるところ悪いけど、僕行かないよ?」
ちゃぶ台に足をのっけかねない勢いで勝ち誇っていた四様の顔が、凍ったように固まる。
「え、ええ?お兄ちゃん、なんで、どうして!?」
四様はさっきまでの傲岸不遜はどこへやら、いきなり泣きべそになりながら僕にすがるように抱きついてきた。
「だ、か、ら!僕はこのアパートから離れるつもりはないの!なんでいきなりやってきて僕がここから出る前提で話が進んでるのさ!四様、少し見ない間にかなり我がままになってるよ!?おじいちゃんたちに迷惑駆けてるんじゃないだろうね!?」
「……お、お兄ちゃんが男らしくなってる……」
僕の必死の説教を、その言葉で済ませた四様。
「なに言ってるんだい、君は!」
「男子三日会わざれば、括目してみよ、とはよく言ったものね……お兄ちゃん、お兄ちゃんらしくなってる……」
なんだか本気で馬鹿にされている気がしてきた。
昔の四様って、もっとこうかわいらしかった気がするけど……。
「さあ、用事が済んだなら帰って!僕は君のところには行かないよ!」
それが、四様との最後の会話だった。
「……うん」
そう言うと、すごすごと引き下がり、まるで幽霊のように扉を開けて、出て行ったのである。
パタン。
物悲しげな音を立てて、扉が閉まった。
「追いかけなきゃいけません!」
「追いかけた方がよろしいかと」
「追いかけなよ」
「追いかけやがれ!」
いきなり女性陣から追いかけろコール。……一応、触らぬ神になんとやら、ここは従っておこうかな。
「……いってきます」
僕はそう言うと、四様を追いかけに扉を開けた。
公園。
この街の公園は、僕らにとっての思い出の場所だ。
いつもいつも、お父さんたちと一緒に、遊んだ、公園だった。
「……四様」
そんなところに、僕の妹はいた。
ブランコに座って、さみしげにキィ……キィ……。
「……お兄ちゃん。追いかけてきて、くれたんだ」
それが意外なことであるかの様に、四様は言った。
「何意外そうな顔をしてるんだよ。いきなり出てったら驚くだろ?」
「でも、邪魔なんでしょ、私……」
そんなことない。
でも、さっきの言葉を言ってしまったあとでは、取り繕うようにしか聞こえないだろう。
「……お兄ちゃんは、変わったね」
「四様も、変わったよ」
何年ぶりになるんだろう。いまさらながらにそう思った。
「……お兄ちゃん、私ね、ほんとはね、お兄ちゃんに会いに来ただけだったんだよ」
急に告げられる、真実。
「私ね、ほんとはね、……外国、行くんだ」
……え?
一瞬何を言っているのか理解できず、僕は口を開けたまま突っ立っている格好になった。
「私、この能力をもっと開花させるために、有名な脳開発の先生のところに行くことになってるの。……おじいちゃんたちが、そう言ってたの」
あの人たち、……そんなこと、まで。
「嫌がったのか?」
「……さっき、お兄ちゃん言ったよね、答えてあげる。『迷惑なんてかけてない』。私はね、今のところ、搾取されてるの。……迷惑なんて、かけようがないんだよ」
ひどく悲しげに、四様は言った。
「……ばいばい、お兄ちゃん」
そう悲しげに言う四様に、僕は――