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第五十六話~えっとこれってもしかして!?~

  それから僕たちはいつものように四様のご飯を食べて、みんなで固まって眠った。時々喧嘩をすることもあったけど、みんな概ね仲がよかった。うん、いいことだよね。


  そして、それから僕らはテスト勉強をしたり、学校に行ったり、他愛もないケンカをしながらも一週間を過ごした。難しさが元に戻ったテストを受けて、結果も返ってきた。

  真宵ちゃんは相変わらず英語が満点。弥生ちゃんは国語が満点だった。夜闇は社会が、零は理科がそれぞれ満点だった。僕?  あはは、いつも通りボロボロだった。だからみんなからさんざん色々と言われたけど、まあ、政臣との勝負には勝った。昼食一週間分は払う必要がないみたい。よかったよかった。それが決まったのが、金曜日。今日は、その次の日だから、土曜日だ。


  「……おい?」

  「え、なに真宵ちゃん?」


  そんな風に昨日までのことを思い出していると、隣を歩いていた真宵ちゃんが声をかけてきた。他には誰もいない。弥生ちゃんも、零も夜闇も四様もいない。それは、今日真宵ちゃんが全国大会の試合だからだ。みんな、真宵ちゃんの試合を応援したかったみたいだけど、真宵ちゃんは僕以外来て欲しくないと言ったのだ。


  「お前さ、ちゃんと応援しててくれよ?」

  「わかってるよ、真宵ちゃん」


  大会会場に向かう道で、真宵ちゃんは珍しく不安そうに僕に聞いた。全国大会で優勝し、格闘王になるのが夢の彼女だけど、大会の成績はあまりよくない。それはいつもいつも反則で退場させられてしまうのだ。


  「でもさ、それよりも僕は真宵ちゃんが反則負けしないかどうかが不安だよ」


  僕がそう言うと、彼女はしょぼんと項垂れた。


  「……わかってるよ。わたしは喧嘩っ早いからな。いつもの感覚でやっちまって、ミスるんだよなぁ……」

  「そうそう。だからこの前の大会なんか、真宵ちゃん謎の飛び道具使ったってことになって負けたんだよね」

  「……いつもの癖だったんだよ」


  この前の大会で真宵ちゃんは僕にするみたいに闘気の塊を対戦相手にぶつけて失格となったのだ。まあ、時々真宵ちゃんが何の拳法学んでいるのかわからなくなるときがあるけど、それは大会審判も同じみたい。


  「……なあ、四季。私、勝てると思うか?」

  「反則しなきゃ勝てるんじやない?」

  「軽く言ってくれるぜ……」


  真宵ちゃんを励ますつもりで言ったのに、逆に落ち込んじゃった。なんとかならないかな……


  「ね、ねえ、真宵ちゃん。勝ったらお祝いしようよ」

  「……お祝い?」


  ピクリと真宵ちゃんが反応した。


  「そうだよ。勝ったら何が欲しいの?  言ってみて?」

  「……私、は……」


  真っ赤になってもじもじとしながら、真宵ちゃんは口ごもった。


  「私は、その、お前と、じゃなかった、ええと、その……。よし!  欲しいものがたくさんありすぎてすぐには決められねえから、てめえ、私と一緒に来て荷物持ちしろ。他の奴らにさせるわけにはいかねえから、お前以外は呼ぶんじゃねえぞ!」

  「あ、うん、わかった」


  僕は頷く。真宵ちゃんったら、欲張りだなぁ。まあ、真宵ちゃんらしくていいけど。


  「お、おう。そ、それから、何があってもあいつらは呼ぶなよ。そ、その、あいつらは女の子なんだから、荷物持ちなんてさせられねえだろ?」

  「うん、そうだね。真宵ちゃんだって女の子なんだから、重いものは持たせたくないよ」


  ここで怒らせても意味ないので、女の子、って呼ぶ。多分真宵ちゃん僕より力持ちだろうけど、そこは見栄ってやつだ。


  「……っ。お、お前、私のこと女だって……?」

  「……?  違うの?」

  「い、いや、違わねえけど……。なんか調子狂うな……」


  真宵ちゃんは気恥ずかしそうに頬をかいた。なんか照れてる真宵ちゃんって結構可愛いかも。


  「……なんだよ、ジロジロ見て」

  「いや、可愛いなぁって」

  「っ!?」


  真宵ちゃんの目が見開かれる。まずいっ!  とっさに身構え、衝撃に備え防御体制に入る。


  「……そ、その、ありがとよ」


  予期しないことに、真宵ちゃんは何もしてこなかった。


  「……と、とにかく!  早く行こうぜ!」


  顔を赤くして嬉しそうにスキップする真宵ちゃんを見て、僕は違和感を感じずにはいられなかった。

  ……あれ~?  こんなに真宵ちゃんってこんなに大人しかったっけ?  こんな調子で大会大丈夫かな……?

 




  そんな僕の不安とは裏腹に、真宵ちゃんは対戦相手の全てをルールに則った上で瞬殺し、圧倒的差をつけて優勝したのだった。それから僕は怒涛の勢いで翌日にお祝いをする約束を取り付けられたのだった。

  

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