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第五十話~テスト勉強と四季の不運!?~

  それから放課後まで授業を受けて、僕たちは家に帰った。ごく普通にこうして帰る、ということがずいぶん久しぶりな気がする。


  「ただいま~」

  「お帰り、お兄ちゃん!」


  アパートに帰ると、先に中学校から帰っていた四様が普段着にエプロン姿で出迎えてくれた。


  「どうしたの、四様?」

  「ご飯作ってるの。ここでまともにお料理作れるのって、私とお兄ちゃんだけでしょ?」


  恐ろしいことに、後ろの四人はそろって首を傾げた。って。


  「なんで真宵ちゃんがいるの?」

  「いたら悪いか?  四季の勉強見てやるって話だっただろうが」

  「……あ」


  そういえばそうだった。


  「忘れてやがったな?  ったく、都合のいい脳みそしやがって」


  真宵ちゃんはそう言うと、部屋にずかずかと入り込んで、卓袱台の上に筆記用具等を用意した。


  「あ、あのさ、まず、ご飯食べてから……」

  「逃げんな。殺すぞ」


  君が言ったら洒落にならない!?


  「すぐに脅すから、あなたは暴力女なのです」

  「うっせ。黙れクソメイド」

  「喧嘩している場合か。さ、四季、早く始めようか」


  零は卓袱台の上に、化学と数学の教科書を広げた。


  「おいこら零。なんでてめえが一番先にやってんだよ。ここは幼馴染の私がやるところだろ?」

  「知るか。四季はただでさえ成績がよくないのに、化学と数学はダントツで悪いからな。先にやって、時間を取るのが当然だろう」

  「こいつ英語も壊滅的なんだぜ?  What time is it now?  もわからねえぐらい」

  「それぐらいわかるよ!」


  真宵ちゃんに僕は一体どれほど勉強できないと思われているんだ?


  「なら、訳してみろ」

  「え?  ええっと、ワットが何だか、いつ、になるんだよね。じゃあ、『いつはそれの今ですか』だ!」


  四様を覗く全員が僕を可哀想なものを見る目で見た。……え?


  「……悔しいが真宵の案に賛成だ。化学より何より英語をしなければ……」

  「だろ?」

  「……四季様……」


  なんだか、夜闇の視線が、本気で僕を心配しているような表情で僕を見た。その視線はまるで、出来損ないの領主を遠くから見守る忠臣のようで……。


  「ね、ねえ、お兄ちゃん」

  「な、何かな、四様」


  四様まで、何がなんだかわからない、という目を向けてきた。き、君もなの、四様?


  「英語って、何?」

  「……」


  中学生、だよね?

  僕だけでなく、みんながそう思ってると思う。だって顔に書いてあるもん。


 「し、知らない、のか?」

 「うん」

 「今まで学校はどうしていたのです? テストも、授業もあったでしょうに」

 「私、中学からは行ったことないよ? それに、テストも小学校の時から『偶然』テスト用紙がなくなったり、『偶然』先生が失踪したりして、一回しか受けたことない」

 「……そ、それは、虐待、ではないんですか……?」


 弥生ちゃんが四様を心配そうな目で見る。僕も知らなかった。というか、重い!

 

 「……ま、まあ、キミにはその神の運があるから勉強はできずとも生きていけるだろう。だが、問題は四季だ」

 「お兄ちゃん、テスト、嫌なの?」


 四様の質問に僕は唾を飲み込む。だって、ここでもしうなずけば、テストはなくなるだろうからだ。


 「う、うう、ううん。ぼ、僕は、テスト、したいなぁ……」

 「そうなんだ~」

 

 四様は残念そうに言った。……くぅ。


 「へえ。てめえにも見どころあんじゃねえか」


 ありがとう間宵ちゃん。キミの言葉が一番の励みだよ~。


 「じゃあ、うんと難しくしとくね」

 「……へ?」

 「だって、『困難は大きければ大きいほど、乗り越えたときの達成感は強い』んでしょ? どこかの本で読んだことあるよ」

 「え、で、でも」

 「ええっと、神様神様、どうかお兄ちゃんの学校のテストを難しくしてくださいますように……」


 それから、本気で四様は願い始めた。神の運を持つ四様が本気で願ったら、何もかもが思い通りになる。と、いうことは。


 「……み、みんな、勉強しよう!」

 「賛成です。私も自信がなくなってきました」

 「わ、私もだぜ!」

 「わ、わわわ、私も、その、赤点を取ってしまうかも、なんて……」

 「まずいな。これは勉強せねば……」


 僕たちは、今までのテストを大きく上回るであろうテストに備え、勉強することを決意した。

 

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