第四十八話~テストに向けて!?~
それからしばらく、僕は平和な授業を受けた。なんだか久しぶりに何もされずに普通に授業を受けれた気がする。相変わらず内容は全然頭の中に入ってこなかったけど。そんな風に過ごしていると、あっという間に昼休みになった。
「夜闇、どうして朝あんなこと言ったの?」
いつものようにみんなで僕の机を囲み、お弁当を食べる。
「すみません。しかし、ああでもしなければ四季様が勉強をすることはない、と思いましたので」
「まあ、確かにな。四季は致命的なまでに勉強嫌いだからよ」
「……あ、あなたがそうさせたんじゃないんですか……?」
「いや、弥生。別に、四季が勉強を好きになる必要はない。勉強など所詮作業だ。未来の自分に投資していると思って耐えるしかないぞ」
零の言葉が妙に心にしみる。
「ったく、これだからカガクシャは嫌いなんだよ。なんでもかんでも理屈っぽく言いやがる。ちょっとは普通に頑張れって言えねえのかよ」
「頑張れ? そんな言葉は四季には意味がないだろう。頑張れる環境ではないのだからな、キミのせいで」
「ああん? やんのかこら」
「まるで不良だな。キミを慕う人間が一人でもいるというのが不思議でたまらないよ」
一気に険悪な雰囲気になった。ちなみに、僕も信じられないんだけど、間宵ちゃんって結構女子に人気あるみたい。横柄な態度だけど、根は優しいし、リーダーシップがあるし。
「ま、まあまあ、二人とも落ち着いて」
「四季、元はキミが勉強をしないのが悪いのだ。少しだけ勉強を見てやるから、あの男の倍の点数ぐらいとってみせろ」
「む、むちゃくちゃ言わないでよ!」
そんなのできるわけないじゃないか! 政臣君は赤点ギリギリだけど、僕はもっと低いんだよ?
「そ、それは、いい考えです、ね。わ、私も、その、勉強あまりできませんけど、その、教えて、あげます」
「よく言うよ弥生ちゃん」
国語に関しては学校一番なのに。
「もちろん私も見て差し上げます。私は歴史が得意なので」
それは意外だ。
「ちなみ私は英語が得意だぜ。英検一級、TOEICで九百点とった」
「……それは得意と言うレベルではないでしょう。もはや通訳レベルです。……ちなみに、将来の夢はなんですか?」
「格闘王!」
「な、なんでそんな夢なんですか」
というかなんでそんな夢なのに英語が得意なんだか。
「いいじゃねえかよ格闘王。世界でも通用する実力が欲しいと思うのは男だと当たり前だろ?」
「君は女の子だよね?」
「なんで疑問形なんだよ!」
……いや、なんでって言われても。
「というか、なぜその夢でそれほど英語を勉強したのだ?」
「はん! わからねえかな、零。将来格闘王になろうとするだろ? そうしたら、日本一になるまでは日本語でオッケーだけどよ、世界に行ったらやっぱり英語は要るだろ。それも相当詳しく、だ。『こいよ糞野郎』ぐらい一発で英訳できるぐらいじゃねえとな」
「……それで英検一級、TOEIC九百点ですか。化け物ですね」
「ほめるなほめるな」
「ま、ま、間違いなくほめていないとおもいます……」
うわ、弥生ちゃんすっごい勇気ある。
「……とにかく、今日から四季様には勉強漬けになっていただきます」
「ええ~……」
「ええー、じゃねえ。てめえ留年したらどうすんだよ」
「うう……」
僕はうなるしかなかった。うう。勉強いやだなあ。