第四十六話~四様の決断!?~
「……通ってないって?」
僕は四様に訊く。
「……だ、だってあいつら、……私のこと、怖がるんだもん」
「……」
僕は悲痛な顔をして黙り込んだ四様に、何も言うことができない。
「なぜ、そのようなことに?」
「……私、あそこじゃかなり、名前知れちゃってたから」
「は?お前、別に幸運のこと触れて回ったわけじゃねえんだろ?」
「……そうじゃ、ないけど」
四様は所在なさげに黙る。
「四様さん、黙っていては、誰も何もわかってくれませんよ?」
「……私、向こうでは、願い屋さん、っていうのをやらされていたの」
「ね、願い屋さん、ですか?」
四様はこくりと頷いた。
「誰かのお願いを聞いて、私が願うの。それで、お金をとる。かなり、有名だったみたい」
そのお金は、今は檻の中にいる祖父母の元に転がり込んでいるんだろう。
「そのせいで、キミは向うでバケモノ扱い、か。さすがに気の毒だな」
「……いいの」
「よくないよ」
でも、どうしようもないのもまた事実だと思う。だって、僕に四様の学校を変える権利なんて、ない。
「……でもよ。お前に今学校がない、ってことは、てめえ、行きたくねえだろ?」
「……」
恐る恐る、四様は頷いた。
「が、学校には、いかないとだめだと、思います」
「いや、それは一般論だろう。四様は一般人ではないのだ、それが適用されるとは思えん」
「だからといって行かなくてよいということにはならないでしょう」
「でもよ、やっぱり辛いと思うぜ?バケモノ扱いなんてよ。私だったら耐えられねえ」
へえ。
「真宵ちゃんも女の子らしいところあるんだぶぇ」
「黙れ四季」
思いっきりではないけど、僕は殴られて畳をなめた。
「だから、殴ってはいけません、暴力女」
「はいはい、気をつけますよ。……で、どうすんだよ?」
「い、行くべきです!」
「たかが学校、行かなくとも事足りる」
「私は、むこうかこちらかはともかく、通うべきかと」
「通う必要なんてねえ。行きたいやつだけ行きゃいい」
みんな、みごとに意見が別れてるね。
「……お兄ちゃんは、どう思う?」
「……僕?」
四様はすがるように僕を見つめてくる。ううん、どうしたものか。
「……そうだね。僕は君の好きにすればいいと思うよ」
「……して、いいの?」
「いいんじゃない?よく考えたら、君は運がいいんだから。君の好きに、世界は回ると思うよ」
だから、結果的に四様の好きになる、ってこと。
「……私、こっちで通う」
「それはよかった」
「だから」
四様は僕を見つめくる。じっと、射抜くように。
「だから、褒めてくれる?」
「……もちろん」
なぜ、そんなことを言うのだろう。僕はそう思ったけど、四様は頑張ってるんだ、褒めてあげなきゃ。
僕は四様の頭の上にポンと手を乗せて、くしゃくしゃと撫でる。
「よく決断したね。普通にできることじゃない。……よく、頑張ったね」
「……うん」
つう、と四様の目に涙が浮かぶ。よほど、辛かったんだろう。
「……さ、お鍋が冷めちゃうよ。食べようか」
実際は未だにぐつぐつと煮立っているのだけど、そこは雰囲気とか情緒とか、ね。
「は、はいです。お、おいしそうです……」
「まったく。なぜわざわざ辛い思いをしようとするのか理解できん。が、まあ、よしとするか。……うまそうだな」
「そうですね零さん。では、いただきます」
「……ったく。無理すんなよ、四様。いざとなったら私たちを頼れ。わかったか?」
「……はい」
また再び、平和な時間が戻ってきた。