第四十五話~四様、問い詰められる!?~
「ううう、おいしい……」
僕は鍋を口に入れて、そのあまりのおいしさに打ち震えた。
「お兄ちゃん、三日ぶりのご飯だもんね。なんでもおいしい、って感じると思うよ?それこそ、この人たちのゲテモノ料理でも」
そんな恐ろしいことを四様は言ってくるけど、全然気にならない。もし目の前にあるのが弥生ちゃんや夜闇が作った料理でも、僕は喜んで食べただろう。それほどまでに僕はお腹が空いていた。餓えは最大のスパイス、っていうのは誰の言葉だったっけ?
「四様さん、ゲテモノ料理は少し心外です。私だって本気でおいしい料理を四季君に食べて欲しくて……」
「あなたのは香辛料を使いすぎです。辛みに含まれるカプサイシンはとりすぎると人体に影響を及ぼすのですよ?」
「……むっ。ど、どうしてあなたはメイドさんなのにお料理できないんですか?掃除洗濯だけでなく、お料理も重要な家事ですよ?ハウスメイドさんの名折れじゃないんですか?」
「……あなたはどうなんです?」
「わ、私は、四季君のお嫁さんですから」
ならなおさらお料理の勉強しなきゃいけないんじゃないかな……?って思うけど、僕は告白された側だしっていうか今僕告白されたっ!?
「え、あ、あの、や、弥生ちゃん、い、今何を」
「あれ、言ってませんでした?私、四季君のお嫁さんになりにきたんですよ?」
「そんなこときいてないよ!って、よく考えたら僕まだ十七歳だから結婚できないよ」
よかったよかった。
「待ってますから、大丈夫ですよ♪」
「……」
ど、どうしよう。
「おいこら四季」
ゾクッ!
底冷えするような真宵ちゃんの声。
「……また、三日くらい気絶するか?」
ふるふるふるふると、僕は必死で首を振る。い、嫌だ。まだ、まだ僕は死にたくない!
「ふん、わかりゃいいんだよ、わかりゃな」
「う、うん」
わからなかったらどうなるのだろう。……こ、今度こそ、こ、殺されちゃったり……しないよね。うん。
「……もくもく、うん、おいしいね、お兄ちゃん!」
お肉を頬張りながら、四様が朗らかに微笑む。
「……そうだね」
うん、やっぱり平和だ。
「……四様、少し真剣な話になるが、かまわないか?」
と、思っていた矢先、零がそんなことを訊いた。
「……なに、零さん」
「君の、学校のことだが」
「…………」
ピタリと動きを止めて、四様は零の言葉を聞いている。
「君は、一体今どこの学校に通ってるんだ?」
「……………通ってない」
四様は、半ば諦めたような感じで、そう、答えた。
「……そうか」
零も、ある程度は予想できていたみたい。
四様はただ、僕を見つめている。
その姿はまるで、イタズラがバレた子供のようだった。