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第四十一話~悩み事!?~

 「……で、……これが、こうなっているわけだ。……これを現代語訳してみようか」


 妙に尊大な国語教師の授業を聞き流しつつ、僕は四様のことを考えてみる。

 あの子は本来中学生。ならば中学校に行っていなければいけないわけだ。けれど、あの子が朝中学校に通っている姿を僕は未だに見ていない。


 「いいか、わざわざ『春は朝が一番風流だ』などと訳す必要はない。単語単語の意味としては抑えておく必要はある。が、いちいち面白みのない文章にしようとするから古文がつまらなくなる。だからあえて単語の意味を無視し、文脈で訳す。……『春は朝がさいこー!』……これでいいのだ。


 あえて言うまでもないと思うが、これをテストでやったらバツだからな」


 意味ないじゃん、とか思いつつ、思考を戻す。


 ……どうするべきだろうか。

 

 「……さて、そこで真剣に何事やらを悩んでいる秀句四季君」

 「…………」


 そもそもあの子は学校に行きたいのか?……いや、行きたくなくても、兄としては行ってほしいけど……。


 「四季君。弥生君たちのことで悩むのは勝手だが……」

 「……」


 そもそも、あの子まだ向こうの学校に籍を置いたままなんじゃないか?と言うことは、向こうの学校からしたら、無断欠席が続いている状態……と言うことになる。


 「…………………ふふふ、いい度胸だ」

 「………え」


 そこまで考えて、僕は教室中が静まりかえっていることに気がついた。


 「さて、ようやく思考の海から帰還したようだが……。いやはや、あと数秒遅かったな」

 「え、いや、すみません!」

 

 僕は信じられないほどの怒気を放っている国語の先生に謝った。


 「いや、謝ってもらう必要など……ないよ。代わりに……」

 「か、代わりに……?」

 「漢字書き取りと、特別問題集をプレゼントだ」

 「はい……」


 彼が下す罰はいつも決まって、書き取りと問題集。別に鬼のように難しい、と言うわけではない。ないのだが。


 狂うような量があることで有名だ。

 

 「漢字などは基本、応用関係なく『覚える』ことでしか学習できないからな。小学一年生でも『壱』を書こうと思えば書けるし、覚えようと思えば覚えれるだろう?英語でもそうだ。こういう『言語』は基本的には単語の量で決まるのだよ。……と、いうわけでだ。


 四季君。来週までに漢字二千文字、テキストの中から選んで書いてきなさい」

 「……はい」


 もちろん、これのほかにも問題集が渡されたのはいうまでもない。



 



 「……し、四季君が授業中呆けてるのって、その、……め、珍しいですね……」

 「ん?……ああ、そうかな?」

 「は、はい……、いつもなら、ちゃんと先生の話を聞いてるのに……何かあったんですか?」


 その授業の休み時間。当たり前のように弥生ちゃんと夜闇、それから零と間宵ちゃんが僕の机の周りにやってきた。囲むような形なので、僕は椅子を引けもしない。……これって、見方が違えばいじめにも……見えませんね。クラスの半分からの嫉妬の視線が痛いです。突き刺さるようです。


 それよりも弥生ちゃん、授業中僕見る暇あったら授業聞こうよ。


 「……何か悩んでいるようですね、四季様」

 「うん、まあ、四様のことでね」


 夜闇は制服を着ているのだけれど、妙に似合ってない。うん、男の僕が言ったら変だろうけど、夜闇にはメイド服が似合ってるね。


 ……言った瞬間修羅場になる気がするのは、気のせいじゃないはず。


 「やっぱ気になんのか、四様のこと?」

 「まあ、僕はお兄ちゃんだから」


 ずいぶんと長い間、会えなかったけど。

 それでも僕は、あの子がお兄ちゃんと呼んでくれる限り、お兄ちゃんでいようと思う。


 「そうか。……てかよ、あいつまともに学校行けんのか?」

 「え?」

 「あいつ、異常に運いいじゃねえか」

 「そうだね」

 「可愛い物好きだろ?」

 「……病的なぐらいにね」


 ほんと、まさかまだあの頬ずりぐせが治っていないとは思わなかった。


 「やっぱさ、運がよすぎると、気味悪がられんじゃね?」

 「……そんなこと」

 

 ないって、言い切れる?まさか。


 「ボクが思うに。問題は能力以上に彼女の性格だと思うけれどね」

 「……どうしてそう思うの、零?」

 「彼女、怒ると手をつけられなくなるだろう?」

 「まあ、ね」

 「そんな人間と、友達になりたいと思う人間はいないと思う」

 「……言いすぎだよ」


 そんなことない。きっと、きっと。


 「じゃあ、君は不良と仲良くできるとでも?」

 「……四様は不良なんかじゃないよ」

 「そうだ、彼らの方がよっぽどましだ」

 「零、怒るよ?」


 さっきからなにを言っているんだろう?なんで零はこんなひどいこと……。


 「不良を怒らせたら、拳がとんでくる。しかし彼女を怒らせたら、何がとんでくるかわからない。石ころかもしれないし、車かもしれない。はたまた、隕石なんかかもしれない」

 「いくらなんでも……」


 言いすぎか?

 少しだけ、不安になった。


 「……まあ、単なる予想だよ。彼女が積極的に学校に行こうとしないのは、それが原因じゃないかと、思ってね」

 「……」


 ああもう。なんでこんなにも悩み事が多いんだ。


 「……ふむ、少し、雰囲気にそぐわなかったかな」

 「何の?」

 「ククク、この教室の、だよ。おそらくキミを殺さんばかりの勢いでにらんでいる男子諸君は……きっと、ボクと四季との昨夜の甘い出来事のことでも話してると思っているのだろうね?」

 

 ……昨夜の甘い出来事って、……無意識にされたキスのこと?


 なんで今蒸し返して……と、訊く前に。


 「何今ここでその話を蒸し返してんだよ!てめえまた吹き飛ばされてえか!?」

 「遠慮しておくよ!今日の行為に差し支えるからな!」

 「しねええええええええええええええええええええええ!」


 どかーん!


 今日は間宵ちゃんと零が戦ってる。


 ……はあ。


 この光景を見て安心する僕って……何?

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