第四話~登校時の災厄!?~
「……うう……すみません、四季君……お料理作れなくて……」
「すみませんでした四季様。なんなりと罰を申しつけください」
「すまなかったね、四季。あれがボクのスタンダートなんだよ。……まあ、キミの作った料理もうまかったけどね」
「あはは、いいよいいよ。そろそろ夜も遅いし、寝よっか?」
三者三様の謝られ方をした僕は、そう言って布団を敷き始める。
と、言っても布団は一組しかないんだけど……。
「ねえ、君たちはこの布団で固まって寝てよ。僕は外で寝るから」
やっぱり女の子と同禽はできないよ。
そう思って言ったんだよ、僕は。
なのに、なのに、なのに!
「え、私と、一緒じゃ嫌、……ですか?」
「従者たる私と一緒はお嫌いですか?」
「研究者のボクと一緒は嫌かい?」
完全に嫌だから断ってるみたいに取られてる!
「なんでみんなそう取るの!女の子と一緒なんかダメだから言ってるんだよ!」
まったく、一つ屋根の下ってだけで危ないのに、一緒に寝るなんてダメだよ。ダメダメ!
「……わ、私、は、その、はい、覚悟はして、来ましたから……」
「私はもとより四季様の従者であり道具。四季様の欲情を満たすのも、また勤めかと」
「ま、ボクは別にかまわないよ。興味ある」
皆さん方は全然ダメとは思っていないようです。
どうして?今日初めて会ったんだよ?
「あ、あの、みんな!?なんでそんなにノリノリなの!?」
僕が訊くと、みな一様にして答えた。
「四季君のことが好きだからです!」
「四季様の従僕だからです」
「四季に興味があるからだ」
もう、どうにでもしてよ……。
僕は学校では結構評判がいい。らしい。
この間間宵ちゃんが、
『あんたさ、結構女子の中でも人気あるんだぜ、知ってたか?あんたがいつも人助けしてるところを見てるやつがかなりの数いるんだよ。……だからな、四季。
お前は誰にも見られてねえわけじゃ、ねえんだ』
そう言ってくれた時には、ちょっぴり涙が出た。
僕には両親がいない。少し前に、死んでしまった。
だから僕には保護者がいなくて、もう誰にも見てもらえないんじゃないだろうか、って思ってた。
だから、誰かに見てもらえるよう、人助けをした。
それは簡単なことじゃなかったけど、ちゃんと評価されていた。
それをしれたから、とてもうれしかった。
『お、おい!なんで泣いてんだよ!私何にもしてねえぞ!?お、おい泣きやめって…………四季、泣きやめよ……………泣きやめっつってんだろ!!』
そう言ってドロップキックをかまされたけど、励ましてくれた間宵ちゃんに、感謝していた。
「よお、四季」
で、僕に感動をもたらしてくれた天使は。
信じられないほどドスの利いた声で、僕をとらえていた。
「え、あ、あの、間宵、ちゃん?」
「そんなに死にたかったのか、四季」
ゆらり……と、間宵ちゃんの後ろの空気が歪む。闘気が空気を曲げているのだ。
「……え、なんで」
「てめえ、如月弥生と寝たな?」
ぐさっと、僕の胸に何かが刺さった。
「あ、ぐ、なんで知って……」
「私とあいつは友達なんだよ。向こうが知らんぷり決めてたから私も付き合ったけどよ……でも、弥生がそんな風な目的でてめえに近付いたとはな、思わなかったぜ」
そ、それをなんで僕に言ってくるのかな~?なんて訊いたところで無駄だろうな……。
「それで……?」
「てめえの節操のなさを教育しに来てやったぜ、感謝しな。そして死ね」
闘気が、形を持って僕に向かってくる。
え、あの、その……
「この、色狂いの大馬鹿野郎ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
ズドーーーーーーーーーーン!
人のこぶしが出したものとは思えないような轟音が、朝の学校に響き渡りました。僕はもちろん、気絶しましたよ。
「……いてて……」
で、なんとか気絶から覚めた僕は、朝のホームルームで先生の話を聞いていた。
「……で、今日は突然だが、転校生が来る。……正直、彼女たちには私からも説明しづらいので、詳しくは本人たちに言ってくれ。……そして、嫉妬はほどほどにな」
まだ頭の痛みがとれない僕は、先生の話がほとんど聞こえていません。
からり……!
そんな音がして、教室中が騒がしくなったことだけは、聞こえた。
……なんだろ……?
僕は教壇に目を向けた。
先生が本来いるべきところにいたのは。
「今日からこのクラスで四季様ともどもお世話になります、十三夜月夜闇です。よろしく」
「今日からこのクラスで世話になる、心葉零だ。四季のことはなんでも教えてくれ!」
また気絶しそうな予感しか、しませんでした。