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第三十八話~ライバル登場!そして帰宅!?~

 「…………………………………帰りましょう」


 ……どうしたのかな?そんな風に顔を赤くしてもじもじしながらなんでそんな風に恥ずかしそうに言うのかな?


 「うし、四季。さっさと帰るぞこんなとこ」


 心なしか間宵ちゃんはさっきよりも肌のつやがいい……というかなんかすっきりとした感じだった。


 ……まさか、たべちゃったんじゃ……



 気のせいだ。妄想だよ。そんなの、間宵ちゃんがするわけが……


 ありそうだけど、ないことにした。


 「そうだね」


 なにも知らないふりをして、僕は言った。










 少しだけ、時間は戻る。













 「……なあ、弥生」

 「何でしょう」


 弥生は布団に入って、間宵はその隣で腰掛けている。弥生は少しぐったりとしていて、間宵は少し疲れているようだった。


 「この里って、一体何なんだ? 嫌な空気が満ちてるし、変な感じもする。……なんか、気味悪ぃ」


 弥生は驚いたように目を見張り、弥生の顔を見る。

 ちなみに、その表情は迷いもはっきりと見えた。


 それは暗闇に目が慣れていたからなのか、互いの距離が近いからなのか。


 「よくおわかりに」

 「もったいぶらずに教えろ」

 

 少し強く言うと、弥生は簡単にうなずいた。


 「……特に、何もありませんよ。あえて言うのなら、『この里』と『この里以外』では、空気が違うのです。……世界が違う、とも言えますが」


 「ふうん」


 なんてことないように、間宵はつぶやく。


 弥生にはこれ以上訊いてきても教える気などなかったし、間宵はそれだけ知れたらもう十分だった。


 「間宵さんは……どうしてこのようなことを?」

 「このような、って?」


 いたずらっぽく訊き返す間宵はほとんど男のようだった。


 「その、『私』を気を使って封印する、などと……そんな芸当、よほどの武芸者であっても、できるとは思えません。……これはもはや、祈祷師の領域です」

 「んなもん大丈夫だよこれぐらい。ちょっとした余技ってやつだ。こんなの技のうちにもはいねえって」


 弥生は恥ずかしそうに顔を伏せた。自身が感心したものが、使う本人にはまるで価値がないかのように言う。弥生にはそれが、自身の武芸者としてのそこが相手に知れたように感じれて、恥ずかしかったのだ。


 「……ということは、このような時は、いつもしているのですね?」

 「……ま、そういうことになんな」

 「……ほかにこれをしたことがある人は?」

 「言うなよ?」

 「はい」


 「……一人だけ」

 「は?」


 一体何を言われたかと、一瞬弥生はわからなかった。


 「お前とあと一人だけしか、これをしたことがねえ。……まあ、実用レベルじゃねえから、技のうちに入んねえんだよ……その一人ってのがな」


 少しだけ悔しそうに、間宵はその名前をつけたした。


 










 「……四季の野郎だ」












 四季の過去に何があったのか、つい想像してしまう弥生(裏)であった。
























 時は戻る。いや進む。




















 「つ~~か~~れ~~た~~!」


 間宵ちゃん部屋に戻るなり叫んで寝ころんだ。


 「そ、それは、あんなふうなことすれば誰だって疲れます!」


 このままもとに戻らないんじゃないか、と心配していた僕だったけど、その心配は杞憂に終わったようだ。

 里を出たとたんに『あ、あれ?』みたいなことを言っていつもの弥生ちゃんに戻ったのだ。


 それからは行った時と同じように師走さんに乗せてもらって、帰ってきた。


 師走さんは僕らを送ると『じゃな、若いもんは若いもんらしく過ごすんじゃぞ!』と豪気なことをおっしゃってから帰った。


 「ほんとによかったよ、君がもとに戻って……」

 「……四季君」

 

 悲しそうに、弥生ちゃんは言った。

 「……な、何?」


 僕は何かまずいことでも言ったのだろうか?


 「『私』は私です。あの『私』も間違いなく、私なんです。……だから、まるで『私』のことをその、害悪みたいに、言わないでください……」


 「あ……ごめん」


 素直に謝る。今のは僕が悪かった。

 いくら弥生ちゃん(裏)は無表情で無感情でも、弥生ちゃんなのだ。あんまり否定したらいけない。


 「……いいんです。それよりも……」


 そう言って、弥生ちゃんは長い前髪を振り、僕らの前に出る。

 隠れた瞳からは、今にも泣きそうにうるんだ瞳があった。


 「ありがとう、ございます……!これで、私みなさんに隠し事、しなくていいんだ、って思うと……」


 「弥生ちゃ」


 僕は何かを言おうとした。


 何だったんだろう?

 偽善に満ちた、意味のない言葉だったのかもしれない。

 優しい嘘に満ちた、優しい慰めの言葉だったのかもしれない。


 でも、それは今の彼女には、よくないんじゃないか?

 今、僕が、僕たちが言うのは。


 「……どういたしまして」


 みんなが同時に口を開いて言う、どういたしまして。



 「さ、キッチンの修理をして、明日から元気にがっこ、……う?」



 みんなで一緒に部屋に入る。


 ……穴があいて青空が見えていたはずのキッチンが、きれいに治っていた。

 いや違う、直っていた。


 「ああ、秀句さん?昨日ガス爆発あったみたいでね~。しちゃいけないミスを向こうがやらかしたらしくてね、無償で修理させていただきます!なんて言っちゃって、しかも仕事もすっごく早かったのよ?よかったわね、怪我なくて~。じゃあね~秀句さん」



 下の階の大家さんから、そんな言葉が聞けた。


 僕はおそるおそる自身の妹を見る。


 すると、僕の妹、神様の運を持つ少女はそっぽを向いて、そして逃げれないと悟ったのか、舌を出して、

 「……てへっ♪」


 「てへっ、じゃな~~~~い!また力使ったのか!?それもなんて無茶苦茶な……」


 まさか一日でここまでできるとはいくら僕でも思わなかったよ!?


 「……まさか、あの時不戦勝にならなかったのは、このことを祈っていたからか?ならば、本物、か……?これほどまでとは、思いもしなかったぞ」


 零ちゃんがかなりびっくりしていた。

 

 「……ま、いいんじゃない、お兄ちゃん?どうせ修理しなきゃいけなかったんでしょ?タダで修理なんてめったにできないんだし、よかったじゃん!」


 「……まあ、うん」


 ……ああ、ここでうなずいちゃう僕大概だよね。


 あんまり四様には世界は自分の思い通りになるって思ってほしくないんだけどなあ……。


 「じゃ、明日は早いし、今日は疲れたから、早く寝よっか?」

 

 「そ、そうそうそうそうだね!……うん、そうだね?」

 「では、今日の夜のご奉仕を……」

 「では、男性の身体を研究しようか」

 「お兄ちゃん、私と一緒に寝よ?」


 


 びく!


 僕は震えた。異常な殺気が、僕の後ろで発生したから。


 「……な、何かな、間宵ちゃん?」


 僕は悪くないよ?聞いてたよね、今の会話?ボクナニカワルイコトシマシタカ?


 「てめえの存在が悪だよ!そんなに早く寝てえなら寝かしつけてやらあ!おまけだから永い深い眠りにつかせてやるよ!しねえええええええええええええええええええええええ!!」








 「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」








 おやすみ、みんな。



    

 

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