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第三一話~消灯前の兄妹!?~


 気になっていた。

 僕はかめじゃないんだ、変化があれば気付くし、勘づきもする。


 でも、確証がもてない。


 何か、何かが頭のピースに足りないんだ。


 絶対に何かが弥生ちゃんの中で起きている。それが何かがわかれば……


 そう、僕が煮詰まっていた時だ。

 

 「お兄ちゃん」


 きぃ、と実に普通に扉が開けられるのに違和感を感じ、ああ、慣れって怖いな……と思いつつも、

 「お帰り」

 返ってきた妹に、僕はそう言った。


 「ただいま」


 どうも全体的につやつやてかてかして、血色は良くなっているんだけど、どうも気が重いみたいだ。

 僕になにを訊けばいいのか困ってる……みたいな、そんな表情。


 「なにかあったの、四様?」


 そんなこの子の顔は、できるだけ見たくない。ようやくやっと手に入った兄妹同士の生活なんだ、できるだけ笑って過ごしたい。


 「……な、なにも、なかった」


 でも、この状況で笑えるほど、僕の妹は神経が太くないようだった。


 なにもなかったなら、そんな重苦しい雰囲気にはなっていないはずだよ?


 「なにもなかったの?本当に?」

 「……うん」


 あれれ、答えてくれると思ったのにな。意外と答えてくれなかった。

 どうも、何か重大な秘密があるんだと、僕は推察する。


 「ねえ、お兄ちゃん?」

 「なに?」

 「弥生さんのこと、どう思う?」

 「弥生ちゃんのこと?」


 それは彼女が豹変したようになった、ということだろうか?

 「……多分、彼女なりの事情があるんだと思うよ。ここではそうしてなきゃいけない、とか」

 あ、とっさに出た言葉のわりには筋が通っている。

 

 彼女はこの里では冷静で冷血でいなければならない、とか。意外とありそう。


 「……そう、かも。ありがとう、お兄ちゃん」

 「どういたしまして。今日はもう遅いよ。寝よっか」


 もうそろそろ十時だ。四様はそろそろ眠る時間なわけだけど……。


 「……う、うん」

 

 どうも、歯切れが悪いな。

 「どうしたの?」

 何かあったのかな?


 「……その、お兄ちゃんって、ここで寝るんだよね……?」

 「そうだよ?それが?」

 「私が誰か、わかってる?」

 「秀句四様。僕の妹。ちゃんとわかってるよ?」


 本当にどうしたんだろう?


 「……したら、知らないから」

 「え?」


 今なんて?


 「……私に手を出したら、知らないから!」

 「……は?」


 手を出す?

 誰に?僕が?四様に?


 「……そんな心配してたんだ」

 「悪い!?」

 

 いや、悪くはないけど……、その。


 「かわいらしいな~って」

 

 僕がそう言うと、ズサササササ……っと壁の端まで引いた。

 そんなにドン引きするほど危ないこと言ったかな?


 「……お、襲うつもりね!」

 「襲わないよ!」


 なんで実の妹襲わなきゃいけないんだよ!手近なところに三人も他人がいるのに、なんで!

 「……だ、だって、かわいらしいって」

 「君の中ではかわいい=襲うなのか!?」

 

 恐るべきことに、四様はうなずいた。

 ……そう言えば四様、昔は可愛いものがあったら飛びついて日が暮れるまで抱きついたり頬ずりしたりしてたなあ……。


 「……まさか、あれがまだ治ってない、とか?」

 「病気じゃない!」

 「あのレベルまで行くと十分病気だよ!」


 「な……!お兄ちゃんこそ、美少女5人もはべらせといて誰にも手出ししないなんて病気じゃないの!?」

 「なんで今数に自分を入れたんだ!?襲われたくないんじゃなかったのか!?」

 「それとこれとは別よ!」

 「別なの!?」


 四様には驚いてばっかりだよ!

 

 「……何言ってんのよ、私たち」

 「ほんとだよ。兄妹で何言ってんだよ」


 ほんと、兄妹で好きだとか、愛し合うとか、ありえない(・・・・・)。そんな兄妹がいたら連れてきてほしいよ。


 「……なんか、とっても身近にいる気がしてきたわ」

 「奇遇、僕も」


 なんでだろうね?


 「……ま、いいや。布団は敷かれてるし。あとは寝るだけだね」

 「……うん」


 今日は長い間移動があったし、もう僕は疲れていたので、布団に入る。

 

 「……お、襲わない……?」

 「襲わない襲わない」


 僕が念押ししてくる四様に軽く答えると、ようやく信用したのか僕の隣の布団に入った。

 ……どれだけ信用されてないんだ、僕は。


 「……おやすみ」

 「おやすみ、お兄ちゃん」



 僕は電気を消した。

  

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