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第二七話~質問と四様の意外な趣味!?~

 「まず一つ。私たちは何をやらされるの?」


 いい、四様。これはゲームよ。この里に入ってから様子の変わった弥生さんを元に戻して、家に帰れたら私の勝ち。

 

 弥生さんが元に戻らなかったり、誰か一人でも家に帰れなかったら、私の負け。


 そのために、頑張らなきゃ。能力を使うことは最大限控えて、できるだけ、自分の力で。


 「……明日、私たちの里の者と戦っていただきます。リーグ戦で、とにかく勝ってください。……ご心配なく、負けたからと言ってなにも罰などはありません。……死者に罰など、意味のないことですから」

 「……なんだと?」


 間宵さんが鬼気迫る表情で弥生さんに詰め寄る。


 「勝てばよいのです。勝って殺して、里の者たちを納得させてください」


 「……ずいぶんと、冷静ですね?異常なほどと言ってもよいぐらいです。……何がありました?」

 「なにも」


 夜闇さんの気迫のこもった質問に、弥生さんは眉ひとつ動かさずに答えた。


 「……ふむ、少し気になるのだが、四季は戦わなくてもいいのか?」

 「よいのです。婿には子種さえもらえればそれで十分です」


 とんでもないことを真顔で言う弥生さん。


 いつもなら、ここで喧嘩でも起こったかも知れない。でも、今は弥生さんの豹変の方が気になるのだろう。


 「……私も?」

 私はおそるおそる聞いてみた。ちなみに私は戦うことなんてできない。


 「もちろんです」

 それを知っているはずの弥生さんは一言で斬って捨てた。


 冷静な瞳を崩すことなく、心の奥に何かを秘めたまま、弥生さんは恐ろしい殺し合いの説明をしていく。


 「……以上です。なにか質問は?」

 「あるぜ」


 もうこらえきれない、といったふうに間宵さんが立ちあがり、弥生さんを見据える。


 「お前、誰だ?」

 「如月弥生です」


 「違うな。てめえはそんな堂々としてねえだろ」

 「これが本当の私です」


 淡々と、弥生さんは答える。


 「……この里、何かあるな?」

 「なにも」

 

 「嘘だな」

 「本当です」


 いくら問い詰めても、暖簾に腕押しだ。


 「……ったく、強情な奴!私は風呂入ってくる!……いいか弥生、絶対に正体暴いてやるからな」

 

 ついに、間宵さんは弥生さんに訊くことをあきらめてしまった。

 タオルや着替えを持って、部屋を出ようとする。

 

 「……もし」


 氷のような声で、弥生さんが言った。

 間宵さんは止まって、振り向く。


 「もし、それほどまでに私のことが知りたいなら――」

 「なんだよ?」


 間宵さんに訊かれて、弥生さんはにい(・・)と笑って答えた。


 「勝ってください。最後まで勝ちぬけば、私のことはおのずとわかるでしょう」


 そう言って、弥生さんは次の瞬間にはいなかった。


 「……何があったんだよ、あいつ」

 心配そうな顔をして、つぶやくように言った。


 「心配なんですか、暴力女」

 夜闇さんが揶揄するように言う。


 すると間宵さんはみるみる内に顔を赤くして、首をブンブン振って言った。


 「ち、違えよ!な、なんで私があんなわけわかんねえやつ心配しなきゃいけねえんだよ!おかしいだろ!?ぜ、全然心配なんかしてねえぞ!?そ、その、あれだ。わ、私は様子が変だからいじめがいがないな~って思ってただけなんだよ!うん、そうなんだよ!」


 ……間宵さんのことが愛おしくてたまらなかった。

 なんでこの人のかわいさに今まで気付かなかったのだろう。ああ、私はバカだ。


 「そうなんですか。じゃあ、弥生さんはこのままでいいんですね?」

 つい、私はそう言ってしまった。


 「ダメに決まって……い、いや、その、あいつがいねえと、その、クラスの奴、心配するだろ。うん、クラスの連中のためだ!弥生が心配だからってわけじゃねえからな!勘違いすんなよ!」


 今、キュンと来てた。ここまでツンデレを自然に出せる間宵さんは、きっと天才だ。ツンデレの女王だ。 

 

 今彼女にすりすり抱きついても顔真っ赤にしながら『ば、ばか、なんだよてめえは……気色悪ぃな……』とか言いながらも絶対に引き離そうとはしないんだろうな……


 「おい、四様。お前なんで私に恍惚とした表情ですり寄ってくるんだ!?」


 きっと冗談交じりに『好きですお姉さま』とか言ったら『……わ、私はそんなガラじゃねえ』とか言いながらもしっかり気持ちを受け止めてくれるんだろうな……。


 「お、おいおいおい!四様、私はそっちの気はねえぜ!?お、おい!聞いてんのか!?お~い!」


 ああ、かわいらしいな、愛おしいな。

 

 「お、おい、な、なあ、四様さん?な、なあ、頼むから、今なら冗談で許してやるから……」


 百合してくれるんですか……?


 「なんでもっと詰め寄ってくんだよ!?お、おい、夜闇、零!た、助けて……」


 助けて……だって!ああ、かわいい!


 「……その、お気の毒ですが」

 「もとの能力もそうだが、今の四様君ならおそらく神様でも倒せるんじゃないか?」

 「お、おい!見捨てんのか!?」


 ああ、かわいらしいな、かわいいな。もっともっと可愛がりたいな。抱きしめたいな、頬ずりしたいな、モフモフしたいな。


 「わ、悪かった!し、四様、悪かった!私が悪かった!だ、だから、許してくれ、頼む!何が悪いのかわかんねえけど、許してくれ!」


 百合してくれ……。はい!もちろん!


 「百合しましょう!」


 「うわああああああああああああああああああ!!?」


 抱きっ!




 悲鳴が響き渡った。

 ……かわいい!

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