第十八話~休みの終わり、四様の同居!?~
唸る二人を無視して遊ぶのも気がひけたので、僕らは今日は大人しくここで休んでいることにした。
僕はそうじゃないけど、間宵ちゃんや夜闇、零ちゃんや弥生ちゃんまでもが四様を助けるために戦って、その分きっと疲れているだろう。
「……まったく、呑気な。誰のせいでこうなったと思っているんだろうね」
愛おしげに二人の髪をなでながら、浴衣姿の零ちゃんが言った。
「そうですよ!せ、せっかく四季君とい、一緒にお出かけできると、思ったのに……」
おなじく浴衣を着た弥生ちゃんは僕をちらりと見て、顔を真っ赤にした。……どこに行くつもりだったのだろう?
「……まあ、それは冗談だとして。正直言うと、ここで休んでいた方がいいかも知れない。間宵と夜闇はあの趣味の悪い屋敷で一番の功労者だからね。……今日もしのぼせなくとも、いつか無理が来たと思う。
ただでさえ必要以上に緊張する旅先だ、休みすぎるということはないと思うがね」
ハンガーにかけられた白衣は伊達じゃないのか、的確に二人の状態を分析する零ちゃんはさすがと言えた。
「……そうね。私のために、戦ってくれたんだからね」
申し訳なさそうな顔をして、四様が言った。
「何を言っている。キミはついでだ。……そう、本来の目的はここに遊びに来ることなのだよ。だから、キミは気にせず旅を……いや、最後の故郷を楽しむんだ。いいね?」
この中で一番幼そうな外見してるくせに、言ってることは一番まともだ。
それとも、僕らがたんに子供っぽいだけなのか。……たぶん、後者だと思う。
一見ひどいことを言っているように聞こえるが、それは零ちゃんがついた四様に気にさせないための嘘。
みんな四様のためにここに来たのであって、遊びなんて二の次だ。
僕と四様は兄妹だ。僕がわかっていることを、四様が理解していないはずがない。
だから、
「……ありが、……とう……」
かすれるような声でお礼を言った四様に僕らは。
「「「……どういたしまして」」」
優しく、そう言った。
それから三日、元気に回復した夜闇と間宵ちゃんと一緒に僕らは熱海を心ゆくまで楽しみ、そのままのテンションでアパートまで帰ってきた。
新しい同居人、四様と一緒に。
ちなみに。
四様の祖父母がどうなったかというと、僕たちがアパートに帰る日に警察に捕まった。四様を利用しているだけでは飽き足らず、いろいろと黒いこともやっていたようで、それが表にでてしまったようだ。……いやあ、やっぱり四様はすごいね。
で、その事件の僕の感想。
お風呂、覗かなくてよかった……。危うく死んでたところだった。
めでたしめでたし、かな?
「お兄ちゃん!この人たち早く止めて!早くしないと死人がでちゃう!」
熱海から帰った次の日、つまり三連休明けの朝。
いきなりたたき起こされた僕は、四様の切羽詰まった顔を見ることになった。
「どうしたの!?なんかあった!?」
僕は飛び起きて、周りを見回す。
「なんかあった!?じゃないよ!お兄ちゃんが朝早く起きないのが悪いんだからね!?」
「何があったの!?」
僕はわめく四様を諭して、訊く。
「弥生さんと零さん、夜闇さんがお兄ちゃんのために朝ご飯作るって言って聞かないの!なんか料理とは思えない行程で何かを作ろうとしてるから、早く止めて!」
あ、さすが神様の幸運、あの三人に料理を作らせることがいかに危険か事前に察せたか。
「……うん、とめてく」
ドゴーン!
「る?」
あ、あれ、今なんか聞こえてはいけない、てか聞こえてほしくない音が後ろから聞こえたんだけど?
僕はおそるおそる振り向く。
そんなバカな。
そこには、キッチンがあったはずだった。
あったはずなんだ。
なんで、そこから青空が見えるんだ!?
「……ご、ごめんなさい……ご、ご飯、つ、作り間違えて……」
「……すみません、どんな罰でも受ける所存でございます」
「……素直に謝ろう。……悪かった」
三人の手の中には、フライパン、お鍋、ヤカン。
そのどれもが、昨日眠るまではきれいなままだったものだ。
それが、その全部が。
焦げ焦げで破裂して、底が抜けていて………
「もう二度と、三人とも台所に立つな!!!!」
僕がそう叫んだのも、理解してくれると思う。……ああ、修理どうしよう……そんなにお金ないよ……
こんにちは、作者のコノハです。
妹登場編はこれでおしまいです。
主人公はこれからどたばたな日々を送るわけですが……
次回からは、『如月弥生編』に入っていきます。
なぜ、彼女は同居を望んだのか?なぜ彼女は四季を好きになったのか?
それらを解明していくわけです。
では、駄文散文失礼しました!
ご愛読感謝、また次回!