第十話~平和な平和な金曜の夜!?~
で、結局。
「……もっと効率的な方法があったと思うのです、四季様」
「てめえは黙ってろ、殺人メイドが」
「暴力女に言われたくありません」
「人殺し好きにも言われたかねえな!」
「私は殺人狂ではありません」
「じゃあさっきの提案なんだったんだよ!全部人死に出てるじゃねえか!」
「仕方のない犠牲です」
「その犠牲の中に当事者混じってどうすんだ!」
「別に犠牲になるのはあなたでもいいのですよ?」
「ああ!?やんのかゴラァ!」
で、結局、僕たちが四様のためにしてやれること、として決まったのは、
「あなたこそ。一発で泣きを見ても知りませんよ?四季様のお友達ということで手加減ぐらいはしてあげますが」
「んだとゴラ!かかってこいやクソメイド!」
四様の実家に行っての直談判、ということになった。
まあ、ありふれているし、確実性があるし、何よりも死者がでない。これはいいことだ。
「ええ、行ってあげましょう。お迎えが来るまで遊んでさしあげます」
「はあ!?そりゃこっちのセリフだクソメイド!メイドを冥土に送ってやるぜ!」
「ぼけたつもりですか、暴力女。面白みに欠けます。まあ、人間性が欠けているんです、冗談のセンスが欠けていないという道理もありますまい」
「殺してやるぜ、クソメイド!」
「どっちが殺人狂だか疑われるようなセリフですね。口には気をつけた方がいいですよ?自制できないようでしたらその口、縫って差し上げましょうか?」
「ああ!?てめえのむかつく口、二度と利けなくしてやる!」
どうせ明日は三連休で暇もしていたし、四様の家は観光地としても広く知れ渡っているのだ、これで行かない手はないだろう。
「できるものならやってみなさい、私の名前は十三夜月。料理以外は完全なのです!」
「やってやろうじゃねえか!」
それに、四様をいいように利用している祖父母の姿も、一度見てみたかった。
「はう、あの、ふた、ふたりとも、あ、争いは、はふ、よくないです……」
「うるさい!」
「少し黙っていてください」
「はう……なんで聞いてくれないんですか……? 争いなんて、いいことひとつもないのに……」
「四様、君の家って、どこら辺にあるのかな?」
「え、お兄ちゃん、今それどころじゃ……」
「え?何か変なことでも?」
何言ってるんだろう。今日も平和でいい夜じゃないか。喧嘩なんか起こってない、断じて起こっていないいい夜だ。
「ああ、うん、わかったわ。……ええと、熱海。温泉と海が有名ね」
熱海、かあ……
テレレ、テレーレー!
……みたいな場面しか思い浮かばない僕は、おっさんなのだろうか。
「……さて、準備しようか」
「あ、は、はい……」
「……放っておいていいのかい?」
「何を?なにも起きてないじゃないか」
変なこと言うなあ、零ちゃん。何にも起きてないよ。そう、喧嘩なんて何にも起きてない……
「……わかった。では、準備を始めようか」
「そうね」
「そろそろ……くたばれ」
「お前こそ……早く倒れてください……」
なんかいい感じで勝負になってる光景なんてまったくない。ないったらない。
「さ、始めよっか!」
僕達の三連休は、熱海で過ごすことになった。
お金が妹持ち、というのが兄としては情けなく感じるのだけど。