私の異世界、ぼくの自伝
「みんな生まれたときには記憶も人格も性格もあるとは言えないよな、あるとすれば本能とかかな?だとすれば異世界転生って何をもって異世界だと思う?」
相手の返事を待たずヒラヒラと続ける私、いや蝶々とだよ?ヒラヒラと飛んでっちゃってどうすんだよ。いやまあ私エルフだから翔べるけども、と思考が弾んでいきそうになったところで頭を振って考えを戻した。
ちなみに話し相手なんていないので返事もない。
いわゆる小説とか漫画ライクな世界を異世界と呼んで差し支えないだろうし、それについては私も異論はない、反論の余地はあるかもしれないが。まあ何でこんなことを考えているかというと、私は世界なんてものは私が見ている世界と他多数がそれぞれ見ているものなんて全く違うものだと考えているし、私自身ですら昨日見ていた世界と今日見ている世界、明日見る世界は違うと100%、余りは零で断言しよう。
世にも珍しい2重人格だからね異世界では珍しくないかもだけど。
ここで自己×2紹介 私何歳?だったか忘れたしどこにでもある平凡な暮らしをしていたと思う。轢かれて死んだ記憶なんてないし、引き目のある人生ではなかったと信じたい。
元の体?初めからあった記憶はアル、記憶があるんじゃなくて名前がアルだ。こいつは一人称を自分の名前で呼ぶタイプの男だった(当の本人は上手く隠せていると思っているらしい)全く恥ずかしい、呼ぶ名前が分からない私からすれば羨ましい、か?
「アル、ちょっともうちょっと真面目にやってくれる?」そう言われてふと我に返る。ちょっとって何回言うんだよ双子の芸人か。あれなんか私の生前が知れたような気がするけど、まあいいか。
実のところ私は自伝たるものを書かされていたのだった。教科書に載るらしい。
まあ前置きはこの辺にしておいて
友愛、家族愛、自愛かとおもえば、失敗、後悔、そして忘却の人生をここに記そうと思う。
1,
「アルが生まれた時はなかなか産声を上げなくて大変だった、小さくてとても可愛らしかった。」
母は口癖のようにこういう、今の僕は可愛くないのだろうか。母は微笑みながら「そんなわけないでしょ」と返す。行ってきますを言って外に出る。
当時の僕の1日は単純なものだった。朝起きて水を汲みに行き、そこで魚を捕まえる(置き網がある)そして水遊びをして家に帰り、朝食兼昼食をとる。そして同じ村の友達と探検に出かける、実は探検とは名ばかりでなくこの村は三方向が山に囲まれており、間を川が流れていて、川の分かれ目と山に挟まれた位置に村があるのだけど、山を少し入ったところにまるで迷宮やダンジョンといっても差し支えないような洞窟があるのだ。実は立ち入り禁止なのだけど、危険な動物や罠がある訳ではないので大人たちも目くじらを立てて怒ったりはしないのだ、なにせ大人たちも子供のころはそこで遊んでいたのだろうと推測する。
洞窟では探検はもちろん、魔法や剣で遊んだり、本を読んだりもする。秘密基地みたいなものだ。
疲れた僕たちは皆と別れて帰路につく。僕の家は皆とは少し離れたところにあるので帰りは一人になる、暗くなってくると怖いのでいつも早く帰るように皆を急かすのだが、最近はからかわれることもあるので平気なふりをしている。
とまあこんな日が何年も続いていたし、ずっとこんな日が続くと思っていた。
いつも通りぼくはアバンとミッドそしてリアとミルと洞窟前に集合しその日は魔法で遊んでいた。
この世界では魔法は日常で使われる言わばスマホレベルの必需品であってエルフは水や風魔法が得意、ドワーフであれば土、と考えられているが、私に言わせてみればイメージの問題であってエルフが水や風に触れる機会が多いというだけである。実際に人族は教会やらで加護を受けた属性を得意とするらしいが、なんだよそれって感じだ。スマホといえばiphoneのように皆がそうしているからといった一般論を鵜呑みにしているのと似たようなものだろう。iphone高いんだよな。とまあ話が逸れそうなのでこの辺にしておこう。
とは言ったがこの時の私たちは専ら水、風魔法しか使っておらず、水鉄砲ごっこや風で葉をどこまで飛ばせるかのようなことをして遊んでいた。これが本当に楽しい。
楽しかったはずだった、次の瞬間、洞窟の出口が無くなっていた。正確には出口だったはずの先が外ではなく更なる迷宮の入り口になっていたのであった。
引用 1,ぼくの日記 初めての迷宮 日記なんか付けるなよ女々しいなと私は思う
2,私の記憶?
エルフ村人紹介
アル ぼく、私。エルフにおいて特徴的な髪が黒で耳も人族に近い見た目をしている。
オル アルの母親 すらっとした長身に美しい金髪が目立つ。回復魔法が使える。若いころはパーテ
ィを組んで旅をしていた。