1日目
気がついた時には観覧車に乗っていた。
おそらく夕暮れ時で、辺りはオレンジ色に染められており、
「あぁ、たしかこういう時間を黄昏時なんて言うんだな」などと考えていた。
「わたし……」
向かいの席から声がした。
「わたし、観覧車って意味わからなくて嫌いなのよね」
向かいの席で窓に頬杖をついた格好の少女は続ける。
「ゆっくり回って、ただただ回って。だからなに?」
意外なほどに怒気を孕んだ声色に面を食らった。
なにもそこまで怒ることもないだろう。
おそらく独り言ではなく、こちらに聞かせているようだから返答することとした。
「名前のとおりだろ。"観覧"車なんだから。観覧する分には遊具自体に刺激はいらないだろ」
ギロッとこちらに目線をくれた気もするがどうにも曖昧だ。
たかだか1m少々の距離でここまで顔も見れないほどか。
「そういうことじゃなくて、地に足つけずに生きていけないというか」
「ら、ラピュタ?」
「……そういうくだりもあったけど今はそのままの意味」
そう彼女が言った瞬間に場面転換したかのように景色が変わる。
真っ黒の空間。
認識できるものは二つ。
膝を着いた自分の目線にある裸足の指先。
すぐそばで倒れている椅子。
頭上から声がする。
「地に足がついていないから生きて行けないのか、生きていけないから足が離れてしまったのか」
ここで目が覚めた。
夢見の悪い私の記念すべき夢日記1日目だ。