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流れ星に願いを込めて

夏、修学旅行で私達は沖縄に来た。

私は春翔(はると)と、他数人の子と一緒の班になれて、前日からすごい楽しみだった。

何せ、私は春翔のことが好きなのだ。いつからかは定かではないが…なので、本当に楽しみだった。

「ねぇ、あっちの海の家でお土産売ってたよ!見に行こう!」

「あ、うん。今行く」

その声に釣られたのか、班のみんなで海の家に行った。みんなでお揃いのキーホルダーとか、わちゃわちゃやっている中、私は1人離れてささっとものを決めて決めて会計に向かっていた。

すると、また違う場所で班の人の声が聞こえたので、興味本位で見に行った。

声の場所を探していくと、春翔とその幼なじみの紗奈(さな)がいた。

会話とその場の様子を見る限り、2人はお揃いの缶バッジを買おうとしているみたいだった。

(な、なんで?あの2人は付き合っているの?)

心の中にぐるぐると黒い感情が渦巻く。

この感情がなんていうのか、恋愛に疎い私でも分かる。嫉妬しているのだ、紗奈に。

なんというか、早く立ち去らないと自分が自分を抑え込めないような気がして、その先を見ずにそそくさとその場を立ち去った。

会計を済ませたあと。あんなものをを見てしまったからには、この場にいることすらも気が引けて。結局みんなに断りを入れて先に宿に戻らせてもらった。

宿に戻ってからも、聞こうと思っても、当然私にそんな勇気があるはずもなく。誰かに相談するわけにもいかず、1人悶々と頭を抱えた。

それをずっと繰り返しているうちに帰ってきたみんなと、沖縄料理であるゴーヤチャンプルなどのご飯や露天風呂に入ったが。こんな精神状態で楽しめるはずもなく、綺麗な景色もそうそうにお風呂を出て、部屋に戻った。

が、部屋に戻ってもどのみちさっきの繰り返しになりそうだったので、こっそり宿を出て夜風に当たることにした。宿をこっそり出ようとした時、不意に私の名前が呼ばれた。

「ひゃい!」

ば、バレた…!と体を硬くして振り返ると、そこにいたのは春翔だった。別の意味で体が硬くなるのを必死で抑え込んで、なんとか笑顔を作った。

「ちょっと、ついてきて」

そんなことを知ってか知らずか、それだけ言うと春翔は私の手を引いて宿をこっそり抜け出した。

元からそのつもりだったとはいえ、若干気が引けるな…とこの状況から逃げるように現実逃避をし始めるなか、春翔は迷いのない足取りで薄暗い道を進んでいく。

「ねえ、どこいくの?」

「ん〜…ついてからのお楽しみ」

勇気を出して聞いてみるとあんまり参考にならない答えが返ってきた。

春翔がこうやってサプライズ的なことを仕掛けるのは珍しいので黙ってついていくと、満点の星空に、まるでそれを写しとったかの如く輝く海に出た。

「ここ…」

綺麗すぎてまともに言葉が出てこない。

ぱくぱくと酸欠の金魚のように、何か言おうとしても声にならない私に代わって、春翔が説明する。

「夜光虫だ。今日はすごく綺麗に見れるって、宿の人が言ってたから…」

少し照れ臭そうに頭をぽりぽり掻きながら言った。

私も聞いたことがある。

確か、物理的な刺激に反応して光るプランクトンの一種だったはず。

波にゆらゆらと揺れてうっすらと光る海はとても幻想的で、思わず海の方に惹かれていくように近づいていき、ゆっくりと海に触れると海は一瞬遅れて蒼く光った。

「でも、なんで…?」

「その…お前が元気なさそうだったから…」

思わず驚いて春翔の方を向くと、こちらから見えないように下を向いて必死に顔を隠していた。ようだが、流れた髪の隙間から見えた耳が赤く染まっているのを見てしまった。

それを見て、私は慌てて顔を背ける。

「あー、もう戻ろうぜ。そろそろバレてるかもしれないし」

春翔が勢いよく立ち上がると、ぱしゃんと波打つ。

すたすたと去っていこうとする春翔を慌てて追いかけるように立ち上がり、小走りで走る。

でも、まだ名残惜しくて振り返ると、空に一筋の流れ星が流れた。

一つ、また一つと流れていく星に、私は密かに願いを込める。

「おーい、行くぞ」

「あ、待って」

今度こそ慌てて春翔を追いかける。


私が何を願ったか、それはこの海と星々しかわからない。


読んで勘づいた人はいるかもしれませんが、実はあの童話のやつに投稿しようと思って書いていたのですが、段々と童話じゃ無くなってきてしまったので諦めて短編小説で投稿することにしたものです。

…つ、次こそは…

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