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僕が猫を嫌う理由

作者: 小林小豆

これから僕(裕太)がここに書き綴ることは僕が小学三年生だった時のことであり、実際に僕が体験したことだ。

別に信じろという訳ではなく、ただ記録としてここに残しておきたい。

結末(では無いかもしれないが)から言うと、僕は猫の言葉がわかるようになる。

そして、その猫と暮らすことによって生きていく上で大切なことを沢山学ぶのだ。



僕は生まれつき体が弱く、病気がちだった。

そのため生まれた時から母さんと一緒に病院で生活を送っていた。

学校へ通うのは難しかったため、学校の先生に来てもらい、授業を受けていた。

病院での生活は退屈っちゃ退屈だけど、毎日外へ散歩をしに行っていたため嫌いじゃなかった。



梅雨の季節に入ったある日、僕は傘をさして母さんと一緒に散歩へ出かけた。

ここ1週間、雨は降りっぱなしだ。

僕達はすっかり人がいなくなった公園を歩き、赤い橋を渡った向こう側にある商店街へ向かった。

僕達はいつもここで買い物を済ませている。


昔母さんに病院の近くにスーパーがあるにもかかわらず、なぜここで買い物をするのかと聞いたことがある。

わざわざ遠くまで来て買い物をする必要は無いと思ったので、なにか特別な理由でもあるのだろうと、答えを真剣に待った。

母さん曰く、なんとなくだそうだ。

なんだそれ。

僕はそれ以上聞いても意味は無いと思い、それ以来何も質問しなかった。


「ただいまなんと野菜が30%引きとなっておりま〜す!」

大きなメガホンを手に甲高い声をあげる女の人。

それを聞いた奥様方(母さんも含めて)は、吸い込まれるように小走りでバーゲンセールの看板の方へ向かった。


僕は購入するお菓子でも選ぼうと思い、目の前の駄菓子屋へ入ろうとしたその時、

ミャー…

僕はバッと声のする方へ振り向いた。

バーゲンセールの声でとても聞こえづらいが、確信が持てるほどには聞こえた。

ミャー…

橋の方から再び声がした。

僕は傘をさし、橋へ足を向けた。

しかし声の持ち主らしきものは見当たらない。

ミャー…

橋の下だ!

僕は橋の下へ降りられる階段を使って降りた。

周りを見渡すと、『 団子』と書かれたダンボールが置かれてあった。

雨に濡れないようにするためか、橋の真下に置かれている。

僕はそのダンボールへ近づき中を覗いた。

すると、オレンジ色の毛布に包まれた子猫が入っていた。

白色と茶色と黒色の毛から僕は三毛猫だと思った。

昔読んだ猫の図鑑に載っていたからだ。

子猫はすっかり痩せ細り、ノミが沢山ついていた。

捨てられてから随分と日が経ったのか、カラスらしきものにつつかれたような傷も見られた。

ガタガタと震える今にも死んでしまいそうな子猫は、一生懸命声をあげ、助けを呼んでいたのだ。

僕はダンボールを抱え、傘をさし、雨に濡れないよう気をつけながら商店街へ戻る。



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