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乙女4

ざまぁは気休め程度の扱いです<(_ _)>

「想い人ですって…そんな言い逃れ…でしたら今すぐここに連れていらっしゃいよ!」


「いい加減にしろ!見苦しいぞ、ジーニレア=フリスベイ侯爵令嬢」


叫んだジーニレア=フリスベイ侯爵令嬢は、鋭くフリデミング殿下に制されて黙り込んだ。フリデミング殿下は令嬢の前に立つと静かに話し出された。


「フリスベイ侯爵令嬢がルベルをどれほど好いているのかは分からない。だが、相手からも同じ熱量を返してもらえると思うのは違うぞ?自分が好いているから相手も自分を好きに違いないとでも思っているのか?まさか、ルベルに嫌われているとは思っていないのか?」


「っひ!」


ああ…フリデミング殿下は残酷だわ。いえ、確かにこうでも言わないと気が付かないだろうけれど。ビジュリア卿からは高位貴族の彼女には言えない言葉…でも王族の殿下なら許される発言。


フリデミング殿下は言葉を続けられた。


「人とはな、一人一人モノの見方も違うし、好みも違う。ルベルだって人間だ、好きなモノ嫌いなモノがある。ルベルに好きだと叫んでいても、ルベルに伝わらない言葉はいくら叫んだとて自己満足に過ぎないのだ。それは好きだと叫んでいる自分に酔っているだけなのだ。令嬢はこれから先の人生を考えたことがあるか?一生ルベルから嫌われて、一度も手を取ってくれない男を夫として認められるのか?」


「そ…っそんなことをするはずないでしょう!?私は侯爵令嬢ですよ?ルベルだって婚姻したら私を夫人として認めて…」


「認めるだけで近付いても来ないのだぞ?夜会も別々、住まう屋敷も別々、そんな心の籠らない夫婦になりたいのか?」


フリデミング殿下の言葉は鋭利な刃物のように私の心に刺さった。


心を伴わない婚姻。そうか……ステファン=シガリーの時も、私もそんな心持ちだった。両親に言われたから…婚姻に同意した。ステファン=シガリー個人に何の興味もなかった。ただステファン=シガリーのいう事に微笑んで頷いているだけだった。


もしかしたらステファン=シガリーもそんな私に腹をたてた?


ううん、だとしてもステファン=シガリーの暴力は絶対に許されることではないわ。そんな訴え方間違っているもの。


フリデミング殿下の横にハラシュリア様が立って、さらに言葉を続けられた。


「今あなたはルベル卿にのぼせているかもしれないけれど、彼だって皺くちゃの脂ぎったおじさんになる可能性もあるのよ?それにルベル卿に愛人が何人いても構わないの?あなたが好きだったら、ルベル卿の気持ちは無くても構わないってことなのかしら?」


フリスベイ侯爵令嬢は震えながら、ビジュリア卿を見たりフリデミング殿下を見たりした後に、ハラシュリア様を見下ろした。


「貴族の爵位を持つ者なら…愛人や妾は当たり前で…」


「私は絶対に嫌よ!自分以外に愛を囁いていたり、自分以外の人のこと愛しているなんて考えただけでも…飛び蹴りをかけたくなるわ!」


ハラシュリア様がそう叫ぶと何故かフリデミング殿下がビクッとなって少し飛び上がられた。


「あなた浮気されても他に愛人が居ても構わないなんて、本当はルベル卿のことを好きじゃないのね!」


ハラシュリア様!


ずばりと真実を言い過ぎでは…?確かに愛人を持っても良いだなんて…私も嫌だわ。もしビジュリア卿が他に何人も女性に愛を囁いて褥を…ああっ駄目駄目!また破廉恥な想像で漆黒の獣を穢してしまったわ…いけないっ。


思わず顔を赤くして頬を押さえているとビジュリア卿と目が合った。


何故そんな蕩けるような微笑みを浮かべていらっしゃるのでしょうか?


「ルベルは私のものよ!私がルベルがいいといったら絶対私のものなの!」


「ああっ!」


フリスベイ侯爵令嬢がいきなりハラシュリア様に掴み掛ろうとした。するとハラシュリア様は果敢にも掴み取ろうとしたフリスベイ侯爵令嬢の手を掴み返して……え~と組手というのかしらね?ご令嬢がするには随分と勇ましい取っ組み合いだけれど、ただ力押しではハラシュリア様はまだお小さいし負けてしまう…ああ!


ハラシュリア様はやっぱり力負けしてフニャと力を抜いてしまった。フリデミング殿下が慌ててハラシュリア様の背中を支えようとした。


「…っ!まだ負けと決まった訳じゃないわ!」


まるで軍人の雄叫びのような勇ましい声を上げて、立ち上がろうとしたハラシュリア様はよろめきながら、反動で前のめりに転んだ。


当然真正面にいたフリスベイ侯爵令嬢の上に覆いかぶさるようにして転んだ。


「むぎゅ…」


「いだだだっ…」


何かがゴロン…と床に転がった。私は思わず転がったモノを拾い上げて見た。何かしら?流線形の枕かしら?結構硬いし変わった形ね。思わず拾い上げて手に取ったそれは何だかまだ温かい…?


「ああっ!」


「あっ!」


「返して!」


私が拾い上げた温もりがまだ感じられる枕?はフリスベイ侯爵令嬢にひったくられた。


枕を慌てて背後に隠そうとしたフリスベイ侯爵令嬢を見ると彼女のお腹とお胸は平たかった…


「お前っ!やはり詰め物をしていたな!」


「あなたルベル卿に嘘を言ったのね!」


「私をたばかろうとしたのか!」


フリデミング殿下とハラシュリア様…そしてビジュリア卿が一斉にフリスベイ侯爵令嬢に怒鳴った。


やっぱり妊娠は嘘で、お腹に詰め物をしていたのね…!


フリデミング殿下はフリスベイ侯爵令嬢に向かって怒鳴った。


「ルベルに虚偽を申し立て苦境に立たせ、あまつさえ伯爵家をも巻き込んでの脅迫行為…看過することは出来ない!国王陛下に申し入れをして侯爵家にはこの責を取ってもらう、良いな!」


「マエリア、行きましょう!」


ハラシュリア様に声をかけられたので、フリデミング殿下一行の後に静かに付いて行った。


暫く歩いてからフリデミング殿下とハラシュリア様はいつもの掛け合いを始めた。


「やっぱり腹に詰め物を入れていたかー」


「姑息な手段よねっ!侯爵令嬢のお腹を触ることなんて余程の事が無い限り誰にも出来ないし、確かめられないものね。でも…まあいいじゃない!嘘も露呈したしこれでルベル卿も一安心ね」


そう言ってハラシュリア様はルベル卿を顧みられた。ビジュリア卿は私とリーネの後ろをウラスタ卿と共に歩いておられて、背後から小さく笑い声が聞こえた。


「まさか、ハラシュリア様がフリスベイ侯爵令嬢に体当たりをされるとは思いもしませんでした」


「あっ!あれは…たまたまよぉ、その…体勢を立て直そうとして足がもつれたというか…」


「そうだよ、ハラシュリア!女の子が組手なんてするもんじゃないよ!」


フリデミング殿下がハラシュリア様に顔を寄せた。ハラシュリア様は目を鋭くしてフリデミング殿下を睨み付けている。


「相手から組みかかってきたんじゃない!敵に背中は見せないわよ!」


またも勇ましい軍人のようなことを仰る小さな令嬢…可愛い。フリデミング殿下と軽く言い合っている姿もじゃれ合う小動物のようで微笑ましい。


その翌日


フリデミング殿下は一早くジーニレア=フリスベイ侯爵令嬢の件を公にしてシュリツピーア国王陛下に報告し、フリスベイ侯爵令嬢の狼藉を止めもせずに、ビジュリア伯爵家に圧力をかけるなど言語道断だ!と議会でフリスベイ侯爵を糾弾した。


国王陛下の命の元、内務省の特務部(情報を調べる部署)がフリスベイ侯爵の身辺調査に乗り出し、出るわ出るわの不正の証拠…だったそうだ。


令嬢の件以外にも国に納める税金の脱税、国からの助成金の不正利用、挙句に国が定める地方税より重税を領民に課した上に、その税を国に申告せずに着服し私腹を肥やしていた等々…フリスベイ侯爵は爵位を剥奪、領地を没収となったのだ。


それら全てはフリデミング殿下の指示の元、素早く処理された。あの小さき賢王はかなり怒っておられるようだ。


「フリデミングってね、一度懐に入れた部下とか友達とかはものすごく大事にするのよ~」


ハラシュリア様はそれは嬉しそうにフリデミング殿下のことを、そう話されて頬を染めていた。


そんな私は最近ではビジュリア卿とお話することも多くなった。卿とお話していると、例の夢の妄想を思い出しそうで顔が赤らんでしまいそうになるけれど、ビジュリア卿はいつもお優しく微笑まれていて、ああ、素敵ね…なんて心の中で漆黒の獣様に絶賛を送る日々を続けていた。


今日もハラシュリア様とフリデミング殿下はテラスでお茶を飲みながら仲良くされている。


「私、マエリアにも幸せになって欲しいのよ?でも恋愛することが全て…ではないという事は言っておくわね。人生をね、黒く塗りつぶすのも光り輝かせるのも、自分の気持ち次第だと思うの。マエリアには人生を楽しんで欲しい」


相変わらず、まだ11才なのに老成された方のようなお言葉ね。


「ハラシュリア、おばあちゃんみたいだね」


「なによぅ!フリデミングだって、おじさん臭いくせに!」


「臭くはないよっ!」


また口喧嘩を始められてしまったわ…でも楽しそう…


このおふたりが本当に羨ましいわ…最近特にそう思う。愛し愛される存在がいるおふたり。年齢は関係ないわね、きっと他の使用人も貴族の方々も皆そう思っておられる…と思う。


フリデミング殿下とハラシュリア様が手を繋ぎながら、喧嘩をされていたって皆が微笑ましく見詰めているのはもはや日常茶飯事になっているし、メイド達の口癖は


「あんなに愛し合える方に会えるといいわね~」


こればかりだ。ハラシュリア様にも憧れ、フリデミング殿下に尊敬の念を抱き…今日もシュリツピーア王国の王宮は幸せに包まれていた…はずだった。



……


それなのに…どうして?


目隠しをされ、口を布で塞がれて…私は何か麻袋のようなものに入れられて…どこかへ運ばれていた。


体が揺すられる衝撃があることで、恐らく馬車でどこかへ運ばれていることが分かる。


私を誘拐?城の中で?ハラシュリア様やリーネや他のメイド達も目撃しているから、助けが来てくれる…はず。


誰か…助けて。


ハラシュリアは良い仕事をします^^漆黒の獣がアップを始めました。

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