第71話 機巧人
〇【■■■■■■■■■】
後世の者が始原と呼んでいた時代、それは今から3000年以上前に遡る。
【ジュリウス・クラフトマン】という天才。いや、異物が既存の文明を加速させることで後世に【始原文明】と呼ばれる時代を築き上げた。
彼の功績の詳細については今回は脇に置いておこう。
彼は【■■】により、【始原文明】が滅ぼされるまで、いや滅ぼされてもなお数多くの発明を世に送り出した。その種類は環境整備・制御装置に始まり、様々な日用品から果ては兵器まで、それこそ多岐にわたる。
その中でも彼の名を高めた代表格を上げるとすれば、【機械人】・【機械獣】が第一に挙げられるだろう。 今回は【機械人】の説明のみを行い。【機械獣】の説明はまたの機会に行うとしよう。
始まりは人の生活を補佐する。如何にもロボットといった外見だった。しかし、改良を重ね人と同等、いや、それ以上の知能を持ち、人にそっくりな外見を与えられるようになった。用途としては、ハウスキーパーから戦闘用などの様々な【機械人】が創造された。
その中でも彼が後期に創り出した特別な【機械人】は彼の最高傑作とまで謳われ、その特別な六機の機械人は【機巧人】、または機体名に特別に華の名前を与えられたことから【六機華人】と呼ばれた。
何故その六機が特別なのか? それは人間を遥かに超えた演算能力を持ち。希少な素材を用いて作製された類を見ない特殊なギミックを搭載していたこと。そして、そのギミックは【ジュリウス・クラフトマン】以外には再現が不可能だったからに他ならない!
しかし、【■■】との戦闘が激化するにつれ。戦闘用の【機巧人】3機の内2機は完全破壊、一機は半壊となった。災害救助型、情報戦型は行方不明。発明と創造に特化した工作型は消失した。
彼ら? いや、外見は女性に似せられていたため、敢えて彼女らと呼称しよう。
文明崩壊の動乱の中で、彼女たちの行方がどうなったのか?【始原文明】が滅びたいま、それを知るものは誰もいない。
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【殲滅者】シレン
「う~ん!」
この目の前の女性を人形と断定したのには理由がある。確かに外見は美女だ! しかし、よく見てみると関節は球体だし、耳のあたりに排熱フィン?のようなメカパーツがくっついている。
しかし、それ以外は人間と殆んど大差がないと言っていい。耳のメカパーツを取って、球体関節を袖の長い服で隠せば人間。と言ってもパッと見ではわからん位には精巧な造りだ。
(まぁこのフレーバーテキストを見れば、この完成度の高さにも納得だがな!)
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〇『文目の記録者』
『ジュリウス・クラフトマン』が作製した6体の『機巧人』には含まれない番外の『機巧人』。
滅んだ文明を再興するにあたって、その一助となるべく万能寄りのコンセプトで創り出した機体だった。完成間際になり【■■】の攻勢が激しくなり。高コストの『超小型魔力コア』の搭載が間に合わず、されど廃棄することも惜しんだ結果。後世の者が完成させてくれることを願い、シェルターのひとつに保管した。
半壊した戦闘型『機巧人』である『紫陽花の分解者』のギミックを搭載してあるので、実戦戦闘にも十分耐えうるが、本来の機能としては創造と製作に優れている。
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(つーか。これが未完成なのは『超小型魔力コア』が搭載されてないだけってことだろ? 俺、持ってるよな? ダンジョンクリアの報酬で! 偶然にしちゃ出来すぎだぜ!)
以前にDランクダンジョンの報酬として手に入れたアイテムを思い浮かべる。
これを明らかに偶然や運で片付けるには可笑しい。突然この場所へ転移できるようになった事と合わせて、何らかの意思が介入しているのは間違いないだろう・・・・・知ったところで何もできないのが歯がゆいが。
だが本当の偶然という可能性も極小だがある。限りなくゼロに近い可能性だが。
(ゲームだと、極稀にだが。こういった偶然が積み重なって。トントン拍子にシナリオやクエストがうまく進んでいくことがある。その時は歓喜に包まれるもんだが、今は妙な寒気さえ感じるぜ!)
すっかり物事を疑い深くなった自分の思考に対して苦笑を漏らしつつ。この『機巧人』?についてもう少し考えてみることにした。
(取り敢えずコアさえ搭載すれば動く可能性は高い。あのコアも『【ジュリウス・クラフトマン】の作成した』とあったから規格が合わないことは無いはずだ!)
こういった製品は規格を合わせて作製するのは現代工業では常識だ。天才と呼ばれる存在がその程度の事を気付かない可能性は低い。
(それに創造と作製に優れている上に戦闘までこなせるならかなりの掘り出しモンだ。『記録者』というネーミングから当時に情報を記録している可能性もある。それにしても文目・・・か! 英名をアイリス。花言葉は『希望』に『便り』だったかな? 【ジュリウス・クラフトマン】は後世への希望かメッセンジャーとして。この名前を名付けたんかね? 中々にロマンチストじゃないか。拾ったのは無骨なアラサーだけどな)
レンジは母が花が好きだったこともあり。花言葉だとか、そういった乙女チックなことは多少は勉強して、今もなお憶えている。それにこの人形がアイテムの製作が出来るとしたら、多少の労力を使ってもサイズを試すくらいの価値は十分にある。サイズが合わなくても拠点に置いて確保しておけばいいだけだ。
(コアは大広間の保管用のアイテムボックスに入れてある。取ってくるのも面倒だ。この人形ごと持って行くか)
透明なケースを持ち上げ。人形に近づき、懐から空のアイテムボックスを取り出し人形に近付けると。すんなりと収納できた。やはり、生物ではない無機物のアイテムか特殊装備品扱いなのだろう
(さて、『羅針盤』の反応もこれ以上は無いし、これ以上はここにも用は無い! とっとと帰るかね!)
『機巧人』が空振りでも、納められていたアイテムだけで充分な見返りはあったと言えるだろう。
そう考えて、入り口に戻る前。何となく、メニューウインドウを開いてみると。どうやらこの場所からでも自宅に転移が出来るようだ。
レンジはログアウトボタンを選択し。速やかに自宅へと帰還した。
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〇自宅 【殲滅者】志波蓮二
自宅に転移すると早速アイテムボックスから『超小型魔力コア』を取り出すと『機巧人』に搭載しようとする。幸いにも『どこに搭載すればいいかわからない?』・・・といったことは無かった。
額の中心部に不自然な窪みがあり。その窪みは手に持っているコアが、丁度収まりそうなサイズだったからだ。
窪みにコアを押し込むと、低いモーター音のような音が聞こえたと思ったら。水晶のような透明のコアが奥に引っ込み。肌色の皮膚?のようなものが代わりに表れた窪みを覆ってしまう。
暫し、ジッと人形を見つめていたが。直ぐに変化は現れた。一瞬全身が光ったかと思ったら、両目がパッチリと開かれた。
『質問・アナタガショユウシャデスカ? トウキハ【アイリス・レコーダー】。ショユウシャトウロクヲイタシマス。オーナーノセイタイデータヲクダサイ!』
「???・・生体情報? 具体的に何が必要だ?」
「ショユウシャトナルカタノ、タイエキカケツエキヲイタダキマス」
その言葉に指を軽く切って血を滲ませると目線で『この後どうする?と問う』すると俺の手に口を付けてきた。
舌を出して血液を取り込み。今度は目線を合わせるように要求してきたので、目線を合わせる。
「所有者登録完了いたしました。コレより当機は貴方様のモノです! 何なりとご命令ください。使い潰すも、弄ぶも全て貴方の望むままに!」
一部の特殊な嗜好を持つ方々なら泣いて喜ぶだろうが。生憎とレンジはそこまでメカスキーではない!
「じゃあ聞くが!・・お前はどんなことが得意で、何が苦手だ?」
まず聞いておかないといけないのが特技と不得意なことだ。解析で調べたので知っているが、年代物なのは間違いない。念のために確認しておくのは間違いではない。
「当機は記録者にして創造者。人が新たなる文明を築くときの一助となるべく、創られました。故に情報の分析と機械類の作製を得手としています! 逆に戦闘は出来ないわけではありませんが、得意と言えるものではありません!」
まぁこれは予想通りだ。フレーバーテキストにも似たようなことが書いてあったからな。肝心なのは次の質問だ。もしこれさえ分かれば今後の動きを大幅に修正しなくてはならないからだ。
「なるほど! なら聞くが、お前は『エリクシール』か『エリクサー』の作る事は出来るか? もしくは原料を知っているか?」
俺がダンジョンに挑む一番の理由を問いただした。




