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第70話 貴重品

     

【殲滅者】シレン


 この部屋に入って探索を始めてから『羅針盤』が反応しっぱなしだ。どうやらこのシェルターは、生き残った者が地上に出た時に。ある程度の生活が出来るように物資が納められていた『資材置き場』のような場所だったらしい。


 その根拠を裏付けるかのように、解析してみても中々・・・どころか一級品の素材が揃っている。


 〇『ヒヒイロカネ』

高レベルの鍛冶師や錬金術師でさえも容易く加工することが出来ない超硬度を誇る金属。

加工には熟練の技術と知識。専用の施設か魔法が必要。

熟練の錬金術師でもこの金属を創り出すことが出来るが、造り出せる量に比べて10倍以上重量のオリハルコンやアダマンタイト等の素材を必要とするのでコストパフォーマンスはかなり悪い。


(この希少金属が約10キロほど・・・・インゴットにして積み上げられている)


 〇『ダークマター』

空より飛来したとされる漆黒の鉱物。加工法によって全く違う効果を発揮する。

非常に希少な素材ではあるが、加工には熟練の技術と知識が必要。

錬金術でも創り出すことが出来るが、現在ではその知識は失われている。


(おっちゃんに渡せば加工できるか? 取り敢えず見せるだけ見せてみるか?)


〇『精霊石』

アイテムランク:(3級)

精霊がその永い寿命を終えて、転生するときに今まで蓄えた力を形にして残した希少な物質。上級の装備や、アイテムの素材としては一級品と言っても過言ではない。


(これも良いもんだ! このシェルターに来て、大当たりだな!)


 思わぬ収穫に顔を綻ばせていると、まだ『羅針盤』が反応を示していた。

羅針盤の針は行き止まりになった壁を指している。


(ここはただの壁だろ? あっ、もしかして隠し部屋か?)


 壁を押しても、思いっ切り殴りつけてもビクともしない。こういった場合はギミック式の場合がほとんどだ。


 黒魔法『音響探査』で部屋全体をくまなく探査していると、反応が返ってきた。


 反応のあった入り口近くの扉を調べると。一番下に窪みのようなものがあったので、そこに触れてみる。 すると窪みが突然発光したと思ったら、行き止まりだった壁が、左右にスライドした。


 念のため警戒しながら慎重に中に入ってみたが、敵やトラップの類は無く。高さ2メートルほどの箱が置いてあった。ここまで来て開けないという選択は存在しない。


 取っ手も何もない真っ平らな箱なので、ポンポンと触れてみると箱が突然開き、中身が顕わになった。


 箱が開いた瞬間に、罠かと思って思いっ切り飛び退いていたので。警戒しつつ箱に近づいた瞬間、それは起こった。

 

「へっ!」


最奥の壁からセントリーガンが出現し、こちらにレーザーを放ってきた。


「こなくそっ!」


 咄嗟に籠手で防御し、光線を防ぐ。光竜の籠手のスキル『光属半減』のお陰で、急所への光線は籠手が完全に防いでくれた。籠手で庇えるの範囲外の光線は何発か俺の体を貫いたが。これらはすぐに『高速再生』で復元する。


「タチが悪いな。まぁこの程度はおやく・・・そ・・くっ!」


 今度は左右に壁が突如下がり、大型のガトリングガンが唸りを上げながら銃弾をばら撒く。


「な、・・めんなっ! 」


 不動状態で防御姿勢を取ることで防御力を3倍にする『不屈守護者』・自身を鋼鉄と化し流れるように衝撃を受け流す『流動鉄塊』で絶えず浴びせられる銃弾の嵐を耐え忍ぶ。


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


 静音性が高いのか? ガトリングのドラムが回転する音が響くくらいで、銃声はほとんど聞こえないが、もう3分以上、2基の銃口から2万発以上の銃弾を受け続けている。 



(いつまで続くんだよ? スキルの効果時間もそろそろヤバいんだけどな。これ使ってる間は他のスキルや魔法が使えないし・・・・・スキルが切れたら被弾を覚悟で退避かな?)


 銃弾が途切れたのは発射開始から、5分近くたってからだった。合計で3万発以上の銃弾をばら撒いていた計算になる・・・・やりすぎだボケがっ!と叫びたくなってきた。


「しつこいんだよ!」


 黒魔法『風雷神』で2基のガトリングを銃座ごと木っ端みじんにする。


 雷の渦と風の刃が混ざり合った暴風が吹き荒れ。部屋の中を引っ掻き回すが、暴風が収まった後に見てもガトリングは跡形も無くスクラップと化している。


 それ以外は箱はおろか、壁でさえも全く傷がついていない。


 壁に解析を掛けると、魔力を吸収する材質のようだ。・・始原の技術力の高さを物語る光景だった。同時にそれだけの技術を持った文明を滅ぼす存在の強大さが理解できる光景でもある。


(これだけの技術を持った文明を滅ぼす存在・・・か!? 正直、【運営】しか出来そうな存在は思い浮かばんが、俺の勘では『運営』じゃ無い様な気がするんだよな!)


 あのクソ【運営】は目的があって行動しているような気がする。わざわざ直接滅ぼすような真似はしないと思うんだが・・・な。


 ゲームでサービスが停止するのは、決まって採算が合わないからってのが相場だ。

かつてあった狂気のゲーム『世界防衛軍』は巨大生物の侵略から地球を守るってのが基本だが。最後は地球の意志が人間を害と見なし。大陸に擬態していた超巨大生物との最終決戦を挑むってシナリオだが。あれギリギリで人類側が勝ったけど。もし負けてたら、サービス自体が終了してた可能性が高いんだよな! 元々、マンネリ化でユーザー離れが起きてたし。あの終焉浪漫に取りつかれた運営ならソレをやりかねない怖さがある。


 もしも、地球や異世界を実験場と考えた場合。意に沿わない進みをした者たちに対して、研究者はどのような対応を取るのか・・・経過を観察・・・いや、処分だろうな。


 仮定だが。【始原文明】が創造者の意に沿わない道を進んでしまっていたとしたら・・・そして、地球が『運営』の意に沿わない道に進んだとしたら・・・・・・。


 (やめよう! 見えない影に怯えた所で得るモンは無い。ちょっとナーバスになってるかもしれんな! 今は『運営』は地球を玩具程度にしか考えていない。ソレだけ分かっておけば十分だろうさ)


 不吉な予感を頭を振って追い出す。所詮は推測に過ぎない。


(今回のクエストを見ればそれは簡単に思い至る。あれは東京など滅びてもイイとしか考えていない。近代兵器なしに、エンペラーや上位種率いる5万のオークを倒せるとは思えん)


 俺ならば兎も角、現代の地球で兵器もなしでそれだけの軍団に立ち向かえるとは到底思えない。


(東京は地獄と化すだろうな。まぁ俺が出張るのはギリギリになってから・・・だけどな)


 被害が出た方が今後の対応や考え方も変わる。最初から俺が出向けば最小の被害で済むだろう。


 しかし、長期的に見た場合はそれは悪手だ。今回は魔物の脅威とジョブを極めると強力な力を得ることが出来ることを世界に知らしめるのが最適なはずだ!


(痛みも無く人は理解しない。この世界は魔物の脅威に晒されている。その脅威は何時でも、誰にでも襲い掛かるという事を知ってもらう。・・そうしなければ政府や民衆も甘い考えを持ったままだ!)


 非情なようだが、そもそもレンジには何の責任も無い。この状況で責を負うべきは政府、もしくは国防軍だ。


(犠牲となる人は必ず出る。しかし、それは俺の対応することじゃない。政府や国が対応することだ。まぁ役人や政治家は過労死するかもしれんが、普段優遇を受けているんだ。こんな時くらいは仕事をしろ。ってとこだな)


 普段の生活で優遇を受けてんだから非常時に働くのは当然。レンジは正論を言っているにすぎない。


(それに倖月のクソ共が被害にあうなら、頑張ってオークさん!! ・・・・・ってエールを送りたいぐらいだがね)


 レンジにとって倖月など身内でも何でもない。どうなろうが知った事じゃない。向こうもレンジに対して同じ認識だろう。だが暴力という力を比較するなら、レンジは既に倖月の遙か上にいる。


 その気になれば倖月家に乗り込んで正体を分からせないまま全員を皆殺しにさえ簡単に出来る。それをしないのは、単純にもし事が露見した時に母に負担がかかるから。もう一つは、「それはやりすぎだ!」という思いがあるから。自分を虐待した連中なら兎も角、関わってもいない連中を殺すのは流石にどうかという思いがあるからだ。・・・・・もっとも・・・。


(アレに聞いた結果次第だがね。もし俺の思った通りだとしたら、流石に怒りを抑えきれんぞ)


 以前決意した、このクエストにかこつけて確かめたい———確かめねばならないことがある。それ次第では倖月は死より惨い目に遭わせると既に決めている。


 あのクソ共が絶望に浸る想像をすると暗い喜びが込み上げてくる。思わず顔に触れてみると、口角が三日月のように吊り上げっている。


(おっと、いかん、いかん。あのクソ共はどうでもいいが、他に被害が出るんだ。流石に不謹慎だったな)


 勘違いを訂正すれば、一般人に被害が出ることに対して何も思わないわけでは無い。あまり興味が無いことまでは否定しないだろうが。


 頭を振って邪な思考を追い出し。恐らくこのシェルターの本命である箱の中から出てきたガラスのような透明なケースに近づく。


 「!???????っ!」


 ケースの中を確認して流石のレンジも驚愕の表情を浮かべていた。


 箱に収められていたのは人間と見紛うばかりに精巧な造りをした人形だったからである。

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