第63話 ルーキー狩りの最後
◯【特攻隊士】シレン
「ハハハハハハハ!? グレンデルはランク8の魔物です。貴方が少々強かろうが、相手にさえなりません! 劣種風情が粋がるからこのようなことに成るんですよ」
先程までの雑魚臭丸出しから一変。ガウスは既に勝った気になっている。
(はぁ~。心底雑魚っぽいセリフだ。聞いてるこっちが恥ずかしくなる!?)
まだ戦ってもいないのに、すでに勝利を確信しているガウスに呆れてしまう。しかし、そう自信が持てるだけの威容───実力をグレンデルは持っている。
(体長は約5メートル。竜頭で二足歩行で手足の筋肉は隆起して幾つもの筋繊維を束ねたかのような強靭さを感じさせる。恐らく格闘もお手の物だろう。強大な力の塊を圧縮させたような威圧感があるね! 竜ってよりもワニを二足歩行にさせた感じだけどな!?)
肝心のグレンデルはコチラを睥睨している。まるで獲物を品定めをしているような感じだ。
俺としては思わぬ獲物に出くわした狩人の心境だ。ガウスがそれなりの従魔を所持しているのはスキルから予想していたが、これほどの従魔を所持しているとは露ほどにも思わなかった。
(精々が、ランク6程度だと思っていたからな。これは美味しいぜ! コイツを殺る前に、まずは邪魔者の始末だな!)
———グルデミスとの戦闘中に介入されると鬱陶しい。これがガウスに下した評価だ。脅威というよりも空気も読まず喚き散らすだけの鬱陶しい存在なのだろう。
この期に及んでもなお『瞬間装備』で装備を切り替えない馬鹿はさっさと始末する事にした。万が一、装備を切り替えて戦闘したら壊してしまう可能性がある。こいつらの装備は根こそぎ頂くことに決めている、壊すのは勿体ない。
(じゃあなっ!)
これ以上この馬鹿と付き合う気も無い。サッサと終わらせるに限る。
既に勝った気になっている馬鹿の背後から黒魔法『魔弾の射手』を発動。この魔法自体は何の攻撃力も無いが、この魔法はある意味で凶悪だ。
この魔法の効果は複数の魔法の発射台を創り出す。 事前に放つ魔法を設定し、MPを注ぎ込まないとただの置物の砲台と化す面倒な魔法だが。俺としてはかなりの好みの魔法だ。
それは何故か? まずこの魔法で放てるのは、黒魔法のみ。一度固定した砲口の向きを変えることが出来ないが、注いだMPが尽きない限りは何時でも任意で込めた魔法が放てるからだ。
つまりは相手から離れたところで創り出して待機させておけば不意を突き放題って寸法だ。
(今回は黒魔法『アイアンブレット』を込める。敢えて威力を抑える代わりに数を増やした鉄玉でハチの巣にしてやる!)
「ハハハハハハ! 怯えて声も出せませんか? さっきまでの威勢はどうしたのです? ちょっと優位に立ったからと調子に乗ったのが貴様の敗敗因だよ」
「その言葉をそっくりそのまま返すよ」
馬鹿に付き合うのも嫌になってきたが、コレで最後だ。冷めた態度でそう返してやった。
「ハ? なに余裕ぶってんだ? 不様に命乞いでもしたらどうだ? そうしたら俺の気も変わるか・・ブヒャッ! え、なガフッ!」
レンジの余裕の態度がお気に召さないようで、突っかかろうとしたが・・・・・それは出来なかった。
「ちょ、痛っ。やめ、ぎゃっ」
鋼鉄の弾丸が殺到し、ガウスの肉体を撃ち抜いて行く。敢えて大きさをBB弾程度にしてあるので、楽には死ねない。
「いた、痛い! おねが、やめ、やめて~」
先ほどまでの余裕は完全に消え失せ、惨めに命乞いをしているようだが。それでも弾丸の嵐は一向に止む気配がない、レンジとしても止める気も無い。
四つの砲口から射出される鋼鉄の散弾によって体を抉り取られ、瞬く間に原型を留めなくなったガウスを底冷えのする目で見ていたが、途切れることのない散弾によって直ぐに形さえも残らなくなり。後に残った肉片と血液のみがガウスを証明するモノとなった。
HPがゼロになったのを確認し、ガウスの残骸から目を離した。そして待っていてくれたのか、仁王立ちしているグレンデルに向き直る。
「待たせたな。それと主人を殺して済まなかったな? それじゃあ殺し合おうか?」
言葉が通じるかはわからんが、待っていてくれたからには相応の礼がいるだろう。別に返答は期待していないし!
『ふん! 喧嘩の妙味も楽しみも知らん下種がどうなろうと知ったことでは無い! 寧ろあの屑を殺して俺を開放してくれたことに感謝しているくらいだ。自分よりも弱い弱者にしか拳を向けられんゴミ共だったのでな!』
「え? あんた喋れるの? モンスターなのに?」
余りにも流暢に喋るので、驚きの余り聞いてしまった。
『ふん、失礼なことだ! 高位の魔物なら人語を解する程度の事は容易い。魔物が喋れん、などと言う考えは浅慮すぎよ!」
「確かにそうだな! 失礼したグレンデル殿。私は冒険者シレンと申す! いざ尋常ならざる戦いを所望する!?」
俺は闘気を全身に纏わせそう名乗りを上げた。対人ゲーム『戦鬼』において自分が認めた強者と戦う時はRPも兼ねて必ずこの名乗りを上げている。このグレンデルは俺が今まで戦った魔物の中で間違いなく最強だ。
それにあの屑どもと同じかと思ったが、強さに掛ける高潔さと気骨を感じた。名乗りを上げるにふさわしい猛者だ。 誰かに聞かれたら恥ずかしいが、幸いと言っていいのかクレアは既に退避してここにいない。
『フン! なかなか喧嘩の礼節が分かっているな! よかろう、我が真名は【グルデミス】。汝を強者と認めん。いざ、尋常ならざる戦いを所望する!』
二匹の強者はお互いに名乗りを上げると口角を吊り上げ戦意を滾らせた。
さっきまでの御遊びではない。強者同士の本当の闘いの幕が切って落とされた。




