第60話 ルーキー狩り
〇<猛獣の縄張り>
俺が一日体をしっかりと休めている間も、クレアは一人でレベリングを行い【魔女】をカンストしていたようだ。現在は回復魔法に特化した【司祭】に就いている。更には種族も『エレメントピクシー』なる種族に進化していたのには本当に驚いた。
(随分とレベルの上昇が速いな? まだ何か隠し要素でもあるのか?)
考えられるのは、マスクステータスなどの解析やカードに表示されない要素だ!
だがよく聞いたら、俺レンジが湿原に行ってる間も近隣で狩りをしていたそうだ。夜の戦闘は危険だと諭したが、元の種族のエルフ自体が夜目が効くらしく。それは進化しても変わらなかったようで安全を確保した上での行動と言われれば。 友達でも恋人でもない俺は、それ以上のことは言えない。
(自らが考えて行動しただけのことだ! 俺の考えを押し付けるのは良くないな!)
そう考え直し、それ以上の追求は控えることにする!
まぁ弱いよりは良いだろうと、それ以上言わなかったので仲違いすることは無かった。ただ『危険なのでなるべく誰かと一緒に行動するように!』とだけは伝えておいた。
(何やら嬉しそうだったのは謎だが・・・・俺に女心を理解する方が無理だな!)
(今後の検証で転移門の仕様を確認したいが・・・・・クールタイムご長過ぎなんだよな!)
まだクールタイムが終わっていないスキルについて思いを巡らせる。
「クレアはどこか行きたいところはないか?」
何もしないのも退屈だ! それに時間も惜しいので気を紛らわすためにも確認すると【猛獣の縄張り】に行きたいそうだ。
善は急げどばかりにクレアを伴い、猛獣の縄張りに足を延ばすことにする。
◆
◯<猛獣の縄張り>
「あの・・・すみません! 私が無理を言って連れてきて貰ったみたいで・・・・」
クレアはFランク冒険者に昇格したが、まだダンジョン探索は出来ない。しかし、Eランク冒険者に同行という形なら探索できる。
(確かにこのダンジョンを探索しても俺には余り利益はない!)
ハッキリ言わなくても、このダンジョンに俺の敵はいない。魔物を倒しても何のメリットも無いので、これまでの戦闘はもっぱらクレアに任せて補佐に回っていた。クレアはそれを気にしてるんだろう。
「うん? 確かに物質的には俺にそこまでメリットは無いな! だが地球とのダンジョンの比較などは役に立つはずだ。だから気にする必要はないぞ!」
これは嘘でも気安めでも無い! 本気でそう思っている。
「・・・・・・・・・ありがとうございます!」
口だけじゃなく、本心から言ってるのを理解したようだ。それだけ言うと、恥ずかしげに俯いてしまう。・・・・・なんでだ?
◆
アタックしてはや10時間が経過した。ボスとの戦闘を制して現在は27階まで到達している。
クレアは実質一人で戦闘を熟しているにもかかわらず、一切の弱音や文句も吐かずに平然としている。
(こういった弱音を吐かない点も高ポイントだ)
口にこそ出さないが、感心しながらクレアを見ている。
集団行動の中で、一人が文句をブ~垂れると周囲までそれが広がってしまう。 大変なのは皆同じだ! 同じ条件の中で自分だけがキツい、辛いと思うのは間違っているだろう(俺はボス以外はまともに戦闘してないので同じ条件ではないがな!?)。
(まぁその事は事前に伝えてあるし、クレアも納得済みなんだが! 端から見れば俺はお荷物に写るだろうな!)
勘違いするといけないので、事前にボス以外では戦闘をする気はないと伝えてある。クレアもここでの戦闘が俺に何のメリットがないのは理解しているため、この事を伝えた時も軽く頷くだけだった。
ただ全く何もしていないわけではない。『付与魔法』を常に更新して掛けているし、広範囲の索敵や結界での防御など補佐だけはきっちりとしている。端から見ると俺が女を一人で戦わせ、扱き使っているように見えるだろうけどな。
「クレア、一旦ここらで休憩しよう。MPもそろそろヤバい。MPが空の後衛はオトリか肉盾くらいしか使えんぞ?」
「わかりました。休憩前にMPポーションをいただけますか?」
「ほれ! あと付与魔法も更新しておく。それと何だか嫌な予感がする。休んで居ても頭の一部は緊張させておくようにな!」
「嫌な予感・・ですか?」
キョトンとした顔でクレアが不思議そうに訊ねてくる。
「ああ。何の根拠も無いが、この勘は外れたことが無い! この嫌な感じがした時は、振り返ってみても碌なことが無かった」
冗談と思われるといけないので、真剣な表情でそう伝える。レンジの真剣な表情からクレアも冗談の類ではないと思ったようでしっかりと頷いてくれた。素直で助かるよ!
(実際、この勘が働いたときは碌なことが無い。ガキの頃は母の死ぬ直前。その後は義弟の誕生に株の暴落、とかなりの回数だし。今までこの勘は俺を助けてくれた!)
この勘を俺は信じる。ダンジョンに入る前はそれほどでもなかったが、この階層に来てから特にその嫌な感じが強まった。 何かが起こる、それも自分たちにとって悪いことが起こる予兆の前触れだ。
◆
今回も悪いことに予感は正しかったようだ。焚き火を囲みながら休息していたら、直ぐにそれは起った。
「あれれ~! こんなところで休憩ですか? 僕たちも一緒に休ませて貰ってもいいですかね?」
陽気な声で近づいてきたのは3人。初心者に毛の生えたような装備を身に着けている(レンジたちも初心者装備みたいなものだが)竜人・獣人・エルフのトリオだった。
「ヒャハハ。俺たちも魔物との連戦で疲れちまってよ~。良いだろ?」
「ええ! 助け合うのが冒険者同士の縁というものです。厚かましいようですが、ご一緒させていただけますか?」
「は、はい。困った時はお互いさまと言いますからね」
クレアも人のよさそうな雰囲気を放っているトリオに警戒を緩めたようだ。
「ええ! 困ったときはお互い様です! どうぞ、大したもてなしも出来ませんがゆっくりなさって下さい!」
人好きのする笑顔でクレアに同意する。直ぐに三人組は焚き火のそばに腰を下ろしてくる。
だがレンジはこの3人に対して、一切の警戒を解かなかった!
◆◆
Name:ガウス
種族:竜人
JOB:【魔竜騎士】
LV:75 :合計475
HP:64983
MP:19475
SP(体力):7792
STR(筋力):6592
AGI(敏捷):2765
MAG(魔力):1948
VIT(耐久力):5350
DEX(器用):2348
LUC(幸運):562
〇アクティブスキル
・【瞬間装備LV:2】・【ブレスLV:3】・【竜魔法LV:3】・【暗黒魔法LV:2】
〇パッシブスキル
・【再生LV:3】・【腕力強化LV:5】・【炎熱耐性LV:4】・【麻痺耐性LV:4】【毒耐性LV:4】・【騎竜LV:4】・【竜強化LV:4】
〇武器スキル
・【竜葬衝破】・【五月雨突き】・【鉄壁】・【破壊爪】・【狂竜】・【猛竜槍】【シールドバースト】【昇龍脚】【不動鉄塊】・【激竜崩】・【竜水華】・【幻竜滑空】・【明鏡止水】
〇固有スキル
・【再生】
武器:【鋼鉄の槍】(7級)
頭 :【鋼鉄の兜】(7級)
体 :【鋼鉄の軽鎧】(7級)
腕 :【鋼鉄の籠手】(7級)
腰 :【鋼鉄のベルト】(7級)
脚 :【鋼鉄のグリーブ】(7級)
装飾:【幻惑の指輪】(4級):『ステータス・スキル隠蔽』
装飾:【身代わりのペンダント】(4級):『致命攻撃回避』
Name:ゼノ
種族:獣人(狼)
JOB:【轟獣拳士】
LV:43 :合計443
HP:46983
MP:7475
SP(体力):4792
STR(筋力):4421
AGI(敏捷):6565
MAG(魔力):397
VIT(耐久力):1564
DEX(器用):3768
LUC(幸運):512
〇アクティブスキル
【威圧LV:2】・【咆哮LV:4】・【瞬間装備LV:3】
〇パッシブスキル
【気配感知LV:6】・【気配遮断LV:5】・【猛毒耐性LV:2】・【麻痺耐性LV:5】・【敏捷強化LV:5】・【腕力強化LV:5】
〇武器スキル
【剛発勁】・【空破拳】・【超硬化】・【蹂躙爪】・【狂獣化】・【剛烈拳】・【円蹴輪】・【昇龍脚】・【不動鉄塊】・【威嚇咆哮】・【獣鬼憑依】・【虎伏瞬歩】・【明鏡止水】
〇固有スキル
【剛体】
武器:【鋼鉄のナックル】(7級)
頭 :【ねじり鉢巻き】(7級)
体 :【モンクの服】(7級)
腕 :【格闘の籠手】(7級)
腰 :【モンクのベルト(7級)】
脚 :【暗殺者の靴】(7級)
装飾:【幻惑の指輪】(4級):『ステータス・スキル隠蔽』
装飾:【身代わりのペンダント】(4級):『致命攻撃回避』
Name:エルンスト
種族:エルフ
JOB:【高位精霊術師】
LV:87 :合計487
HP:9785
MP:68974
SP(体力):1065
STR(筋力):673
AGI(敏捷):2001
MAG(魔力):9538
VIT(耐久力):807
DEX(器用):4768
LUC(幸運):912
〇アクティブスキル
【精霊魔法LV:7】・【結界LV:7】・【瞬間装備LV:3】・【黒魔法LV:7】・【付与魔法LV:3】
〇パッシブスキル
【魔力操作LV:6】・【無詠唱LV:6】・【魔法耐性LV:3】・【混乱耐性LV:5】・【沈黙耐性LV:5】・【魔力強化LV:5】・【MP回復速度上昇LV:2】・【並列起動LV:3】
〇武器スキル
【旋回返し】・【ダブルマジック】・【使役精霊解放】
〇固有スキル
【魔力解放】
武器:【魔術師の杖】(7級)
頭 :【魔術師の帽子】(7級)
体 :【魔術師のローブ】(7級)
腕 :【精霊のリストバンド】(7級)
脚 :【魔術師の靴】(7級)
装飾:【幻惑の指輪】(4級):『ステータス・スキル隠蔽』
装飾:【身代わりのペンダント】(4級):『致命攻撃回避』
◆◆
(ふん。こいつらやはり普通じゃない。恐らくこいつらが噂のルーキー狩りだ!)
表情こそ笑顔のままだが、体は臨戦態勢を取っていた。この連中が声を掛けてきた理由は一つしか思い浮かばないからだ!
(俺たちを獲物と見なしている! ここで俺達を殺すつもりだな!)
自分が感じた悪寒の原因がコイツらだと俺は確信した。そして戦闘は避けられない事もこの時点で悟っていた。




