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第57話 リベンジ


 〇<バリアン湿地帯>


 あれからクレアを拠点に送り届け。転移門を使ってバリアン湿地帯までやって来た。目当ては俺のレベル上げだ。そろそろ『聖騎士』をカンストさせておきたい。


 ・・・・・というのは建前で、本音はリベンジだ。 あのデカ蜘蛛『タイラントスパイダー』に、命からがら追い掛け回された恨みを俺は忘れていない。 あの時は正直に言って、運が良くて助かっただけ。死んでも何らおかしくなかった。


 今の俺ならば。ランク7のモンスターでも、戦えないことは無いはずだ。やられっぱなしは好きじゃない。あの時の借りを倍返しにしてやる。


(こちとら、あの時追いかけ回された恨みがある! それに、この場所はレベリングに有用だ。安定して討伐出来るように、力試しをやっとくのは理にかなっている!)

  

 他の人間が聞けば、総ツッコミしそうな思考だが。生憎とこの場所にはレンジしかいない。

 

 もう日が暮れているので真っ暗だ。でも幸いなことに《暗視》があるのでなんら不便はない。

この湿地帯は、夜になると霊魂がそこらかしこに漂って居る。それ故に、気の弱い人にはお勧めしない。ってか出来ない。


(この場所で写真撮ったら、ホラー大賞が狙えるぞ!)

 今も闇の向こうから顔が腐りかけた男女のカップルが手招きしている。つーか、襲い掛かってきやがった。


 男女のカップルの霊が皮切りとなり。周囲の霊魂も次々と襲い掛かってくる。


(はぁー! めんどくさっ!)

 今更、ランク2や1の魔物に気後れも手こずる筈も無い! サッサと済ませよう!


 そう考えると、俺は新調した聖剣を抜き放つ。その光景は戦闘ではなく蹂躙だった。


 ◆


 襲ってくるモンスターを返り討ちにして。湿地帯の中心部に向けて更に疾走する。途中で魔物に遭遇するが、今までは苦戦したランク6モンスターも。装備とステータスの向上によって苦戦もせずに討伐できた。


(【聖騎士】はアンデッドに有効だと思ったが。ここまでとは思わなかった!)

 思わず、感嘆するように呟いてしまう。それ程聖属性の攻撃はアンデッドに有効だった。


 特に『聖剣・エクスレヴァン』は、この地のアンデッドを一発で浄化してくれる。しぶといのが売りのアンデッドが、この剣で斬り付けると・・・・・たちどころに消滅する。


(弱点を効果的に突くためにも。今後は装備面にも力を入れよう!)

 弱点を突く有効性を再認識すると。そう決心した!


 レンジ自身も、軽んじていたつもりはなかったが、今後は装備の更新も積極的に行うべきだろう。MMOだと、金策が出来ればすぐに装備を購入していた。


 だが、やはり現実だと貧乏性が顔を出してしまうようだ。 装備関連は命に直結する。惜しまずどんどんと金を放り込むべきだろう。


「オォォオオォオオッ!!」


 前方から恨めしげな叫びが響いてきたので目を向けたら、腐った蜥蜴のような生き物がこちらを見ていた。 ここからでも凄い腐敗臭が匂ってくる。そのためか、肉は腐り落ち。骨までむき出しになっている個所も少なくない。 


(あのモンスターは初見だな! どれどれ!)


 ◆◆

〇ドラゴンゾンビ


 死んで腐りかけた竜の死骸が怨念によって蘇ったモノ。

動きが鈍く体も脆いが、痛覚が無く。無尽蔵の体力を持つ上に力も強い。鋼鉄さえも、瞬時に腐敗させる広範囲のブレス。複数の状態異常を発生させる攻撃が特に恐れられている。


(たしか前にギルド長が言ってたランク7のモンスターだったか? 確かに力は強いが、敏捷が無さすぎる。 聖剣の効力もあるし充分イケるはずだ!)


 剣を抜き放ち、最初の牽制に神聖魔法『浄化之炎』を放つと一気に距離を詰めた。不浄なるアンデッドを消し去る浄化の炎が敵に当たると。腐り果てた肉体が浄化され体に纏わりついていた瘴気と怨念が消えていく。 


『GUOOOOOO!』

 余りの痛みに絶叫を上げるが、まだ死んではいないようだ。 

ボロボロの体を何とか維持し、レンジに憎悪の籠った目を向け、口からブレスを放ってくる。


(アンデッドのしぶとさは脅威だな! 首をはねても、完全に消滅するまでは気を抜かないようにしないとな!)

 少しの油断が死に繋がるのは、嫌って程に身に染みている。死に体でありながら、レンジを殺す気のドラゴンゾンビを見て冷静に対処を開始する。


 地面を溶かしながら向かってくるブレスを上空に飛び上がることで回避し。

空中を蹴って加速して相手に肉薄。一息で5連撃を与える『五月雨斬り』を発動する。


 聖剣の持つ聖属性と浄化の能力により、ドラゴンゾンビが意地で保っていた体が崩れ落ちていく。

しかし、まだ残った頭部だけをこちらに向けると、大口を開けて飛び掛かってきた。


(首だけでよくそんな器用なことが出来るな? つーかどうやって首だけでロケットみたいに突っ込んで来れるんだ?)

 明らかに運動エネルギーの法則がおかしい! 魔法なんてモンが存在する世界で、今更過ぎるが!


 そんなどうでもいいことを考えつつも。迎撃のための魔法を組み上げる。

無数の尖った骸骨の壁を創り出す死霊魔法『骸骨壁』を3重で発動。


 突然現れた壁にもお構いなしに突っ込み、敵の命を刈り取ろうとする。 しかし一枚、二枚と壁が破られていくが。 その度に首の速度と威力が落ち、骨の鋭利な部分が突き刺さり、傷だらけになっていく。


 あと少しで三枚目の壁を突破されるところであったが。壁の半ば程で完全にスピードが殺され、骨の中に埋まってしまった。


 すかさず、神聖魔法『聖炎』で焼き払う。 不浄なる魔物を、跡形もなく浄化する聖なる炎の光が治まった時には。ドラゴンゾンビの存在を示すものは、ドロップアイテムと魔玉の欠片だけになっていた。


(この聖剣のおかげでアンデッドは多少格上でも、対応可能と見てもいいだろう! それにクレアの進化先を確保するための検証も必要だ。 多少格下でも魔玉を手に入れるために積極的に討伐するべきだな!)


 本来の魔玉の使い道は装備にスキルを付与するための触媒なのだが。生憎と信用できる付与師も錬金術師もいないレンジには、進化のためのリソースに過ぎない。


 ◆


(結果的にジーニアスに進化したのは大正解だったな。 どれも普通なら喉から手が出るほど欲しい能力ばかりだし! ただ俺の種族やスキルが知られると。 どっちの世界でも不味いだろう。下手したらいいように扱われるか、討伐対象に上がりかねない!)

 自分が異物であることを再認識する。


 今後の動き、特にスキルの隠蔽に関しては。特に気を遣おうと心に決め、リベンジ相手を探すべく湿原を駆け回った。


 2時間ほど襲ってくるモンスターを返り討ちにして湿原を探索していると、お目当ての相手と遭遇する。 相手もレンジに気付いているようで、好戦的にカチカチと牙を鳴らして威嚇している。


「よう! 先日は世話になったな? お礼参りに参上したぜ! 詰まらんもんだが・・・・・受け取ってくれやっ!!」

 言葉こそ軽いが、放たれる魔法は決して軽くない!


 言うが早いか、黒魔法『紅炎光線』を放つ。1万℃以上の熱量を圧縮した光線が、タイラントスパイダーの胴体をブチ抜き致命傷を与える。続けざまに暗黒魔法『飢餓庭園』を発動。負のエネルギーを内包した空間が、蜘蛛を覆いつくした瞬間、瞬く間に体力を奪い取る。


 タイラントスパイダーの巨体がグラリト傾く。しかし、意地を見せているのか目から光線を放ってくる。


(以前スキル欄にあった≪破壊光線≫だな! 威力はありそうだが・・・・・狙いが甘いぜ!)

 本来この手のスキルは、体勢を崩してから使用するのが常道だ。しかも、バランスを崩しているせいか、狙いがかなり甘い。距離もあったため、ちょっと横にズレるだけで、簡単に回避できる。


(まだまだ、こっちが本命なんだよ!)

 進化によって得たスキル≪詠唱破棄≫は魔法を即座に発動するナイスなスキルだ。それにより、魔法発動における手間は大幅に短縮された。


 止めとばかりに使用する魔法は。黒魔法『硫酸奔流』(アシッドストリーム)だ。その名の通り、濃硫酸が奔流となり襲い掛かることで、敵を跡形もなく溶解する恐るべき魔法だ。

  

 黒魔法『硫酸奔流』が発動し、酸が濁流にようにうねりを上げてタイラントスパイダーに襲い掛かる。避けようと藻掻くが、身体に大穴が空き。体力を奪い取られた状態ではそれさえも儘ならない。

 濃硫酸が触れた部位をドンドンと溶かしていく。


『PIIIIIIIIIIIIII!!!』

 肉体が徐々に解けていく激痛に、言葉にならない金切り声を上げる! それでも硫酸は更に肉体を溶かしていく・・・・・・・・。

 

 魔法の効果時間が終了した時、タイラントスパイダーの身体は半分以上が崩れ去っていた。 


「PYUKIIIIIII!!!」


 体の半分以上が消え去っても、流石はランク7モンスター。 こちらに、今まで身を挺して守っていた子蜘蛛を嗾けてくる(子蜘蛛と言っても体長1メートルは超えているが)。


 1メートルある子蜘蛛が30匹以上も自分に向かって襲ってくる光景は。蟲が嫌いなら卒倒しそうなもんだが、生憎とこちとら群れ成して襲ってくるのはゾンビから蟲に猛獣、果ては宇宙戦艦に至るまで。そんな光景には慣れ切っているので、どうってこたー無い。ゲームでの事だけど!


(おそらく最後の抵抗だ。あれだけ肉体が損傷していたら、そう持たないはずだ!) 

 逃げ回って時間を稼ぐだけでも勝利は確実だが。それは選ばない! 

 

  時空魔法『ディメンション(空間収納)』から魔剣を取り出す。 右手に魔剣。、左手に聖剣。 俺が最も得意とする二刀流で子蜘蛛共を迎え撃つ。


「ハハハハ! 多対一なんて、こちとら慣れ切ってんだよ!」

 今にも飛び掛からんとする子蜘蛛を前にそう吼え。両手に持つ二振りの業物に、魔力を流し込み。しっかりと握りしめる!


 『魔剣解放』・『聖剣解放』を使用し、その剣に秘められた力を解き放つ。 魔剣からは唸り声が聞こえ刀身に闇が纏わりつき、聖剣は光り輝き、聖なるオーラが増した。


 飛び掛かってくる敵を、自分を軸にして旋回することで全方位に対応できる【聖流旋斬】によって切り裂き。 兄弟?が斬られたことで、退却を開始した残った子蜘蛛を周囲の怨念を吸収。怨念をエネルギーに変換し、前方に向けて放つ【髑髏呪怨斬】で残った子蜘蛛を一掃した。


 【髑髏呪怨斬】は吸収した怨念が多い程に威力が増す。ここはアンデッドの巣窟と言っていい程に怨念が漂っている。そのせいか、子蜘蛛を消し飛ばすだけのつもりだったが。漆黒の怨念破は子蜘蛛を蹴散らすだけでは止まらず、満身創痍のタイラントスパイダーにぶち当たると。傷口から体内に侵入し、体中を紫色に汚染したと思ったら・・・・・今度は内側からドンドン膨張し始めた。


 嫌な予感がしたので、素早く飛び退くと。 やはりというか内部に溜まった怨念が大爆発を起こした。


 それなりに距離を取っていたが、外殻や体液が降り注いできたので。球形の結界を創り出すと、降り注いできた残骸を弾いた。 


(リベンジは無事に成功したので喜ぶべきなんだろうが・・・・・余りにも呆気なさすぎて、喜びが湧いてこないな。 ランク7を相手取るには、合計レベル400以上が最低ラインだと聞いていたが。今の俺の合計レベルは350だ。 これも異形種の恩恵か? 情報が無さすぎる、比較するにしてもクレアはまだレベルが低いし。地球では、50に達している奴がいるのかどうかも怪しいところだ。 いや、弱いよりは良い・・・・・・・・今はそう思っておこう!)

 苦戦したり、伸び悩んでいるわけじゃない! 楽勝なのは、むしろ良い事だと思い直して思考を打ち切る。


 高ランクダンジョンには、このクラス猛者が群れを成して湧き出すらしい。強い分には何の問題も無い。むしろ調子に乗りすぎだ! 気を引き締めないと痛い目を見ると戒めておく。


 以前はタイラントスパイダーに追い回されたので、探索は途中で中断せざるを得なかったが。今回はまだまだ余裕がある。 ギルド長が言っていたが、この湿地帯は過去の出来事が原因で近づく者もほとんど居ない。だがそれ故に、未発見のお宝が出る可能性は高いらしい。


(誰の手も入っていない未探索区域だ。危険地帯といっても心が躍るぜ!)


 ゲーマーは未発見・ユニーク・レアと言う言葉の羅列に弱い。 それにアダマンタイトなどのレア鉱石が見つかれば、今後の探索を有利に進められるという打算もある。 現にタイラントスパイダーを始めとするモンスターを相手に、有利に立ち回れるのは装備のおかげという面も大きい。


 『今後の役に立つ』という大義名分で自分を納得させると、俺は再び探索を開始した。

以前来たときにも感じた『この地には何かある』という勘は正しかったようだ。中心地に向かって探索を進める内にそれは確信に変わっていった。 中心に進むにつれて濃くなる瘴気と怨念が、その確信をより深めている。 


 探索から7時間後、あと数時間で朝日が昇る時間帯に()()は見つかった。

頭部だけでも、タイラントスパイダーの倍近くある白骨化した龍の頭部。 口が大きく開き中に入る道が見える。そしてレンジの勘は確信へと変わった・・・・・・恐らくこれは新発見の【ダンジョン】だと。


 朽ちてなおその圧倒的な威容を見せつける姿を見て、俺はそう確信する。

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[一言] 最後の大罪ダンジョンですかね?
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