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第55話 冒険者登録とトラブル


 おっちゃんから装備を受け取ると。直ぐに冒険者ギルドに足を運んだ。

 

 ギルドの中に入ると一斉に視線が集まるが。それを無視して受付カウンターに並ぶ。周囲には、依頼帰りの冒険者がそれなりにいるが。皆遠巻きに見ているだけで、絡んでくるようなことは無かった。


(新調した装備を身に付けてこなくて正解だったぜ!)

 自分たち───正確にはクレアに注がれる視線を感じ取り。心中でそう呟いた。


 レンジが身に付けている装備は、先ほど受け取った物では無い! その理由は余りにランクに見合わない装備をしていると。難癖を付けて絡まれると思い至ったからだ!


 それ程までに新調した装備は、駆け出し風情が所持するのは不相応な品々なのだ! 


 レンジはゲーム内での経験から。強力な装備は人目を引き、妬みの対象となることを、嫌というほど理解している。それ故に悪目立ちしないよう、新装備はアイテムボックスに仕舞ってある。


 現在の装備は、ルーキーの普通よりも少し上程度のランクだ。この装備なら悪目立ちはしないのだろう、とタカを括っていたが。クレアを──美女を連れている時点で目立つのは避けられない!


 ボッチ・・・・ソロ専門だった故に、その事に気が回らなかったレンジの落ち度といえる。


(先ほどから野郎限定でチラチラとこちらを窺っているな!)

 先ほどから向けられている視線の意味を感じ取り。レンジは自分の失策を悟った。


(クレアのような美人を、俺が連れていること自体が悪目立ちに繋がると気付くべきだったよ!)

 自分の迂闊に自己嫌悪していた。少し考えれば簡単に判ることだから落ち込むのも無理はない! また面倒事が起こりそうな予感・・・・というより確信がある!


 野郎だけじゃなく、女性も少数ではあるが。熱い眼差しでコチラを、というよりクレアを窺っている。そういった性癖の方々だろう。趣味は人それぞれだ。他人の俺があーだこーだと云う気も無い。ゲームじゃネカマやネナベなんざ、そこらかしこにいるしな!


(だがこの視線は、気分のいいもんじゃない!)


 クレアは好意的な視線だが、レンジには妬みの篭もった視線や悪意の視線をビンビン寄せられている。その証拠に、悪意感知が反応しっぱなしだ!


 ハッキリ言って鬱陶しい。直接的な行動をしない限り・・・無視する。 ポーカーフェイスを作り、ジッと待っていると。順番が回って来た。


 先に俺の買取りを済ませる。カウンターの上に、地球で手に入れた素材や魔道具を置き。受付嬢に査定をお願いする。


 「すみません。こちらの買取りを先にお願いします。あと彼女は私の連れで、冒険者登録の準備をお願いします」


 「かしこまりました。では査定を始めます。それとコチラに登録用紙を置いておきます。ご記入をお願いします!」

 棚から登録用紙を取ってきて、こちらに差し出してくる。


 クレアが用紙に記入し始めたのを確認すると。受付嬢・エイダ嬢は査定を始めた。 この受付嬢もかなりの強者だ。解析を掛けると【結界王】なるジョブに就いていた。


 (恐らくはトップジョブだろう? この女性も、現状では俺よりも強い。 それにトップジョブは、最後に『王』が付くのが多いのか? 『墜天騎士』のようなのは例外なのかな? それ以前に、女性に王ってどうなんだよ!)


 どうでも佳いことを考えつつも。俺はこれからの動きについて考え始めた。


 (まずは、コチラのDランクダンジョン調査から手を付けるべきだ。地球と同程度の難易度ならクレアを連れて行ってレベル上げを行うことも出来る。 確かこの地のDランクダンジョンは・・・・・【猛獣の縄張り】だったか? スキルの検証もしたいし、転移門を開く場所として、この街にも拠点が欲しい。 格安でいいので、一軒家の購入も視野に入れるべきだな!)


 いきなり街中に転移してきたら、怪しい事この上なしだ。 それに長期的に見れば。いつまでも宿屋暮らしをするよりも、マイホーム購入の方が安上がりだ。 

 

(ギルドは色々な商売に手を出しているそうだし。家なども購入出来るか、ちょっと聞いてみるか?)

 この場で行うべき事、これからのことを。一つずつ整理していく。


(あのゴブキング以来、クエストが発生しない。アレで打ち止めか?)

 自分でも、あり得ないとは思うが。一応は、考えてみる。


(恐らくそれは無いはずだ。高難度のクエスト完遂なら兎も角。あの程度の難易度が最後とは考えにくい!)

 まぁそうだな! 難易度Sならばともかく、D程度で終わりとは考えづらい。


「コチラが今回の査定金額となります。どうぞご確認ください」

 気が付いたら査定は終わっていたようで。声を掛けられるまで、気付かなかった。慌てて紙を受け取り、ザッと目を通す。


 渡された紙に書いてあった査定額は・・・1500万ディム。以前聞いた。この世界の一般的な月収は25~30万ディムほどらしい。 一番数の多い冒険者───Dランク冒険者の平均月収は200万から300万。


(一般人に比べて、如何に冒険者が稼ぐのかがよくわかる)

 だが、俺は丸儲けじゃないことも理解していた。


 大金を手に入れても、次回の冒険に備え。装備や備品などの購入がある。大金を手に入れたからって、調子に乗って散財すると身を崩すことになる。 余談だが。お宝を手に入れた冒険者が、次の日には無一文になっていた。なんて話は幾らでもあるようだ。


 ◆


「すみません。ギルドは不動産関係も扱っていると伺いました。安くてもいいので、一軒家を購入したいのですが。いくつか物件を見繕っていただけませんか?」

 『この金額なら頭金にはなる』と考えて、そう切り出した。


「それでは、幾つかの物件を見繕わせていただきます。もう少々お待ちください」


 そう言って別の棚から資料らしきものを何枚か持って来た。


「どうぞご確認ください」


 渡された資料を見てると。どれも今の俺の手持ちで十分払えるうえに、立地条件や間取りも悪くなかった。


 高物件が何件もあったので。最初は詐欺の類かと疑ったが、直ぐにギルドが信用を失う不良物件を販売するなど馬鹿な真似をするわけないと思い直した。不良物件を扱い購入者が騒ぎ立てればそれは瞬く間に広まり先人が築き上げてきた信用が失われるからだ。


(どれも資料で見る限り、悪くないが・・・・コレに決めた!)

 俺が選んだのは街の外壁の外れにある一軒家だ。造りがしっかりとしていて、広さもそこそこあるようだ。この家をこの世界の拠点にしよう。俺の望む最低条件『人目に付かずに地球への転移が出来ること』さえ満たしていれば、それ以外は必要以上に拘る気も無い。ただ念のために確認だけはしておこう。


「この物件は何か問題などはありますか? 随分と良い物件のわりにお値段が安いようですが?」


「いえ特にございません。この物件の前の持ち主は商人の方だったのですが、諸事情から急遽まとまったお金が必要になり新築したばかりのこの物件を手放す事態になりました。私が担当でしたから間違いございません。それに契約を交わしても7日以内でしたらその契約を破棄することも可能です。この際のペナルティーなどは特にございません、ただ物件に何らかの損傷があった場合は修繕費を払っていただきます」


(なるほど! この世界にもクーリングオフがあったのか。なら問題はないな、物件に不備があって気に入らなかったら契約を破棄すればいいだけだしな。まあ雨風と人目を避けられればそうそう文句など無いけど)

 

 そう考えて渡された書類の内容を確認して購入手続きや、権利の移譲などを記載している内に。クレアの冒険者登録も終わったようだ。今は、ちょうど俺の時も受けた。冒険者の簡単な説明を受けていたようだ。


 説明を聞き終えると。俺の方に駆け寄ってくる。待たせたことを気にしているのか。随分と申し訳なさそうな表情だ。


「じゃあ行こうか?」

 

「は、はい「おい、ちょっと待てよ!」」


 クレアを促して出口に向かおうとしたが。そこに、待ったがかかる。


 クレアは声の方に振り返ろうとしたが。俺は無視を決め込み、出口へと向かった。俺の行動に戸惑っているようだったが。クレアは直ぐに俺に付いてきてくれた。


(ちっ! ヤッパリ絡んできたか!)

 このギルドに入ってから、ずっと敵意のある視線を送ってきた者がいた。


(面倒事は御免だってのに! 嫌な勘ばかり当たるよ)

 この声の主は分かっている。最初に素材を持ちこんだ時に絡んできたガキどもだ。絡んでくる内容も、大体想像がつく。興味どころか、関わる気さえなかった。


 声を掛けられても、一向に取り合わず。出口に向かう。


「お、おい。待てって言ってんだろっっ!」


 俺は大げさにため息をつくと。仕方がない、相手をしてやることにした。だが、連中のペースに付き合う気は無い!


「『今度はどうやって卑怯なことをして素材を手に入れたんだ?』それとも『お姉さん、そいつは詐欺師だよ。騙されない方が良いんじゃないの?』と言ったところかな? 君たちが言いたいことは!」


 機先を制して俺がそう告げると。ギクっとした表情を浮かべた。どうやら図星のようだ。この手の連中の考えなど大体一緒! 実に浅はかといえる。


「君たちが、私をどう思おうが知ったことでは無い。だが公衆の面前で、人を罵倒するからには明確な根拠や証拠があっての事だろうね? 『俺たちでも手に入れられ無い素材だから。ルーキーに手に入れるのは無理だ!』などと言うのは止めてくれよ?」

 この手の手合いは調子に乗せると面倒だ。先手を打って機先を制すに限る!


「はん。大方<バリアン湿地帯>では上手く誤魔化したんだろ? 冒険者になりたての奴が、あの場所に行って。無事に帰ってこられる訳がないっ!」

 図星を突かれて恥ずかしいのか。真っ赤になって捲し立ててくる! 唾が飛んできて実にウザい!


(まったく、後先考えん馬鹿はこれだから嫌なんだよ!)

 内心で溜息をつくと、億劫だが付き合ってやろう。ほっとくともっと面倒な事が起きそうだしな!


「私はキチンとバリアン湿地帯で討伐を行った。そのことは。ギルド長に受付嬢も同行し、確認しているはずだが? ギルドからも私の不正疑惑についての取り消しと、謝罪を受け取っている。事実から目を逸らし、難癖を付けるのは止めた方がいい!」

 俺が言ってるのは事実だ。ガキどもの言葉は言い掛かりに過ぎない。


 ド正論に、プルプルと震えて俯いていたが。今更引けないのか、顔を真っ赤にしながら・・・・言ってはならない一言を口に出してしまう。


「ど、どうせギルド長たちに、か、金を渡して誤魔化したんだろ? て、テメーみたいなお、おっさんが大成できるほど、ぼ、冒険者はあ、甘くねーんだよ、か、カスがっ!?」

 ドモリながらのバカでかい声がギルド全体に響き渡った。それと同時にガキどもに向けて、周囲から殺気が叩きつけられる。


 『面倒なことになった!』と、内心で顔を顰めて呟きつつも。仕方がないので事態の収拾にかかった。


「口を慎めよ。クソガキがっっ!」

 顔に怒りの形相を浮かべながら、ガキどもを鋭く睨み付ける。更に、周囲の殺気を上回る殺気を。ギルド全体に対して叩きつけた。


 俺はこちらを窺っている連中を一睨みすると。ガキ共に向き直り口を開く。


「俺が大成できない? そんなことがお前らにわかるのか? お前らは、人にモノを諭せるほど立派な人間か? ああ? 何とか言ってみろや?」

 口調さえ乱暴なものに切り替え。怒鳴り付けるように詰問をする。


 ガキどもは、殺気に当てられて声を出すどころか。床にへたり込んでしまった。周囲も俺の鬼気に当てられたのか、沈黙を保っている。その光景を見て軽く鼻を鳴らす。


「ギルド長に賄賂を渡す? 馬鹿かお前ら? いや馬鹿なんだろうな。仮にそんなことが明るみに出たら・・・・・ギルト長は破滅だぞ。それにSランク目前と言われた人が。俺が渡す程度の金で・・・・・そんなリスクを取るはずが無い」


 Aランク冒険者の稼ぎは、大店の売り上げに匹敵する。贅沢をしても、一生遊んで暮らせるほど稼ぐ者が。はした金で不正をするメリットはまったくない! それ以前に、ギルド関係者はそんなこと出来ない!


「少し調べれば判ることだが。そもそもギルト職員は、不正や汚職が出来ないように誓約魔法が掛けられている!」

 

 ガキ共は、『そんなの知らなかった』とばかりに呆然としている。その姿は見る者によっては憐れみを誘うが、俺は同情しない! この事は別に秘匿事項でもない・・・・・情報を軽んじた結果の自業自得だ。


 周囲にも驚いてる連中がいるのには、流石に呆れてしまうがね!


 周囲の激してる冒険者たちを指で示しながら、更に言葉を続ける。

 

「周りを見てみろ。この人たちが何故怒ってるか理解できるか? お前らがギルド長を貶め侮辱したから怒ってんだ。周囲はギルド長を貶める発言をしたお前らにお冠だ。当然だな。たかがDランク冒険者が頭に元が付くとは言え。Aランク冒険者を辱めた。自分たちの目指す高みを貶めた。腹が立って当然。怒って当然だな!」

 周囲を持ち上げるが・・・・・これは嘘だ。この方が茶番を手っ取り早く終わらせられるからそうしたまでだ。


 本当は違う理由がある。ここでは告げないし、触れる気さえ無い! この連中————ギルド長を侮辱した発言に怒った・・・・・フリをしている連中の本音。『ギルドの心象を悪くしたくない!』って本当の理由には・・・・な。


(こいつらが怒ってるのは、所詮は表面上————点数稼ぎに過ぎん!)

 内心の呆れを一切見せないマジメくさった顔で、そう断じる。


 ギルド長を貶める者に対し、怒るポーズを見せることで。ギルド内での自分の評価を上げたいだけ。まぁ無駄だろうけどな! その証拠にこの茶番を見ているエイダ嬢の目はメッチャ冷たい! この茶番————連中のポーズに気付いている証拠だ!


(本当に評価を上げたいなら。誰もが認める実績を作ればいいだけだ! こんな茶番を利用すりゃ、却って心証も悪くなるに決まってる!)

 その程度も思い至れぬ低俗輩と酷評を下す。それを持ち上げ利用しているレンジも似たようなモノかもしれないが・・・・・・・・。


 さっきからガキ共は助けを求めるがごとく、キョロキョロと周囲を見ているが。誰も助け船を出さない。


 今更、自分たちが感情に任せて何をしたのか理解ができたようだ。ベソをかいたと思ったら・・・泣き出してしまった。・・・・・まったく、おせーんだよ。


「今後どうするか知らんが、相応の覚悟はしておくんだな! お前らの発言は、このギルドに居た職員に冒険者・・・・・この場の全員が聞いている。当分の間は、職員の塩対応や同業者の蔑みの視線は避けられんぞ!」


 レンジの言葉を聞き終えると、ガキ共はうな垂れ。ヘナヘナと床に崩れ落ちてしまった。


 その姿を見てもう用は無しとばかりに、レンジは出口に向かって歩き出す。すぐさまクレアも付いてきた。ガキどもはへたり込んだままだ。その情けない姿を見て、振り返ると目も合わさずに言葉を掛けた。


「俺が気に『食わん、むかつく!』そう思うのは勝手だ、お前らの好きにしろ。だがもし次があるなら・・・・もう少し考えてから行動することだ。俺に突っかかりさえしなければ、いやギルド長に対して暴言を吐かなければ大事にはならなかった!」

 


 レンジの言葉は厳しい。だが、その本質は優しい! 解りにくいが、レンジはガキ共の感情だけは肯定・・・・は言いすぎだが、理解しているのだ! 気に喰わない奴に突っかかる気持ち自体はだが。


それ以前に、レンジが他人にアドバイスをするなど滅多に無いことだ! 同情は───あり得ないのでただの気紛れだろうが。


「ひょっとしたら。お前らに味方してくれる者もいたかもしれんな。それなのにお前たちは感情で行動して引き際を誤った」


 今更だがギルド長の暴言さえ無ければ、ガキ共に同調した者はいたはずだ。レンジを良く思ってない者は────新米の分際で、ギルド長に認められたことを妬む者はそれなりにいる。


「この結果はお前らの自業自得、身から出た錆だ。今日の出来事を反省して次に生かすのも、自らを行いを顧みず他者に憤りをぶつけるも・・・・お前ら次第だ! お前らの好きにしな!」


  ギルドから出る前に入り口で立ち止まり。それだけを言い残した。今後どうするかはガキども次第だろう。

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[気になる点] 第55話 冒険者登録とトラブル > 直ぐにギルドが信用を失う不良物件馬鹿な真似をするわけないと思い直した。 ここの文章がおかしいです。 [一言] 家の下見もせずに買うなんて 随分…
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