第52話 戦利品
〇地下大広間 【聖騎士】志波蓮二
昨日は帰ってきた時間も遅かったし、流石に疲れていたので風呂に入ってすぐに休んだ。
それから一夜明け。あれから一言も話さなくなったクレアを連れて、地下までやって来る。
(別に追い詰めたいわけでもないし。答えが出るまでは、この家で生活すればいいとも伝えておいた。後はクレア次第だろうさね)
俺の考えは包み隠さず伝えた。後の決断はクレア自身の問題だ。俺の意見や感情などに縛られず、シッカリと自分の意志で決断してほしい。
ダンジョンに関する事は全てこの地下の広間で行う・・・・それが俺が決めたルールだ。地上で魔法を使って、万が一のことがあれば言い訳が難しいからな! クレアには魔力を扱う練習をしておいた方が良いと伝えておいた。やるもやらぬもクレア次第だが、魔力の残滓のようなモノが一夜明けても漂って居る事からも、ここで真面目に鍛錬を積んでいたようだ。この残滓から推測するに相当真面目に練習していたんだろう。
(これだけ真面目にやってるなら・・・・・異世界に連れて行くのも良いかもしれないな!)
表面には出さないようにクレアの努力を評価する。今の俺にやる気も無い者に時間を割く余裕は無い。だがキチンと頑張るなら最低限の助力はするべきだろう!
そうと決まれば俺は早速アイテムボックスから、クレアに送るつもりだった戦利品を渡した。
取り出したのは『魔術師シリーズ』。スキルも付与してあるし、取り敢えずの間に合わせには使えるだろう。
「昨日ダンジョン探索で手に入った装備だ。取り敢えずはこれを装備してくれ。魔法に関するスキルが付いてるから役立つはずだ」
「あ、ありがとうございます」
顔を真っ赤にして、蚊の鳴くような声でお礼を言われた。・・・・気にせずに話を進めよう。
クレアは早速装備がしたいようだったので。俺は後ろを向いておくことにする。断じて振り返る気も、こっそり覗く気も無い。・・・・・そう、断じてない!
「お、お待たせしました。もう振り向いても大丈夫です!」
その言葉に振り向くと。着心地に違和感がないかを確認するように手振りで促した。
装備した姿を見ると、如何にも【魔女のコスプレ】といった雰囲気だが。途轍もなくプロポーションがいいので非常に目のやり場に困る。 まったく・・・・・・・けしからんっ!
(クレアの装備はとりあえずこれでイイだろう! さて、お次は戦利品の確認だ!)
ドタバタしていたせいで確認もせずにアイテムボックスに放り込んだ戦利品の数々を取り出す。素材から魔道具まで合わせればかなりの量になる。たちまち床一杯に広がった。・・・・・それを目を丸くして見ているクレアが、どうにもおかしい。
しかし戦利品を見ても、地球で換金すれば一財産でも俺みたいな冴えない奴が換金するために持って行ったら一発で怪しまれる。当分はここに置いておくべきだろう。
種類ごとに仕分けを行い、そうして出来上がった戦利品の山を見ながらそう判断する。
異世界に持って行ってギルドで換金しても此方では異世界の通貨なぞ使えない。半分だけあちらに持って行って、ディムに換金しておくべきだな。装備や魔道具を購入するなら、あちらの方が数段上だしな。
(さて、戦利品に解析を掛けてみますかね。結構気になっていたから楽しみだ)
この瞬間がある意味でダンジョン探索の醍醐味と言えるだろう!)
◆◆
〇『適性ジョブ診断リスト』
自身の適性やジョブの適性を診断し、診断者に合ったジョブをリストアップしてくれる。
ただし、条件が失伝・または一人も該当者がいないジョブはリストに反映されない。
(神アイテムじゃん。これは使えるなんてもんじゃねぇ。ラッキーだったな)
思わぬ収穫に顔が綻びそうになる。これはイイモノだ!
〇【錬金工房】
錬金術師や魔道具職人が魔道具作成や錬金術を行うための工房。場所決めて紙に魔力を流せば設置できる。稼働させるには魔玉の欠片かそれに代わる高魔力の動力が必要。
(凄いんだろうが・・・・・知り合いに、錬金術師も道具職人もいないし。此処に俺とクレア以外の人を入れる予定も今のところは無い。・・・・・・現状じゃ産廃だろうな)
現状では無用の長物だが、将来的には分からない。取り敢えずは大切に保管しておくようにする。
〇【超小型魔力コア】
【始原文明】と呼ばれし一大文明を作り上げ、名工と謳われる存在【ジュリアス・クラフトマン】が晩年に創り上げた。永久魔力製造機関・・・・・の超小型版。【■■■】と命名されし、彼の傑作の動力として搭載された。高性能だが製造コストが途轍もなく高いため、創られたのは極僅かである。
(明らかにヤバそうな匂いのプンプンするフレーバーテキストですこと。・・・・ひょっとして、あのガーゴイルがやたらと強かったのは。コレが特典で付いてきたからか? 【■■■】はよくわからんが。とんでもないモンに搭載されていたようだな? 現状使い道は無いのでこれも産廃だが)
どれだけ凄かろうが、使い道が無ければ産廃と変わらん。これも暫くはアイテムボックスの肥やしだな!
(まぁ考察は全部確認してからにしよう。それでは次だ!)
残りもわずかだ、ちゃっちゃと行こう。
トレジャーボックスの中身はこうなっていた。
〇魔法のブラシ(5級):髪を梳くと潤いと艶が出る。
〇匂い袋(5級):ストレスを緩和させる芳香を放つ。
〇金のインゴット1㎏×5個
〇ダマスカス鋼のインゴット1㎏×5個
〇妖精のピアス(5級):魅了耐性
(・・・・攻略報酬が凄いのは・・・・・条件さえ揃えば途轍もなく有用なのは、何となくだが分かる。だが現状ではトレジャーボックスの中身の方が有用だ。シナリオ後半のアイテムを先に貰ってヤキモキしたような感じだぜ)
物語の最終ステージで使うアイテムを序盤で手に入れた気分がする。この手のシナリオはロープレの定番だが、・・・・・・その後の展開が怒涛すぎて、初期の事なんて結構忘れがちになるんだよな!
それに【始原文明】? 【神代文明】じゃ無くて? 新情報に頭がパンクしそうだ。
情報の整理も出来てない所に、更に新情報を追加しすぎだ。
どれだけ考えても答えなんて出るわけがない。考察するにしても情報が少なすぎだ。情報のピースも無く解明できるほど甘くはない・・・・・・現状ではどうにもならん、放置決定だ。
気を取り直すとクレアに向き直り今後の予定を告げた。
「俺はこの後、母の見舞いに出掛ける。そう待たせないから俺が戻ったら異世界に行って、冒険者登録とレベリングをしようと思う。・・・・・クレアはそれでいいか?」
「は、はい。大丈夫です。あ、あのお母さまの所に私も行っていいですか?」
緊張しつつもそう言ってくるが、万が一も考えると悪手だ。一方的に拒絶するのもなんだし、理由も説明しとくか?
(下手に拒絶して、いらん不信感を持たれても困るからな!)
ほう・れん・そう・は、いつの時代も大切だ。そう考えて、説明をする!
「断る理由は無いが・・・・俺みたいな冴えないアラサーが、クレアみたいな美人を連れて行くと周囲が変に勘繰ると思う。この部屋は絶対に知られちゃイケない俺とクレアだけの秘密だ。万が一も考えて連れて行くのは止めておきたい・・・・・慎重すぎ、考えすぎかもしれんが、念には念を入れておきたい・・・・・わかってくれるか?」
「は、はは、はい。急に変なこと言ってすみません」
顔が真っ赤になってしどろもどろな返答をすると、俯いてしまうが。・・・・俺はなんか変なこと言ったかな? ま、いいか。
「それにクレアを連れて行くとお袋に俺の恋人に間違えられるぞ? そんなの嫌だろ?」
ニヤリと笑いながら、悪戯っぽく揶揄うように告げると・・・・・。
「 」
呆けたような顔をして、上を見あげて放心してしまった。おちょくりすぎたか? 悪いことをしたな!
(さて、行く前にステータスの確認だけはしておくかね。あ、そういや固有スキルが進化したんだよな? 確認してなかったわ)
ドタバタしていたので、いつもなら真っ先に確認するであろうことを確認していなかった。最近はトラブル続きだ! 忘れないうちに確認しておこう!
◆◆
Name:志波蓮二
種族:突然変異悪魔・種族ランク:C+・100/100%
MR:6
JOB:【聖騎士】 LV:75 :合計325
HP:60442
MP:57192
SP(体力):6030
STR(筋力):8125
AGI(敏捷):5597
MAG(魔力):7179
VIT(耐久力):4850
DEX(器用):1600
LUC(幸運):700
〇アクティブスキル
・【黒魔法LV:7】・【結界LV:7】・【瞬間装備変更LV:5】・【暗黒魔法LV5】
・【威圧LV:5】・【ダーク・クルセイド】・【神聖魔法LV:3】
〇パッシブスキル
・【索敵LV:5】・【逃げ足LV:5】・【魔力操作LV:7】・【詠唱速度上昇LV7】
・【気配遮断LV:6】・【並列起動LV:9】・【身体系状態異常耐性LV:2】・【奇襲】
・【恐怖耐性LV:5】・【装飾品装備数+1】・【呪い耐性LV:5】・【聖なる守護】
・【闇の祝福】・【聖の祝福】・【呪詛移し】・【HP回復速度上昇LV:3】
・【MP回復速度上昇LV:3】
〇武器スキル
・【昇竜連斬】・【五月雨斬り】・【臥龍点晴】・【滅魔の太刀】・【髑髏呪怨斬】
・【魔剣解放】・【聖剣解放】【昇龍脚】【不動鉄塊】・【羅刹腕】・【仙気功】・【幻影旋空】
・【守護者の心得】【聖流旋斬】・【闘仙発勁】・【虚空疾駆】・【轟烈砲拳】・【闘気砲射】
・【明鏡止水】・【静水乱華】・【百花繚乱】
〇種族特性
・【飛行】・【悪魔の毒爪牙】・【変身】・【悪意感知】・【光属性被ダメージ倍加】・【聖属性被ダメージ倍加】・【暗視】・【影支配】・【光学迷彩】・【高速再生】・【恐慌の魔眼】
・【契約書作成】
〇固有スキル
【賢者の解析眼LV:3】【進化の系統樹】【万能言語対応】
HP:補正・C
MP:補正・C
SP(体力):補正・C
STR(筋力):補正・C
AGI(敏捷):補正・C
MAG(魔力):補正・C
VIT(耐久力):補正・C
DEX(器用):補正・H
LUC(幸運):H
◆
「はえ?」
目に飛び込んできたステータスの情報は、今までと全く違うものだった。
思わず声が出た。阿保丸出しの声と表情にクレアが怪訝な目を向けてきた。いや、そんだけ驚いたんだよ!
首を振り、ゼスチャーで何でもないと告げると考えを纏めるべく頭を切り替えた。
(ステータスが、今までと表示形式が全く違う? どういうことだ?)
今まで表示されなかった情報が開示されるようになった。それは良い事だろう! だが、急に変更になったのが引っかかる!
まず耐久や器用が見えるようになった。それは良い、そしてやはり【種族】の補正もあった。これも良い。だが【種族特性】のレベルが無くなり。剣技などのアクティブスキルが武器スキルになった。まぁ、納得は出来る・・・・・・・・わきゃ無いが。今は言うまい。俺が言いたいのはそんな事じゃない!!
(アンだけあった武器スキルが明らかに少ない。俺の努力と研鑽の結晶を返せやっ!)
そう、進化させてきた攻撃系のスキルが明らかに少ないのだっ! そりゃ積み上げてきたモノがイキナリ無くなりゃ・・・・・取り乱しもするわ!)
地面を思いっ切り蹴りつけて。何とか飲み込もうとするが、上手くいかない。
「は~、は~」
深呼吸をして、落ち着くように努力するが上手くいかない!
(落ち着けこれはあのクソ運営共の修正と同じだ。俺の努力と労力を『後発の者も平等に楽しむ権利がある』と踏みにじった。あのクソ共と同じだ。怒っちゃ負け、怒っちゃ負け!!!)
何とか荒れ狂う感情を鎮めようとしても、まったく上手くいかない! ゲームでもこういった『大型アップデート』前は、最低限の通知はする! なのに急に・・・・一言も無く勝手に仕様を変えられりゃ・・・・・ムカつくに決まってるぜ!
(思い出せ、かつてゲームで【運営】が行ってきた仕打ちの数々を。その中でも腹の立つことだけを思い出せ!)
そう考えて、嘗ての記憶を掘り起こし、嫌な経験—―――出来事を思い出していく!)
かつて俺があるゲームで、リスク承知で危険地帯で採掘したアイテムを市場で流す直前にボーナスエリアと称して近隣で採掘可能にしたお陰で二束三文となった悲しみを思い出す。それ以外でも、様々なバグやクソ展開で振り回された経験やクソみたいなシナリオやデタラメな仕様のゲームばかり造る【メーカー】を思い出し・・・・・またその当時に湧いた怒りと比較して、現在の怒りを鎮めるべく心を落ち着かせる
(武器スキルが単に消去されたんなら通報モンだが、合体か合成のようにスキルがくっついた感じだ。納得できずとも飲み込むしかない。覚えてろよクソ『運営』この借りはノシを付けて返してやるぜ。それに進化までのリソースも貯まった・・・・・良い事もあったんだ。切り替え、切り替え)
また一から検証のやり直しは面倒・・・・・どころじゃないが。決して最悪の状況ではない・・
・はずだ。 【ジョブ】や【種族】がすべて強制リセットとかじゃ無いだけまだマシだ!
念のため、クレアのステータスカードを確認すると。これまた表示が今までと変っていた。
ひょっとしたら、システムの仕様を変更するアップデートのようなものがあるかもしれない。その考えを心に刻み、念頭においておく!
今回は何事も無かったが、戦闘中に起こったらかなりヤバいことになる。今後はますます注意が必要になってくるだろう。
出足を盛大に挫かれたが、お袋のお見舞いに行ってから進化。おっちゃんから装備を受け取ってからクレアの冒険者登録とギルドで換金。
その後はクレアのレベリングだな。予定を組み立てて俺は病院へと向かった。
お読みいただきありがとうございます。
第一話に世界観を追加いたしました。物語の参考にお読みください。
『ユニークモンスターはいつ出るの?』とご指摘を頂きましたので、少しお話ししますと。四章にて登場します。 既に予約投稿はしてありますので、もう暫しお待ちください。




