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第51話 攻略報酬


 気が付いたら広間の床に倒れていた。傷は治っていたが全身の節々が痛い。再生は傷は治すがHPや体力は回復しない。


 気絶していただけで、しっかり休んだわけでもない。傷は粗方塞がっていたが、そちら(HP)は回復しなかったようだ。直ぐに回復ポーションを服用してHPとMPの回復を行った。


(いてて、どうやら勝ったようだな! しっかし、あのボス明らかに設定ミスだろ? ありゃ下手したらランク6のキマイラよりも強いし、あのクソ蜘蛛に匹敵するぞ!)

 しかめっ面で分析するが、それが素直な感想だ。勝てたのは幸運が味方してくれたのも大きいだろう。


(本体はそこまでの強さは無いが、あの武装は正直ヤバい。装備を軽んじていたわけじゃないが、今後は装備についてもう少し練り直しが必要だな)

 装備の重要性を再認識して、今後はそちらにも力を入れていこうと決意する。だが、それだけでは不足だ。見直さなければならない点は他にもある。


 俺はしかめっ面で戦術の見直しを始めた。あの武装が無ければあっさりと勝負はついていたはずだ。あちら(異世界)でもDランクダンジョンであんなのが出てくるなら。とても下位の冒険者に攻略できるとは思えない。複数人で挑んだとしても、下位冒険者ならあのガトリング掃射でイチコロだろう。


(ひょっとして初回限定の強敵みたいな感じか? もしそうなら勘弁してほしいんだが)

 嫌な考えが頭に過ぎり、苦虫を噛み潰したような表情になる。何故ならば・・・・・。


(それは今後、地球で挑むダンジョンの難易度が・・・・・全てのダンジョンの難易度が予想よりも、跳ね上がることになる可能性ある・・・・・極めて厄介だな!)

 軽くため息を吐き、嫌な想像を追い払うことにする。


(まぁ考察は後だ。あの中央でピカピカ光って自己主張している魔法陣の所に行ってみよう。報酬は何も貰っちゃいない。ならば鍵はあの魔法陣だろうさ)

 激戦で死にかけようと。この瞬間だけは年甲斐も無く期待してしまう。まだアラサーだけど。


 まだ足の機能は完全には回復していない。俺は魔法陣までひょこひょこと歩いて行き、中央に立った瞬間に【運営】の声が響いた。


 ◆◆


 ダンジョンの攻略を確認。


 〇ソロ攻略報酬「適性ジョブ診断リスト」を進呈。


 〇正規ダンジョン最速ダンジョン攻略報酬「錬金工房」を進呈。


 〇通常報酬「トレジャーボックス」を進呈。


 〇初回攻略特典としてリソースを【智者の解析眼】に供給。これより【賢者の解析眼】となります。


 〇ダンジョン【石造りの迷路】攻略に当たって、最大戦功獲得者を選定開始・・・・・【志波蓮二】が選出されました。【志波蓮二】に自動魔力精製機関【超小型魔力コア】を進呈いたします。


(よっしゃ!やはり初回限定の特典があったな)

 俺は読みが的中したことで満面の笑みを浮かべていたが。ふと時計を確認して笑みが凍り付く。

 時刻は19時。かなり長時間気絶していたようだ。


クレアが心配だし、報酬の詳細確認は帰ってからにしよう! 別にアイテムは逃げないしな!


 俺は異世界で購入しておいた『転移石』を使い。ダンジョン入り口まで戻ることにした。

この『転移石』は発動まで60秒かかるが。ダンジョン限定で入り口まで転移できるとても便利な石だ。アイテムボックスには二十個ほど買い込んである!


(もしも人がいると面倒なことになりそうだ! ≪光学迷彩≫と≪気配遮断≫は使用しておくか)


 入り口に転移して、いきなり軍人に遭遇したら厄介なことになるのは確実だ。不法侵入の罪に問われるのは確実だし、今の状態で逃げ切るのも骨だ! 厄介ごとは避けるに越した事はない!


 60秒経過し、『転移石』が光り輝くと。俺の体が光に包まれる。

視界のブレが収まったと思ったら、そこはダンジョンの入り口付近だった。


 周囲を見回すと。案の上と言うべきか。軍人が中に入ってきていた。

階級章を見るに佐官クラスだろう。うまい話しが聞けるかもしれないので、気配を消して聞き耳を立てる。


(何やら深刻そうな顔をしているな! これは軍事機密が聞けるかもしれんぞ!)

 それほど佐官の軍人の表情は優れないモノだった。・・・・・表情どころか血色も悪い。


「は?ぜん、めつ?でありますか?2個大隊が・・・」


「そうだ!正確には3名ほど生き残っているので全滅ではないが。調査団と護衛についていた部隊は壊滅状態だっ!!!」


 呆けたように聞いた若い尉官? の言葉に対して、壮年の佐官が苛立たし気に怒鳴るように話していた。尉官は言葉を聞き返した無礼と怒鳴るような剣幕に委縮してしまった。


「しかし、きちんと兵站や装備を整えた部隊が全滅するなど有り得ないのではないですか?」

 それでも何とか疑問の声を絞り出すが・・・・。


「本日は大友中佐率いる第47機械化歩兵部隊は『09:00』よりアルプスに現れた強大な洞窟の調査に護衛として参加した」


 その言葉に戸惑いながらも尉官が頷くと。


「中は巨大な樹木が乱立した密林のような場所だったようだ。最初は何事も無かったが、侵入して2時間ほどたった時に異変が起こったようだ」

 佐官の男は努めて淡々と話しているが、その奥にある感情は何かを恐れているようだった。


「異変??でありますか?」


「そうだ! 調査員の体に黒い斑点が出来たと思ったら、急に苦しみだした。そしてその時を見計らったように途轍もないデカさの恐竜のような生物が複数襲い掛かってきたようだっ!!」


 佐官の男は悔し気に、まるで絞り出すように声を出した。その奥底の感情は恐怖。


「近代兵器や歩兵用携帯兵器で応戦するも・・・・・効果は上げられず。部隊の大半は怪物に食われ、兵器の類は徹底的に破壊されたようだ」

 そこまで言って佐官は俯いてしまった。自分たちの【国防軍】の力を以てすればダンジョンなど簡単に攻略出来るとでも思ってたんだろう! 


(ハッ! 部隊を投入するにしても、情報を精査した上で投入すべきだろうに! この犠牲はお偉いさんたちの慢心だよ! 死んだ連中は可哀そうだがね!)

 レンジその報告を盗み聞きして鼻で笑い飛ばす。前にチラッと聞いたときに、調査隊が失敗する可能性が高いとは思っていた。予想通りの展開に呆れているのもあるが。


「なぜそのように詳細が分かったのですか?」


「大友中佐の英断だ。敢えて部隊を分けて異変が起きたら早急に帰還するよう徹底していたらしい。部隊員にも敵前逃亡か任務放棄の嫌疑が掛けられぬように。事前に独自判断による撤退許可証を発行していたようだな」


(大友中佐・・・・ね。中々やるじゃんか。リスクを考えて部下の命を守った————守ろうとしていたんだ。立派じゃねぇか!)

 この人がいなければこの情報さえ持ち帰れなかっただろう。失敗は失敗でも、価値のある失敗だ! 全滅したのはこの人の責任というより、上層部の失敗だ。むしろ大友中佐とやらは、頭がお花畑のお偉いさんどもの犠牲者—―――被害者と言えるだろう。


「撤退中の部隊も小型の恐竜のような奴らに襲われて、どんどん倒れていったようだ。生き残った者が入り口までたどり着いたときには、満身創痍の血だらけだったそうだっ!!」

 そこまで怒鳴るように語っていたが、急に声を落とし落ち込んだ様表情で話し出す。


『入り口で待機していた部隊が、治療していた時も。掠れる声で、内部についての情報を話していたそうだ。自分たちに何かあった場合に内部の情報を伝える者がいなくなると言ってな!』


 自分たちの命が尽きる可能性を考慮して少しでも情報を————知りえた情報を渡そうとしていたのだろう。危険性を訴え、これ以上余計な被害を出さないようにするためか。誰かが敵を討ってくれることを期待してのことかまでは判らないが!


「何人かが犠牲を承知で足止めを図ったので、自分たちは生き残れたと証言していたそうだ。その中には上官もいたそうだが、なんとしても情報を地上に届けろ・・・・と厳命されていたそうだ。

 生還者のひとりが調査隊が採取した植物を幾つも持ち帰ったそうだ。それを鑑定の結果、地球に存在しない未知の植物だったようだ。そのことからも今後ダンジョンの調査は継続されるだろうな」

 佐官の男はそこまで話すと肩を落として俯いてしまう。


 無謀な調査で犠牲を出したのに、このような収穫が有ったのなら。政府がダンジョンを放置する選択肢はありえない。今後も危険を承知で調査が実行されるのは確実だ。その事を————無駄な犠牲がまた出ることを怖れているんだろう。兵の命は安くも無いし、無限に兵隊を量産できるわけじゃない。

非情な言い方をすれば、兵士を育成するのもコストがかかるのだ! 国防軍の主任務は国防であってダンジョンの調査でも攻略でもない!  


「生き残った4人も、重傷で先ほど一人が事切れたそうだ」

 話を聞き終えた尉官を始め、その場にいた全ての軍人が怒りか恐怖か、体を震わせていた。


 それを影で聞いていた————盗み聞きしていたレンジの表情は冷めきった者だった。『心底どうでもいいです!』と顔に大書きしてあるような解り易い表情だ。 


(犠牲は痛ましいが、俺には関係が無い。有効な情報には感謝するがね。しかし、これでダンジョンの有益性が実証とまではいかずとも。中には資源があることは知られるだろうな。それにしても機械化部隊が壊滅ね。かなり高位のダンジョンと見た方が良いだろうな)


 これ以上いても有効な情報も得られず意味が無いと考えて、俺は足早にダンジョンから立ち去った。


 ◆◆


 レンジの予想は正解である。レンジは知る由も無いが、アルプス山脈に出来たダンジョンの名前は【原初の密林】。凶暴かつ強大な恐竜系統のモンスターが弱肉強食の生態系を築く広大なフィールド有し。出現するアクティブモンスターの最低ランクは6以上。まごうことなきAランクダンジョンである。 レンジがこのダンジョンに挑むのは・・・・まだまだ先の事である。


 ◆◆


 来たときと同じく一時間ほどで帰り道を踏破し、俺は自宅へとたどり着いた。家には明かりが灯っているので、クレアが母屋にいるのだろう。ボ~としているのも可笑しいので、俺はさっさと中に入る。


「お帰りなさいませ」


その言葉とクレアの姿を見た瞬間に言葉を失ってしまった。

クレアの姿は素肌にエプロンだけを身に着けている俗に言う【裸エプロン】だったからだ。


「なぜそんな恰好をしてるんだ?」

 そのインパクトに圧倒されて、言葉を失ったように無言だったが。言語能力を何とか総動員させてそれだけ聞いたところ。


「これが殿方を迎える女性の正装と『ねっと?』に載っていましたので。作法に従っただけですが?」

 不思議そうに首を傾げての返答に頭が痛くなってくるがそれに耐えて指摘する。


「それは誤りだ。普通に出迎えてくれ。それよりも戦利品が幾つか手に入った。確認したいので地下に行こう」


「お食事はどうなさいます?」


 その言葉でダンジョンに入ってからは碌に食べていなかったこと気付いた。気付いたことで腹も空腹を主張してくる。先に食っとくか!


「そうだな。先に飯を食ってからにするか。クレアはもう食べたのか?」


「いえ。貴方を待っていましたので食べていません!」


「じゃあ・・・一緒に食べようぜ」


(気にせずに食べときゃいいのに)と思いつつも一緒に食事を勧める。


「っ・・・・・はい!」


俺のこの言葉が嬉しかったのか。笑顔でそう答えてくれた。


 疲れていたので、俺が事前に作っておいた食事を温めて済まそうと考えていたが、ストックした分がまるで減っていないことに気付く。


「クレア・・・・お前ひょっとして、俺が探索に行ってから何も食ってないのかっ?」


 俺はつい怒鳴りつけるように聞いてしまった。


「は、はい。すいません」


 申し訳なさそうな声で謝ってくる姿を見て、俺は自分の態度がクレアを怯えさせていたことに気付いた。ハッとするとバツの悪そうな表情で怒った理由を話し始めた。


「怒ってるんじゃない。大方、俺が居ないのに勝手に飯を食べるのが嫌だった・・・・ってとこか?馬鹿馬鹿しい。そりゃダンジョン内で節約するときはケチるが、それ以外なら食える時に食っとくのが当然だ。この家のモンなら何を食おうがどれだけ食おうが一向に構わん」

 飯が少々減っていたところでいちいち腹を立てるのさえ面倒だ。それに消耗品が減るのは当然だ!


 真剣な顔でそこまで言うと、、まっすぐにクレアを見据えた。俺の考えをキチンと伝えておかないと、要らん誤解を生むと考えたからだ。


「俺はお前の力を利用したいという下心はあるが。・・・・俺に協力するか否かはクレアが決めることだ。仮に俺に協力しなくても、追い出したりはしない。元々俺がダンジョンを攻略した結果、お前を目覚めさせたんだ・・・・・お前が望む望まぬに関わらずな。つまりお前の面倒をみる責任が俺にはある」

 これは紛れもない本心だ。俺は非情だが、やった事に対する責任を放棄するほど落ちぶれちゃいないと思っている。


 その言葉を聴いて、クレアは驚愕の表情を浮かべていたが。目尻にはうっすらと涙を浮かべていた。


「それに俺たちはお互いに命綱を握られている状態だ。もしクレアの口から地下の転移魔法陣がバレたら俺は破滅だ。良くてこの国に兵器として良いように使われるだろう」

 この言葉は決してハッタリじゃないし、冗談でもない!


(俺はDランクダンジョンを単身で攻略できる・・・・世界でも唯一の存在だ。ダンジョンからは有益なオーパーツや資源が出土すると分かった以上。ダンジョンから資源を採掘できる俺の価値は計り知れない。俺の実力は、地下の施設がバレたら知られる可能性が高い。少なくとも、疑われるのは確実だ! 政府は俺を野放しにはしておかないだろう。一人ならば逃げられるが、母を人質にされたら手の出しようがない)

 レンジには弱点がある。どうしても切り捨てられない大切な人がいる。他の何を犠牲にしても、その人だけは切り捨てられない! 


「そして俺もお前が異世界人だと知っている。そうなったらクレアは・・・・下手したら人体実験のモルモットにされるかもしれない。いや、ダンジョンとの関連を調べるために、拘束されて自由を奪われるのは確実だろうな!」

 脅すように言ったが、これも事実だ。ダンジョンと言う未知の異物を解明する手掛かりを得るなら。政府は非人道的な事さえ平然と行うだろう。


(ダンジョンは地球では未知の遺物だ。それを知るための手掛かりを得られるならば多少の法に触れることぐらいは平気で黙認される。何と言ってもクレアには戸籍が無いし、この世界の人間じゃないので人権すらも怪しい)

 窮地は人を狂気に走らせる。第3次世界大戦では日本は兵器の製造だけじゃなく、オカルトじみた人体実験を極秘で行っていたなんて噂は未だにある。





「この世界において俺たちは一蓮托生だ」

 クレアを見つめてそう宣言した。


 そこまで話すとクレアの瞳を真っすぐに見据えて更に言葉を紡いだ。


「俺といるのが嫌だ、この世界にいるのも嫌だ。・・・・というのなら異世界に行くと良い。お前を目覚めさせた責任において。あっちで一人でやって行けるまでのレベリングやサポートは手伝う!」


「な、なぜ私に対してそこまでしてくれるんですか?」


 クレアは泣きそうな顔で聞いてきた。それに対して俺は・・・


「ダンジョンを攻略したのは俺の都合だ。そこには利己的だが俺なりの正義があった。自分の日常を守るという正義がな。他の奴らが見たら自己中な振る舞いと言うだろうが。・・・・・それがどうした? 正義や正しさなんてのは人によって無数にある。

 自らの正しいと思う行動をとり。それによって生じた結果に対して責任を取る。それが俺の絶対曲げないように心がけている信念だ。俺がダンジョンを攻略の結果によってクレアが目覚めた。つまり、それは俺の責任だ。だからクレアに協力するし助ける、それだけのことだ」


 その言葉を聞いてクレアは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

お読みいただきありがとうございます。

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