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第3話 状況把握

     

 〇自宅 【会社員】志波 蓮二


 先ほどの謎の声と同時に手元に浮かび上がったカードを凝視する。最初は真っ白で何も書いてない白紙状態だったが、触れていると徐々に文字が浮かび上がってきた。


 ————そこにはこのように記載してあった。


 ◆◆

 〇名前 :志波 蓮二

 〇種族 :人間(未選択)

 〇ジョブ:未選択


 〇HP :65

 〇MP :0 

 〇力  :25

 〇敏捷 :18

 〇体力 :30

 〇知力 :48

 〇魔力 :1

 〇運  :15


 〇アクティブスキル


 〇パッシブスキル 

 

 〇固有ギフト

・【愚者の叡智・LV:1】・【無限の可能性】【?????】

(上記は当ギフト所有者以外。如何なる魔術・スキルを以てしても閲覧・解析は出来ません)


 ◆◆


「いやいやいやいや!なんじゃこりゃっ?」


昨今、流行の異世界小説物のテンプレのようなものを目にし。思わず間抜けな声を上げてしまう。


「ふ~、ふ~。落ち着け~落ち着け~。冷静になれ、冷静になれ」


こういった時こそ冷静な判断が必要だ。大きく深呼吸を繰り返し、心を落ち着けると状況を冷静把握するべく思考を加速させる。


 冷静に分かったことを整理していく。


 1・これは夢ではなく現実である。


 それは間違いないだろう。俺はさっきまで朝飯を食ってたし、仮にゲームやってる最中にゲーム内で寝落ちしたとしても、ここまでリアリティのあるゲームなど存在しない。あったら既存の技術を遥かに超えている。


  2・先ほどの【謎の声】から予想するにこの門はダンジョンの入り口


 これも間違いないあの謎の声は『ダンジョン』っていってたからな。


 3・ラノベのテンプレを信じるならダンジョン内には怪物や宝がある可能性がある。


 それを確かめるにはこの扉の中に入って調査が必要だが、正直言って命かけてまで確認する気は一切ない。ゲームならデスぺナ受けてリスポンすりゃいいが、現実で死んだら終わりだからな。


  4・(3)の怪物がいると仮定し、怪物が扉から出て自宅や外に侵入する可能性があり、自分の身や近隣住民が危険。


 だが幸いといっていいのか俺の自宅は山の麓だ。近隣に民家は存在しないので、多少大声を出しても迷惑が掛からない。・・・・・つまりは問題はない。それ以前に住民の危険などに対して興味はない。


 5・時間経過でダンジョンが起動という言葉から今後世界中で同様の現象が起こる可能性が大。


 だがそれは俺が関知する事じゃない。政治家や軍人が対処するべき事だ。つまりはまったく俺には関係ない。


 ・・・・・・・・と取り敢えず思い付けるのはこれだけだな。


  安全策を採るならば、警察や国防軍にこの門とダンジョンについて通報することだろう。 だが、正直言って直近の安全を取るならばともかく。後々のことを考えると、これは下策だ。


(ことを打ち明ければまず間違いなく政府は調査や危険性などの適当な名目を付けてこの家ごと接収するはずだ。じいちゃんやばあちゃんとの思い出が詰まった家を渡すのは嫌だが、近隣住民の安全などと言われれば従わないわけにはいかない)

 

逆らえば俺ていど国家がその気になれば如何様にでも処分できる。それに腹が立つが連中の言い分は道理でもあるし理解はできる・・・・・・納得はしたくないが。 


(しかし、俺にとっての最大の問題はこの家を接収するにあたって、政府が俺に対してどのような補償をしてくれるか?・・・だ)


 たとえどんなにボロくても住宅やマンションなどをこの家を提供する見返りとして用意してくれればいい。しかし、はした金を渡して「はい、おしまい!」の可能性は相当高いとみている。


(その扱いに対して、どんなに不当だ! 理不尽だ!と声を上げたところで。生憎とこちらは何の後ろ盾もない一般人に過ぎない)


 この国に限らず力の無い者(弱者)は、力のある者(強者)の言う通りにして生きていくしかない。刃向かうには相当の覚悟と実力が必要だが、俺はどちらも持っていない。


それに「なんで君の家の地下にダンジョンが出来たの?」と聞かれても俺は相手の満足のいく答えを返せない。俺に言わせれば訳の分からん状況だが、ただの一般人の家の地下にダンジョンが出来たどう考えても怪しまれるのは俺だろう、っていうか俺しか怪しまれる対象がいない。


この家の住人=俺と、何らかの関係性があるのでは?と疑う輩は絶対出てくる。


(胸糞悪くなるが、政府やマスコミなどがその気になればただの一般人など簡単に罪に落とす事が出来る)


 WWⅢ(第3次世界大戦)時は国防軍設立のために強制徴兵令が出されて、異論を唱えた人物は問答無用で罰せられたのは有名な話しだ。まあ米国の総撤退でそれ以外に選択が無かったから仕方がないという意見が大半なんだが、下手に騒ぎ立てたりすれば罪をでっち上げられて犯罪者として警察からお縄を頂戴となりかねない。 


(取り調べぐらいなら兎も角、最悪ダンジョンの関連を調べるなどの理由で人体実験のモルモットだ)


 これもWWⅢの頃の有名なオカルト説だが、魔法や超能力を発現する為に政府主導で人体実験をしていたなんて話しは幾らでもある。


(考えすぎかもしれないが、物事の最悪には限りがない。それに俺はそんな状態になるわけにはいかない事情もある。可能性がある以上警察などに伝えるのは論外だろう)


 俺個人はどうなろうがまだいいが、そうなったらあの人は一人になってしまう。それは絶対に許容できない、してはいけない。


(となると、いま絶対に確認しないといけないことは絞られてくるはずだ)


1・この門の中がどうなっているのか?


 何もなければそれでいい、っていうよりもこの扉はガワだけで、何もない事を祈りたいね。


2・本当に怪物がいるのか?


 そんな存在がいたとしても信じたくないが、今朝のニュースの一件があるし存在しないとはもはや言い切れない。だが中に入って確認する気は無い。もしホントに怪物がいたら命が危ないからな。これについては現状は保留にする。


3・怪物が存在していたとしてこの門を潜って外に出てこられるのか?


 仮に怪物がいてもこの門の外に出られなければ何の問題も無い。だがこれについてはどうやって調べていいのかさえわからない。これも・・・・・保留だな。


「今挙げた中では特に3が最重要だな。この家から怪物が溢れて近隣に被害が出れば接収など無かったとしても此処には住めなくなる」


 もしこの門から怪物が外に出られるなら、少し調べればそんな事は簡単に判ることだ。そして俺は間違いなく責任を追及されるはずだ。この家に住んでるし、何よりもこの家の所有権は俺にあるからな。そうなった場合の責任逃れは不可能といっていいだろう。


「人間ってのは自分たちが不利益を被った時はもちろん、普段でも弱者を攻撃するのが好きだからな」


人間の支配階級は、昔から弱者を意図的に作り出すことで下位の者を支配してきた。江戸時代の士農工商・えた・ひにんなどこの国だってそういった前例がある。自分よりも下位の者を意図的に作り出すことで『あいつ等よりはマシだ!』と優越感と安堵を与えることで不満を抑え込むやり口だ。


(もしも、魔物の被害者が出たとしたら俺はスケープゴートに最適だ)


この扉から怪物が溢れて被害が出た場合には「アイツ(志波蓮二)が魔物の出現する扉を隠していたことで今回の悲劇が起きました! 今回の責任は情報を隠蔽した彼にあります!」とで警察がほざけば世間の非難は間違いなく俺に向く。


自分の口が皮肉気に吊り上がっている事が自覚できる。


実際のところ、俺の家から魔物が溢れて誰かが怪我して「一体全体誰が悪い(悪いのはだ~れだ)?」となったら9割以上が「俺が悪い!俺の(お前が悪い!)責任だ!」と言うだろうしな。


「となると。俺がこの中に入って中の様子を確認しなきゃならんわけだが。入って早々に怪物の餌なんてのは真っ平だ」


魔物が扉の中に存在しているなら細心の注意を払わねばならん。無策で挑むなど自殺志願と一緒だ。


「現状を整理して可能性を見出せるのはカードに出ている未選択の【種族】・【ジョブ】・固有ギフト:【愚者の叡智】・【無限の可能性】・【■■■■■】くらいしかない」


文字化けしてる【■■■■■】を当てにするのは論外だろう。【種族】・【ジョブ】はゲームかラノベを読んでれば一度は聞いたことがある言葉だ。だがどうやって扱えばいいのかが分からない。取り敢えずは放置しておく。


「【■■■■■】は脇に置いておくとして【愚者の叡智】・【無限の可能性】をどうしたら起動できるか?」


固有ギフトなんてぶっ飛んだ名をつけられてんだ。使いこなせれば大きな力になるはずだ。


「そして、どうしたら種族・ジョブを選択できるか?・・・・だな」


 恐らくはこの種族とジョブが重要だと俺の勘が囁いている。まぁ、ゲームの定番だしな。コレを主題にしたゲームをプレイしたことは一度や二度じゃないくらいにはゲームの定番として使用されて理宇。だが使い方が分からないから意味が無い。


「まぁラノベを参考にするなら。こんな時は脳内で念じる。口でスキル名を唱える。かねぇ~!!!」


どんなに便利でも使えなければ意味がない。思い当たることは片っ端から試してみるべきだろう。


「これで起動したら大笑いだけど。誰もいないんだし、物は試しだな」


兎に角出来ることや、思いついたことを片っ端から試していくしかない。ひょっとしたらこの瞬間にも怪物が扉から出て来る可能性だってゼロじゃ無い。対抗手段の確立は一刻も早く必要なはずだ。


(【愚者の叡智】起動!)


〔ギフトユーザーからの使用申請を確認。【愚者の叡智】を起動します。現在のLV:1での権限内で質問にお答えいたします。それでは質問をどうぞ?〕


「!!?○◇▽□△??」


頭に響き渡ったその声に俺は本日、何度目になるかわからない驚愕の表情と悲鳴を上げる羽目になった。

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