第42話 レベリングと情報整理
〇ラバンの森 【暗黒騎士】シレン
さてさて、教会での寄付と祝福を無事に済ませ。やって来たのはラバンの森。
前に満身創痍の俺を散々追い掛け回してくれた腐れイノシシ共に、リベンジをかますべく意気揚々とやって来ました。
装備はぶっ壊れ寸前だったので、おっちゃんに許可をもらって店の物を頂いてきました。お金はいらないそうです。(「店にあるもんは、勝手に持って行っていいからどっかに失せろ!!」とは客に言う言葉じゃねぇよな?)
さてさて、東に行くとクエストが発生しますので。西や南側にて狩りをしています。
ぶっちゃけると。装備のランクが落ちても、全く苦戦しない。正直スローターの様相を呈しているのが、何とも言えない。
しかし、逆に基礎能力や武器スキルの成長にはちょうどいい。
ジーク氏から教わったことを纏めると。武器スキルの進化はメインジョブと自分のスタイルに影響されるという事だ。
例えば、暗黒剣で最初に覚えた技は魔法を切り裂く『断魔』で今は魔法を吸収する『吸魔』に進化している。
更には攻撃的な『呪怨斬り』・『鳴動破』などを覚えたが、ジーク氏はより攻撃的な『遮烈紅蔑』や範囲技『濁流淵唆』などを覚えたようだ。
要するに自分だけのオンリーな技が覚えられるのだろう。
しかし、レベルが上昇しないと武器スキルの成長は止まってしまうようだ。
なのでカンストまでにスキルをなるべく使用して成長させておいた方が良いとのことだ。
それならトップジョブを獲得すればいいだけだが。トップジョブを条件も知らずに取ろうなど、虫が良すぎるというものだろう。
因みに闘士系統のトップジョブ『決闘王』。暗黒騎士系の『墜天騎士』と『奈落騎士』。聖騎士の『聖天騎士』は既に先着者がいるようだ。全員が都市国家に所属しているので、その条件も不明ときたもんだ。
ジーク氏との話で「何故【暗黒騎士】はトップジョブが二つあるんですか?」と聞くと。【闘士】や【聖騎士】も二つ以上あるかもしれないが、情報が失伝していて分からんらしい。
稀に全く脈絡の違うジョブを組み合わせて条件を達成する。無系統型と呼ばれるトップジョブもあるそうだが、こちらの情報も噂に過ぎないらしい。
「どうしたら条件を満たしたことが分かるんですか?」と聞いたら。条件を満たすとステータスカードが輝いて知らせてくるらしい。便利だ。
しかし、トップジョブ持ちは、常に危険を覚悟しなくてはならないようだ。
トップジョブに就きたい者など幾らでもいる。しかし、席はたった一つ。空席になるのは保有者が死んだときかジョブを消去した時だけ。
自分が就けるかどうかは別にして殺してでも就きたいという感情は理解できないわけじゃない。
これがゲームと仮定して。俺も自分の狙ってるジョブに先に就いた奴がいて、デスぺナすれば空席になるなら嬉々としてPKするだろう。その気持ちはわからんでもない。
まぁ、取らぬ狸のなんとやら。カンストさえしていない身で、トップジョブを狙うなど烏滸がましいことだ。
今は武器スキルの成長と、魔力操作の精度上昇。あとは【暗黒騎士】カンストを目指して頑張る時だろう。
トップジョブは魅力だが、確実に取れるジョブを疎かにすれば脇が甘くなる。一歩一歩進むのが大切だ。
ラノベの様にチートだ、バグだとか期待できるほど甘くないのは、たった数日で身に染みた。
思考しつつも、警戒と作業は怠らない。さっきから、ランク4のモンスターを始め、時折ランク5が混じってくるが。危なげなく討伐できている。
この前ランク6のミスリルスライムに遭遇したのは偶然だったのだろう。
早々イレギュラーな事態が起きてはたまったものじゃない。
クエストをクリア出来たら一度戻って二日ほどゆっくりするのもいいだろう。装備も碌に整えないままダンジョン探索は自殺行為だ。
此方なら二日休めば5倍速時間で十日になる。会社もあるし、こっちに来るのはあちらの時間で五時間だな。それならこちらで二五時間。一日は探索に当てられる。
因みにダンジョンは大凡だがこれぐらいの階層らしい。
Dランクダンジョンは大体が20~30階。
Cランクダンジョンは35~50階。
Bランクダンジョンは55~70階。
Aランクダンジョンは70~85階。
Sランクダンジョンは攻略者がいないので不明。(記録を見る限り)
この大陸でSランクダンジョンは5か所。
【エルスティア】の『冥府の審判』
【マギノ・マキナ】の『枯渇の庭園』
【天翔】の『羅刹の蠱毒壺』
【デザリア】の『生命の宿業』・『始原の箱庭』
これらは、階層の情報を持って生還したものがいないため。詳細さえもわからない。
しかし、引っかかることがある。何の根拠さえも無い、ただの勘だが。この時の俺は確かに感じた。
Sランクダンジョンはもう一つあるんじゃね?と。
【冥府・地獄】。【枯渇・餓鬼】。【羅刹・修羅】。【生命・人間】。【始原・畜生】。これらは仏教の六道に通じているような気がする。
ならば、天道を冠するダンジョンのある可能性があるのではないか?
無論、仮に存在して場所を知っていたとしても、行くつもりはまるでない。
だがこの時、好奇心が疼いたことは否定できなかった。
◆◇
設置型黒魔法『地雷原』が50体以上のモンスターを吹き飛ばした。解析してみると進化のリソースは溜まっていなかったが、【暗黒騎士】はカンストできた。
これ以上は経験値がもったいないので。ひとまずは自宅にログアウトして転職するとしよう。
そう考えてドロップと魔玉の欠片を収納して『精霊の憩い』へとダッシュで戻るのだった。




