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第39話 壁


 時刻は午前5時。俺は再びバリアン湿地帯に来ていた。


 全力で走ればファーチェスから一時間程度で、ここまで来れることは昨日確認済みだ。


 ギルドの査定が終わってからでも良かったが。

一刻も早く【暗黒騎士】をカンストしておきたいのと。進化までのリソースを最大にまでしておきたかったので、再度ここまで足を運んだ。


 昨夜、獲得した魔玉の欠片を食べていたら、進化まであと少しとなった。

 今回は進化までは無理でも、【暗黒騎士】だけはカンストしておきたい。


 早速、《光学迷彩》と《気配遮断》を使用して、湿地に突撃した。向かうは昨日のアダマンタイト採掘場所。


 ◆◇


 (どうしてこうなった??)


 今の俺の心境を一言で表すなら間違い無くコレだろう。


 恐らく10メートル近い強大な蜘蛛に上から睨まれている俺のメンタルは、秒単位でゴリゴリと削れている。


 もう一度言おう。


 (どうしてこうなった??)


 理由は簡単です。あーそうだよ! 全部俺のせいだよ。

 ・・・俺がスケベ心を出したのがいけないんだよ。


 周辺のモンスターを蹴散らし、アダマンタイトをあらかた採掘し終えると。俺は今後に備えてマッピングするべく(勿論、中心には近づかないようにしながら)周囲を歩き回った。


 すると光が反射したように気がして目を凝らすと、岩壁からわずかに、黄金の輝きが露出していた。

 最初は金かと思ったが、気になったので解析してみると。


 ◆◇

 〇オリハルコン鉱石


 高い魔力伝導率と強度を併せ持つ金属。

 武器、防具共に極めて幅広い用途を持つ。

 加工が難しく、加工には熟練の職人の技術が必要。


 ◆◇


 貴重なアイテムを見ると我を忘れるゲーマーの性というべきか。レアアイテム発見に思わず夢中になって採掘を行ってしまう。周囲への警戒を疎かにしたままで!!


 ある程度カンカンと採掘していたら、急に陽が遮られて影が差したので、思わず振り返ってみると。


 牙をガチガチと鳴らしながら、口から大量の消化液を垂れ流す。紫と黒の斑模様のクソデカい蜘蛛さんがいらっしゃいましたとさ。


 オマケに腹のあたりに1メートル位の子蜘蛛ちゃんがびっしりとくっついてますね?・・お子さんですか?


◆◇

〇名前 :『グ・ノド』

〇種族 :【タイラント・スパイダ―」】種族ランク:B(MAX)

〇LV:41


〇HP :33000

〇MP :6600

〇力  :12300

〇敏捷 :4100

〇体力 :14300

〇知力 :2540

〇魔力 :2540

〇運  :100


〇アクティブスキル

【猛毒の息LV:7】・【灼熱の息LV:7】・【粘着糸LV:5】・【鋼糸LV:4】・【仲間を呼ぶLV:5】・【狂化LV:5】・【糸分身LV:3】・【破壊光線LV:1】・【死神の鎌LV:3】


〇パッシブスキル 

【罠作成LV:6】【怪力LV:4】・【硬化LV:5】・【忍び足LV:5】・【眷属強化LV:3】・【物理耐性LV:3】・【魔法耐性LV:3】


〇種族特性

【複眼】・【捕食回復】・【甲殻の鎧】・【猛毒の爪牙】・【奇襲】・【暗殺者】・【炎熱被ダメージ倍加】


〇固有スキル

【眷属支配】


〇【タイラントスパイダー】


ランク7のモンスター。暴君の名を冠する巨大な蜘蛛の化け物。

非常に凶暴の上に獰猛。特に卵が孵化して直後は、縄張りに入った生物に容赦なく襲い掛かる。

魔法こそ使わないが、強力な状態異常攻撃や糸を使った罠など巨体に似合わないトリッキーな動きをする。


◆◇


 一般的な冒険者が当たる最初の壁はランク5が多いと言われている。それは何故か?

 ランク5のモンスターはそれ以下のランクのモンスターに比べてステータスがはるかに高く。高度な魔法やスキル、厄介な状態異常を使ってくるからだ。


 多くの冒険者はランク5の壁に打ちのめされて、それ以上の昇格を諦めることが多い。


 だが稀に表れる才能の有る者たちはその壁をたやすく乗り越える。

 しかし、そんな者たちでさえも一筋縄ではいかないと語るのが、ランク7のモンスターである。


 ギルドがランク7モンスターに対応するためのマニュアルには、この様に記載されている。


 【戦闘系ジョブのカンストを4人以上。可能なら前衛(アタッカー)斥候(デコイ)盾職(タンク)・ヒーラー・魔術師・付与師をバランスよく揃えることが望ましい】


 これがランク7のモンスターに対応する。最低限のマニュアルである。


 レンジには確かに冒険者としても、戦闘の才能もあるだろう。しかし、まだまだ勝てない相手などいくらでもいる。

 ・・・・それが───現実である。




 複数の属性魔法がタイラントに直撃するが、致命傷を与えられていない。


(第六位階の魔法でもあまり効果が無い、弱点の火属性さえもな。

 恐らくはエンドかVITのような隠しステータスがあることは確実だな。剣での攻撃もあの甲殻は傷つけれても切り裂くまでには至ってない。理由は装備の攻撃力だけじゃなく、単純に俺の筋力が劣っているんだろう。

 敏捷値も此方が負けている。死んでないのが不思議なくらいだぜ)


 先ほどから今まで培ってきた技術を用いて攻撃を繰り返しているが、まるでダメージを与えられない。

 いや、与えても《捕食回復》でたちどころに回復されてしまう。単純なDPS(ダメージパーセコンド)が足りていない。

 その理由は俺のステータス不足だ。俺と【タイラントスパイダー】の差はPS(プレイヤースキル)で補える範囲を超えている!


 例え1ダメージでも相手が死ぬまで殴れば倒せる理論は。相手に継続回復手段がないことが前提だ。

 ぶっちゃけ、今までの攻防で。俺は体を貫かれ、脚や腕を斬られても死んでないのは《高速再生》のおかげだ。


 この状況を簡潔に説明するなら、要するにピンチ(死にそう)です。


 《高速再生》のスキルが無かったら、脚を斬られた時点で機動力が殺されて死んでいた。斬られた足が復元される光景は、端から見ると不気味だ。まぁメッチャ助かってるんで文句も無いけどな!

 まぁ現状、コイツにはどう足搔いても勝てん! あくまでも今は・・・・・・だ! このぼろ雑巾のようなナリがいい証拠だ。


 (だが、俺だっていいようにやられていただけじゃねぇ。敵さんのスキルの把握や動きのパターンは粗方把握できた。

 鋼糸を使ったトラップに、糸分身は凶悪すぎるが。そちらは炎属性があれば何とか対応できる。

 それが分かっただけでも十分な収穫だ。覚えてやがれ! 俺はしつけーぞ!)


 この借りは十倍にして返してやる! と心に決めると撤退の算段を練り始める。


 「ふぅ~、あんがとよ。お前のおかげで今後の課題も見えた。ジョブのカンストに継続戦闘力を高めるための回復手段。

 戦術の根本的な見直しと練り直し。強敵と戦うことで、自分に足りないもの。見えてくるものがあった!・・・・・じゃあ、あばよっ!!」


 息を吐き出すと、魔力を練り上げて、地面にエクスプロージョンを叩き込み派手な爆風と煙を巻き起こす。

 すかさずタイラントスパイダーに背を向け、一目散に逃げだした。


 形振り構わず《飛行》も使用して、この湿地帯から逃げ出す。

生きてさえいれば機は有るかも知れないが、死んだら終わりだからだ。


 「死にかけたが───収穫は有りだ。それにしてもオリハルコン・・・・か。どんな武器や防具になるのかな?」


 ファンタジー系ゲームでは、高性能装備作製の代表格ともいえる鉱石を手に入れた。

その嬉しさからか、走りながらも思いを巡らせニヤニヤしてしまう。

 俺が内心で悦に浸っていると、何やらズンズン、ドンドンと背後が五月蠅いので振り返って見ると。・・・・蜘蛛さんが複眼を目を真っ赤にして追いかけて来てますね~。


 「イヤイヤ。ここは、見逃してくれるパターンじゃないの?」


 そのような都合の良い話しなど有るはずが無い。

蜘蛛から為てみれば、自分の縄張りに侵入した餌をみすみす逃すはずが無い。ましてや縄張りの物を勝手に盗掘していたのだ。

 腹を立てない方がおかしい。


 くそ~。死んでたまるかっ! 俺は全力ダッシュを続けるが、相手の敏捷値が俺より高いため、引き離すどころか追いつかれそうだ。


 牙や爪に身体を削られ。毒液や炎のブレスに、身体を溶かされ焼かれたが。

 それでも魔法やスキルで攪乱を行い、歯を食いしばり逃げ続けた。


 命がけの鬼ごっこから俺が逃げ延びれたのは2時間後だった。ついでに装備をボロボロ、腕は千切れかけという。満身創痍状態。

 だが、どのようなナリでも生き残れたのは幸運だろう。


 (あの蜘蛛。覚えてやがれよ! 俺は理不尽なシステム程、燃えてくる質なんだよ。

 ぜって~リベンジしに戻ってくるからな。首洗って待ってろや)


 痛みを後悔するより先に、報復を誓うのが志波蓮二という男だ! この男の心は折れない! 目的を──母を助ける目的を果たすまでは絶対に!!


 そして今回の反省点。採掘中でも周囲の警戒は緩めないようにしましょう。イヤ、これマジで。

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