第2話 自宅にダンジョンが出現?
〇自宅 【会社員】志波 蓮二
朝っぱらから非現実的な映像を目にしたため。肉体的にはともかく、精神的な疲労はすでに限界だった。しかし、生憎と今日は平日。体調不良でもないのに、休むわけにはいかないのが会社員の辛いところだ。と言っても、今の会社は大学を出てからずっと勤めている。社員が少ないこともあるが、上司や部下も含めて癖のある人間は存在しない。それに、職場の環境や待遇も悪くないので、多少体調不良であっても行かないという選択はないわけだが。
時計を見ると、時刻は7時30分。流石にそろそろ準備をしないと、遅刻してしまうので大急ぎで身なりを整え。昼休みに読む小説を取りに行くため地下の書斎へと足を運ぶ。
なんで湿気のたまりやすい地下に書斎?と思う人もいると思う。
幼いころの自分もそう思ったので。祖父に「なんで?」と聞いたことがある。
そのときの祖父は悪戯っぽく笑いながら「地下にあった方が秘密が有るようで、カッコイイからじゃ!」と俺に告げた。
その時の俺は、相当な間抜け顔で大口を開けていたようだ。そう告げた後の、祖父のドヤ顔が妙に印象に残っている。
そのすぐ後。地下書斎の扉は戦時中の防空壕を利用したもので、換気もできて湿気などたまらない。今となっては絶版した貴重な本があるから、あそこが保管に最適だと祖母から聞いたときは、おちょくられたとやたらと憤慨したものだが・・・・今となっては祖父とのいい思い出だ。
足早に地下に行くとすぐに書斎の扉を開ける。するとそこには通常では有り得ない物が佇んでいた。
それは血が変色したようにどす黒い色をした、扉だった。怒ったような鬼の装飾が彫り込まれている。昨日までは間違いなくこのような扉は無かったはずだ。昨日の夜にも地下書斎に入ったから間違いないはずだ。
「なんだこの気色悪い門は?赤黒くてなんて趣味わっる!」
あまりの怪奇現象に、気味が悪くなってきたこともあり。虚勢を張るように声を上げながら思わず門に触れてしまった。
————すると突然、頭の中に声が響き渡った。
〇ダンジョン【はじまりの迷宮】に知的生命体の接触を確認。
接触生命体の生態データを解析・・・・・・・完了。
〇現在出現した全ダンジョンにアクセス開始・・・・・・・該当ダンジョン無し。
〇ダンジョン管理システムが第一接触者と認定。
〇ダンジョン管理システムが第一接触者に対して特典を進呈。
〇個体名【志波 蓮二】にギフト【愚者の叡智】を貸与。・【無限の可能性】を進呈。・【■■■■■】を進呈・・・・エラー。【■■■■■】は現状【■■■■】が足りないため進呈は可能ですが、現状では使用はできません。但し、【愚者の叡智】はチュートリアルモードの期間のみの貸与となります。
なお進呈・貸与されたこの3つのギフトは如何なるスキル・魔術を持っても他者からは確認・解析はできません。
〇ダンジョン接触者に対しての先行のボーナス【簡易ステータスカード】を進呈。
〇ダンジョン【はじまりの迷宮】のゲートを開門いたします。
〇最初のダンジョンが起動したため、これより時間経過によって順次ダンジョンを起動いたします。