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第34話 頂


〇ファーチェス外壁前 【暗黒騎士】シレン


 押し付けられた条件に思うところは有るが、ギリギリの到着は外聞が悪い。

 集合時間20分前にファーチェス外壁前で待っていることにした。


 10分ほど待っていたら、ギルド長とエリス嬢が連れ立ってやって来た。ギルド長は平然としていたが、エリス嬢は「こいつ、マジでキヤがった」みたいな顔をしていた。

 ・・・俺が逃げるとでも思っていたんだろう。


 俺は一礼すると早速聞きたいことを聞くことにする。


 「バリアン湿地帯はここからだと。どれ位かかりますか?」


 「徒歩で北に3時間ほどでしょうか? 普通は竜車か馬車を使うのですが。バリアン湿地帯付近は強いモンスターが徘徊していることが多いので。今回徒歩で向かいます」


 「わかりました。早速出発しましょう」


 俺は頷き、歩き始めたギルド長たちに続いた。


 よく見ると、ギルド長とエリスは歩いていない。地面がまるでエスカレーターのように自動で動いている。おそらくは風水系スキル『地形操作』を応用しているのだろう。俺には使ってくれないのは、それも試験だからなのだろう。


 「ギルド長。いくつかお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」


 せめて移動時間を有効に使うべく、駄目もとでお願いしてみた。


 「かまいませんよ。私に答えられる事であるなら・・・・ね」


 「ありがとうございます。私は田舎の出で世情に疎いものでして。国の情勢や都会なら常識なことも知らないことが多々あります。よろしければその辺りも、道すがらお聞きしたいのですが?」


 俺の図々しい頼みに、ギルド長は軽く頷いてくれたので。聞きたかったことを質問してみる。


 「取り分けて知りたいのは通常のジョブは上限が500までというのは知っています。しかし、その限界を超えたジョブがあると耳にしたのですが──御存じでしょうか?」


 「ああ。トップジョブのことでしょうか?」


 「トップジョブ?・・・ですか?」


 ギルド長は勿体ぶることも無く教えてくれた。あまりにあっさりしていたので、逆に驚きを隠せない。


 「ええ。上級ジョブに就くには条件があります。それはご存じですね? トップジョブはその条件を更に複雑かつ困難にした条件を達成した先にある特別なジョブです」


 俺としては「やはり」という思いだ。


 モンスターに対抗するために【ジョブ】があると仮定するなら。戦闘系特化ステータスはどれだけ頑張っても一万そこそこで頭打ちだ。装備や装飾で補うにしても限度がある。

 より強力なモンスターに太刀打ちできるとは到底思えない。ならばその先があるのでは? との予想は当たっていたようだ。


 「以前は最上級と呼ばれていたそうですが。誰が呼んだか何時の間にか、トップジョブと呼ばれるようになり、それが定着しました。特徴としては────────」  


 要するに話を纏めると、トップジョブの特徴はこういうものらしい。


1:別名【頂級ジョブ】と呼ばれている事。


 2:ひとつのトップジョブに就けるのは一名のみ。先についた人がいるなら、その条件を満たしていても就く事が出来ない。──頂に立てるのは一人のみという事だろう。


 3:レベルの上限は不明だが。500と言う説が有力。しかし、300レベルを超えると1レベル上げるのに、とんでもないリソースが必要。


 4:条件に付いては、よくわかっていないものが多い。条件が分かっていても。大抵は秘匿したり、条件を教えないケースが多いらしい。


 ザッとトップジョブの概要を説明するとこのようになる。


 神代のころは全てのジョブを網羅した、ジョブリスト成るものが存在したらしいが。神代文明が滅びた際に、当時の技術や記録なども消失したようだ。


 なぜ神代文明が滅びたかについては未だに解明していない。学者の間でも様々な説があり、議論を呼んでいるそうだ。

 神代人が生き延びるため、または後世に技術を残すためのシェルター。通称『遺跡』にも滅んだ原因について言及はされていない(現在までに発見された中では──だが)。


 学者の間で有力な例を上げると。


 1・超異常気象による急激な環境変化によって滅んだ。

 2・超巨大モンスターによって滅んだ。

 3・資源の奪い合いによる国家間戦争が大陸全体を滅ぼした。

 4・神の怒りに触れて滅んだ。


 ・・・・・・・など諸説あるようだ。


◆◇


 神代が滅んだ後。生き残った人類は様々な地域に移り住み、大小多数の国家を築き上げた。


 今から800年前。東と西の地域に現れた2人の【超越者】により、数多の国家は統一され。最終的に2国が残る。


 東の『死皇帝』と西の『機皇帝』この絶対者二人が対立する国々を併合、時に滅ぼし二つの国家が誕生した。

 当然のように二国は激しく覇を争ったが、なかなか決着は着かなかった。

 その理由は、両者の実力が伯仲していたこと。国力と人材の力もほぼ互角だったことが、争いが長引く要因となった。


 二国の争いは二十年近く続いたが、突如終わりを迎える。『死皇帝』は天命が尽きるのを悟り。悪足掻きとばかりに強行した転生の秘術に失敗し跡形も無く消滅した。『機皇帝』は兵器暴走による大爆発、通称『グレートボム』に巻き込まれ呆気なく滅びを迎えた。


 強大な支配者が突如消えたときに起こるのは古今東西共通している。


 東は後継者問題による内乱が起こり、弱体化と分裂により、国力を大きく低下させる。西は元々、強引に国を併合され。燻っていた不満や憎悪による反乱により消滅した。


 そして現在は複数の都市国家が統治する体制に行き着いたようだ。


 都市国家センターヒルは、自らが安定していない状況で他都市と接するのを嫌がった結果。中立地帯という事で大小の都市をひとつに纏めて中立都市国家として設立したようだ。


 だが、そう上手く事は運ばなかった。


 誤算だったのは各都市が協定を結んでから。この地に有力なダンジョンが複数現れたことだ。

 特に装飾品や貴重な鉱石を産出するBランクダンジョン〈虚飾の宝石箱〉は喉から手が出るほど欲しかったようだ。

 しかし既に協定後で後の祭り。機械の加工などに鉱石を大量に必要とする【マギノ・マキナ】は兵を起こし奪い取ろうとしたよだが。他国の牽制により諦めたそうだ。


 この都市の魅力はまだある。Aランクダンジョン【天魔の監獄】は、記録によると神代から存在が確認されていたようだ。しかし、70層に居座る《超越級ユニークモンスター》【邪凶天星】を倒すことは出来なかったようだ。


 これまでの話で敢えて聞かなかった種族差別についても聞いてみた。この世界は人間以外の種は希少らしい。

 奴隷狩りなどは有るには在るそうだが。違法行為でバレたら即死罪とかなり厳しく定められているそうだ。


 あとは各都市の情報。


 【エルスティア】は【聖天騎士】と【超魔導師】という2人のトップジョブが【騎士団】と『魔導士団』を率いているそうだ。それぞれの団員もカンストやトップジョブ持ちが何人もいるそうだ。トップも理性的で温厚な人物のようだ。


 【マギノ・マキナ】は【機械王】をトップに据え。日夜、兵器や魔道具の開発に勤しんでいるが、それは国を守り発展させるためであり。侵略行為は基本、行わないようだ。


 【天翔】は国としての体を成していないが。この国に攻め込む者はいないらしい。全盛期の【死皇帝】でさえも「あの無法地帯に踏み込むべからず」と侵攻を控えていたようだ。自国の内乱で忙しいので他国にまで手を伸ばしている暇は無いらしい。


 【デザリア】は様々な種族から最強の人材を集めて作られた通称『七星』が最大戦力を誇り。他種族の知恵や文化を取り入れた独自の文化を築いている。


 【オーシャン】は海に関する事なら。突き抜けた知識と技術を持ち。他の追随を許さない。

 陸にも領土があるが。強大な船団を海上に浮かべ生活の大半は船の上らしい。


 あとは【暗黒の女神】なるものを崇拝する『クリフォト』なる勢力が存在するらしい。

 13高弟なる幹部の戦闘力は。下位の者でもAランク冒険者に匹敵し、上位クラスはSランク冒険者に勝るとも劣らない。


 これが、この大陸のおおまかな情勢だ。だが今はBランクダンジョンに行くため力を蓄える準備期間だ。正直、他国などには興味もわかない。


 余談だが。センターヒル最大の魅力について尋ねたら。年に一度、首都で開催されるオークションらしい。

 参加するには貴族階級か冒険者ならBランク以上が条件のようだ。大陸最大のオークションだけあり。とんでもない貴重品、希少品が出展され。出品したものが高額で落札されれば一生遊んで暮らせる────なんとも、夢のある話だ。


 雑談をしていたら知らぬ間に時間が経過していたようだ。既に目的地は目の前のようだ。開始する前に試験方法を聞いとくか!


 「実力を認めれば」なんて条件はあやふやだ。後でごねられても困る。しっかり確認を取るとしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] ジョブレベル加算システムにユニークモンスターの討伐報酬で固有装備、頂級(超級)職 シャンフロだけじゃなくてデンドロもパロってますか?
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